「夜空の香水瓶」を模した限定デザートがあまりに美しいと話題に 箱根ラリック美術館「味も実際の香水を意識しました」(1/2 ページ)
どんな味がするんだろう……?
「箱根ラリック美術館で食べた香水瓶を模したデザートが、あまりに美しくて忘れられない」。こんな投稿がTwitter上で話題となっています。一体どういうものなのか。スイーツを提供している箱根ラリック美術館に、モチーフとなった香水瓶の由来や、スイーツに対するこだわりを聞きました。
話題になっているのは、Twitterユーザーのこのちゃんさん(@konomiworld0313)のツイート。スイーツのモチーフとなったのはルネ・ラリックが手掛けた「ダン・ラ・ニュイ(真夜中に)」という実在の香水瓶です。「真夜中に」という意味の通り、深い青色が真夜中を表現した瓶には、いくつもの星が散りばめられており、香水が入ると星が輝くロマンチックな仕掛けになっています。スイーツは、ラリックが手掛けた香水瓶がテーマの企画展「ドラマチック・ラリック」に合わせて、併設のレストランで提供されている特別メニューです。
――ラリックが手掛けた美しい香水瓶の数々は有名ですが、中でも「ダン・ラ・ニュイ」はどのような作品なのでしょうか。
美術館:「ダン・ラ・ニュイ」は、ラリックが、スイスとフランスにまたがるレマン湖に映った月からインスピレーションを受け、制作したといわれる香水瓶です。作品名の「ダン・ラ・ニュイ(真夜中に)」を表現する深いブルーのボトルにはたくさんの星が、そして栓には三日月が描かれており、その美しい情景が浮かぶようです。
本体、栓とも透明ガラスで作られ、その上から青いパチネが施されていますが、星の部分にはパチネが施されておらず、香水が入ると、星が香水の色に輝くというロマンチックな仕掛けも魅力の1つです。19世紀後半の香水瓶は、どれも薬瓶のような形状をしていましたが、ルネ・ラリック(1860-1945)は、目には見えない香水の香りやイメージを、ボトルの造形やデザインで表現した香水瓶を制作し、当時の香水業界に大きな衝撃を与えました。以降、ラリックの先例にならい香水瓶の造形化が進みました。
「ダン・ラ・ニュイ」は、1858年に創設され、約半世紀にわたりモード界の中心に君臨し、オートクチュールの基礎を築いたメゾン「ウォルト」のために、ラリックが1924年に手掛けた香水瓶です。以降、1944年までに20種類以上の香水瓶やメゾンの顔であるファサードなども手掛けています。
ちなみに、パチネとは、アラビアゴムに顔料を混ぜたものをガラスの表面に塗布し、拭き取ることによって、くぼみに顔料が残り、描かれたモチーフがレリーフのように立体的に浮かび上がる技法です。
――「ダン・ラ・ニュイ」をスイーツにする上で、味や外見の面でこだわった点を教えていただけますか。
美術館:見た目と味にこだわりました。香水瓶展のスイーツのため、丸っこくてかわいい形と美しい青色を、香水瓶の見た目そのままに表現しました。また、試作の段階では、球体を飾るたくさんの星を表現するために、星形のチョコレートを使用していたのですが、星形の金箔(食用)に変更し、シックに仕上げました。味は、香水「ダン・ラ・ニュイ」の香料として使われていた素材の中から、ベルガモットとバニラをフレーバーとして使用し、味も実際の香水を意識して作りました。
「真夜中、夜明け前に、さよならは言わない。私は戻ってくる、あなたのもとへ。」
美しいスイーツには、ラリックの香水瓶が登場した当時の歴史や、それを再現するべく務めた美術館のこだわりがが詰まっていました。知ってから食べると、一層深い味わいになりそうです。なお、スイーツの提供期間は、企画展「ドラマチック・ラリック」が終了する3月21日までとなっています。
「ダン・ラ・ニュイ」は全5種類のシリーズ展開されている香水瓶の1つ。このシリーズは、香水瓶の名前をつなげると「真夜中、夜明け前に、さよならは言わない。私は戻ってくる、あなたのもとへ。」という愛の詩になるのが特徴です。特に人気だった「ジュルヴィアン(私は戻ってくる)」は、第二次世界大戦時、戦地へ赴く兵士たちが買い求め、再会を願って愛する人たちへ贈ったそうです。
このちゃんさんは、「解説を読み終えた時、なんてロマンチックなんだろう!と思いかけてやめた。香水を送った兵士の方を思うと到底“ロマンチック”では表現できるはずもなく。じゃあなんと表すのが正解?と思いながら、適した言葉も見つからず想像もしきれず、ただ思いをはせてた。“あなたのもと”ヘ無事戻れただろうか」と投稿しています。
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