司書みさきの同人誌レビューノート:寒い冬に心ほっこり けなげな“ブタさん”たちの同人誌マンガが愛らしさたっぷり
温泉に行ったり、アイドルを目指したり。
12月になった途端に、慌ただしさのスピード感がぐんと増した気がします。立ち寄った郵便局ではもう年賀状の準備が始まっていました。2021年の干支は丑年ですか。牛……今回はウシの同人誌……いえ、違うんです。今回は2冊のブタさんのマンガです。
今回紹介する同人誌
『夢ノ喰マ幸楽園』A5 32P 表紙カラー、本文モノクロ
『君はアイドル』A5 54P 表紙カラー、本文モノクロ
著者:zaki
ブタさんと温泉でほかほかに
ご本はどちらも5匹の仲良し兄弟ブタさんたちのお話です。『夢ノ喰マ幸楽園』はそろって温泉地に行く物語。車に揺られて到着して、翌朝に発つまでのストーリー……それだけと言えばそれだけなのですが、なんともこれがあったかいのです。
小雪降る中で到着した温泉で通されたお部屋のすてきさに驚いて、珍しいお湯巡りに目を見張り、たっぷりお湯につかってつるぴかになったら、もちろんお料理、甘味、そして謎めいた眺望さえも楽しんで。うらやましくなる王道幸せフルコース、これを堪能するのが、ちまちましたブタさんたちなんですよ。うれしいときはきゃっきゃと喜び、未知な扉は恐る恐るくぐる、素直で愛らしい彼ら(?)が幸せ体験をしているのを読んでいると、自分はお部屋から一歩も動いていないにもかかわらず、良かったねぇ良かったねぇ、温泉いいですよねぇ! と不思議にこちらもほかほかしてきました。
熱い! アイドルへの挑戦の道
『君はアイドル』は、のんびり穏やかから一転、なんと末っ子ブタさんがアイドルを目指してしまいます。路上ライブから出発し、SNSで取り上げられ、やがて憧れの芸能人と会えたりも? と進み、生き馬の目を抜く芸能界が舞台だけあって、今度は少しはらはらどきどきです。
憧れのアイドルさんとのエピソードなど、今作では人の形をした種族も多く登場し、しっかり描かれています。少しだけ登場する商店街のおばあちゃままでいい人だなぁと思えるキャラの作り、描き方が、ほんわか世界に深みがプラスされてこの生き生きとした世界に浸れるように感じました。
読みやすいコマ運びにスムーズに導かれ、末っ子ちゃんの頑張りとそれを応援する4匹や、新たな出会いに心を揺らしながら読みつつ、1番ぐっときたのは末っ子ちゃんがアイドルを目指した理由でした。
憧れの人と共演したい、ただその下心だけでアイドルを目指した!
あーーすがすがしい! 目標をずばっと「下心」と言い切ってしまう潔さに、わちゃわちゃとしたブタさんアイドル街道に向けて、気持ちよくサイリウムを振る気持ちになりました。表紙にかけられたホログラムの装丁もきらっきら気分を盛り上げてくれます。
愛らしさと勢いが同居するオアシス
ブタさんたちの顔を見ると口は描かれておらず、つぶらな瞳とよく染まるほっぺたが主な表情の起伏の伝え方です。それなのに喜怒哀楽がダイレクトに伝わるのは、顔だけでなく5匹が体全体で気持ちを表しているからではないでしょうか。ちっちゃな手足をうんと伸ばして楽しんだり、がんばったりする姿のなんとけなげなことか。
かわいくけなげな存在に心潤され、その元気さに紙面のこちら側にも熱が伝導してきて、ほっと温かくなる、そんな気持ちになる2冊でした。
今週の余談
今まできっと多くの人が「十二支の動物メンバー編成会議」を脳内で行ってきたのではないでしょうか。長きにわたって固定メンバーですが、たまには他の動物も入れてみたい。または全入替もありだとしたら新十二支はどんなメンバーに!? とか、図鑑を広げながら検討したくなります。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
関連記事
「10年後には朽ちるものを100年後に延ばす」 博物館の裏方描いた漫画が驚きの連続
『ただいま収蔵品整理中!Vol.1』『ただいま収蔵品整理中!金属保存編』をご紹介。アフリカで初音ミクのライブをやってみた 一人の教師が実現させた異国の”ミクライブ”
今回は初音ミク愛にあふれた『Miku in Africa』をご紹介。決してひと事ではない? 同人誌『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』
忘れたと確信したときのドキドキ感……。全国各地の“恐竜像”を1冊に 220カ所ものスポットを紹介した「日本全国恐竜公園ガイド」にワクワクする
そんなところにもいるの!?こんなの待ってた! アメコミの効果音を集めた辞書がマニアックすぎて心くすぐる
