常磐線全線復旧〜気になる地元と東京の意識の違い
遅すぎた全線復旧。
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月16日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。常磐線の全線復旧について解説した。
常磐線が全線復旧
JR常磐線が14日、全線で運転を再開した。2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で、福島県の富岡〜浪江間の20.8キロで不通となっていたが、9年ぶりに全線がつながったことになる。
飯田)東京と宮城を結ぶ路線です。今回の全線開通に併せて、東京・仙台間を直通する特急ひたちの運行も再開しています。
全国的な知名度が低く、遅すぎた全線復旧
須田)9年間も不通だったということを、知らなかった人も多いのではないかと思います。東日本大震災の復興の象徴とも言えると思うのですよ。それにしても遅すぎやしないかと。もっと早く全線復旧をやらなければいけなかったのではないかと思います。
飯田)考え方によっては、いままで不通だった区間の駅に停まらずに、通過するようなかたちで動けなかったのか。停まらずに通過して行けば、線量も高まらず、リスクを負わずに運行することも可能だったのではないかと思います。
須田)全線復旧と言っても、かなりの駅が無人駅なのですよね。はたしてその対応でいいのかというところもあります。
飯田)先週、福島県の浜通りを取材しました。浪江駅に行くと、いままで仙台から来た電車は浪江が終点だったため、駅員さんが「土曜から無人駅になるので」と言って新しい券売機を入れたり、切符の買い方など詳しい説明をしたものが出て来たりしていました。お年寄りは不安になってしまうかなと思いました。
須田)乗降客はどうなのですか?
飯田)そのときは若干いました。浪江からバス代行が出ていて、それに乗って行く人もいましたね。
全線開通でどこまで利用客が戻るか
須田)一部不通になっていると、利用客は減って行くのですよ。やはりインフラがすべて整備されていないと、利用者は増えて行きません。これで全線開通して、どの程度まで戻るのかが期待されるところだと思います。
飯田)いままで不通区間だった大熊町大野駅も、周りは帰還困難区域が広がっていますが、町が新しく作る中心部までは電車の時間に合わせてシャトルバスを出しています。いままではバスをいくつも乗り継がなければ行けなかったものが、大野駅まで行けば電車が来きます。「それは便利なのですよ」と力説される方もいらっしゃいました。
須田)交通手段として、バスではなく鉄道があるのかないのかでは、心理的にかなり意識の違いが出ます。象徴として鉄道があり続けるのであれば、もっと全線復旧をアピールしてほしいと思いますね。
「重要な常磐線の全線開通」という意識を全国的に共有するべき
飯田)11日、地元の新聞ではかなり期待を込めて、カラー吊りで「一歩ずつ前へ」という紙面作りをしていました。地元は冷静に、「線量が現在こうで、もし途中で止まってしまった場合にもいくつかゲートを作って、お客さんをすぐにバスに収容するようなかたちを作っています」と、いろいろな説明をしていたのですが、東京の紙面ではそこまで説明していません。場合によっては、「帰還困難区域に電車を通してどうするのだ」という論調で作る新聞もあります。
須田)東京〜仙台間というと、完全に東北新幹線にシフトしてしまっているものですから、常磐線は東京のビジネスマンにとってそれほど必要なものではなく、水戸などに行くときの幹線鉄道でしかないのです。そのため、どうしても見落とされがちなのですが、地元の人たちにとって常磐線は大きな意味を持つので、その意識を東京にいる我々も共有したいと思います。
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