今週はサークル「FANDOMAIN」さんの同人誌「アメリカンコミックス効果音辞典 スーパーヒーロー誕生から70年代まで」をご紹介。国体初のマスコット”未来くん”を小説に 同人誌『古都こと奇譚』は京都を舞台にしたキャラクターたちの物語
皆さんの町にも、人気を博したキャラクターがきっといるはず。炎の揺らめきと溶けた金属 職人自ら撮影した鋳物製造の写真集『滴る金属』
こだわりが詰まってる。“お江戸のコミック”を現代語訳 同人誌『黄表紙のぞき』が江戸文化の扉を開く
難易度の高かった「くずし字」を読みやすく。これまで撮った「片手袋」の写真は4000枚超 築地に通って約20年、“片手袋研究家”による同人誌が奥深い
趣味、ここに極まれり。理学部生だったあの頃の自分に伝えたい 作者の後悔から生まれた同人誌『理学部生を手伝うイモリ』
イラストはかわいいけど中身はマジ。“テレポートするナメクジ”を追った5年間 調査の内容をまとめたレポマンガに興奮を隠せない
104ページという力作。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
「袋いりません」「では全部シール貼ります」 レジで起きた予想外の気まずい時間を描いた漫画に「あるある」「あばばばってなる」
整形男子アレン、落差激しい歯抜け写真を公開 「歯が無い姿見ると、ホント精神参ってくる」
国交省公式Twitterが突然の乱心「ばばばばばばえおうぃおい〜(略)で通行止を実施しています」 ネットでは「国交省壊れた?」と心配する声も
「絵にしか見えないガンプラ」に頭がバグる! アニメ塗りのユニコーンガンダムがまるで合成写真
【なんて読む?】今日の難読漢字「若気る」
「歯茎を削る…正直こわかったです」 有村藍里、“口元ブサイク”改善の矯正手術を告白
「好きだったときの気持ちに戻る薬」を飲んでダメ彼と付き合い続ける彼女 その末路を描いた漫画が悲しい
「にゃーん!!」 めったに鳴かない猫に呼ばれ、急いで向かうと…… 猫ちゃんの思わぬ報告を描いた漫画が面白い
「ママ〜」→「えっ保奈美さん」 柴咲コウ、「35歳の少女」母役・鈴木保奈美の300万円獲得で“大人”に戻ってしまう
先週の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 嫌がらせ急ブレーキで追突 トラクターの進路を妨害した「あおり運転」ベンツ、ぶつけられたと運転手がブチギレ
- 猫「雪なんてへっちゃらニャー!」 雪の中を豪快に突き進む猫ちゃんに「ラッセル車みたい」「ワイルドかわいい」の声
- 「Lチキひとつ」 → 買った物をよくみると? コンビニで犯したありがちな間違いを描いた4コマに「あるある」「逆もある」
- 柴犬「きゃほほーーい!!」 初めての雪に“喜びが限界突破した”ワンコの駆け回る姿がかわいい
- 「ホント太るのって簡単!」「あっという間に70キロ」 内山信二の妻、夫に生活リズムを合わせた“ふとっちょ時代”公開
- ルーフから赤色灯がひょっこり 埼玉県警、スバル「WRX S4」覆面パトカー3台を追加導入!? Twitterにアップされた目撃情報が話題に
- 益若つばさ、YouTubeで12歳息子と共演 礼儀正しい振る舞いに「教育がちゃんとされてる」
- トップの座を奪われ……美大生が天才の編入生を刺し“殺す”漫画に「泣きそう」「同じ経験した」の声
- タイからバズーカ砲をかかかえたようなミニバイク「GUNNER50」が日本上陸 思わずキュンと来ちゃうやばいデザイン
先月の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 井上咲楽、“太眉”を人生初カットで別人に 「可愛いすぎます」「さらにファンになりました」と大反響
- 元「うたのおにいさん」今井ゆうぞうさんが脳内出血で急逝 生前最後のブログには“目の異常な充血”
- 2021年夏の祝日、東京五輪で変更 カレンダーの更新を
- 太眉卒業した井上咲楽、美しさ光るアップショットに大反響 「大人っぽーい」「すっかり美しい路線に」
- 「逃げ場のない恐怖」「爆発音で目が覚めた」 JAL904便がエンジントラブルで緊急着陸、乗客が撮影した映像が怖すぎる
- マックポテト「Mサイズのみ」味が変との声がネットであがる マクドナルドに話を聞いた
- 「これは天才」「来年のノーベル賞候補」 ホットサンドメーカーで焼く「ホットサンドケーキ」が悪魔的サクサク感で話題に
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- アロンアルフアは5秒で接着→「時間が余ったので猫動画をご覧ください」 15秒CMのペース配分がおかしい