荷造りのタイムリミットは2日! コロナ禍のフランスから緊急帰国を決めた日本人留学生が、帰国前夜に見た光景

2日で部屋を引きはらうのは大変だ……。

» 2021年07月13日 20時00分 公開
[SONOねとらぼ]

 2020年3月。フランスに留学中だった筆者は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックに直面。大学が休校になり、留学プログラムも中止になってしまいます。

 外出制限が発令され、不要不急の外出が禁止になったフランス。急遽日本に帰国することを決断し、2日後の飛行機を予約した筆者は、無事に日本までたどり着くことができるのでしょうか?

前回の記事はこちら

書いた人:SONO

 1995年生まれ。漫画家。

 キリスト教、歴史を題材にした漫画を執筆している。著作に『教派擬人化漫画 ピューリたん』(キリスト新聞社)がある。

Twitter:@0164288

荷造りタイムアタック

コロナ帰国日記

 ついに帰国の前日。朝起きると、不穏なメールが飛び込んできました。「予約便欠航のお知らせ」……昨日予約したばかりの飛行機のチケットが、航空会社側の都合でキャンセルになったというのです。もしかして、日本に帰れなくなるかも……!?

 電話でサポートデスクに確認してみると「予約されていた便の搭乗者が少なすぎるため、次の便に振り替えることになりました。搭乗時間が遅くなりますが、ちゃんと日本行きの飛行機のお席を確保しています!」とのこと。ホッとしました。しかも、出発時間が遅くなるということは、それだけ荷造りの時間にも余裕を持てるということです。

 気を取り直して荷造りを開始! 取捨選択が苦手な「捨てられない女」の私は、優先順位は度外視して、(1)とにかく身の回りのものをスーツケースに詰め込む、(2)重さを測りつつ調整していく、というがむしゃらな手順で荷物をまとめることにしました。

コロナ帰国日記

 優先順位を度外視した結果、航空会社の規定を14キロもオーバーするという結果に……。駆け込みでスーパーで買い込んだお土産が「凶」と出たのでしょう。服や靴を捨てられるだけ捨てても4キロしか減りません。

 これ以上捨てられるものはないし、いっそ私が飛行機に乗らなければいいのでは……? そんなことを考え始めたころ、空港で実際に重さを測るのは、預けるスーツケースだけだということに気がつきます。じゃあ、機内持ち込みの荷物(規定では10キロまで)を重くしちゃえばいいじゃない! と。そんなスレスレのグレーな発想で、はみ出た約10キロを機内持ち込みのリュックに移動。2つのスーツケースの重さは見事23キロにおさまりました!

 しかしこの時の私は忘れていたのです。結局、その荷物を抱えて空港まで運ぶのは自分だということを。総重量60キロ以上の荷物をひきずって交通機関を乗り継いで行く辛さを知るのは、ちょっと先のお話です。

 

借り物返却ミッション

コロナ帰国日記

 留学先で通っていたキリスト教教会のゴスペルクラブに所属していた私。発表会で着るローブを借りていたのですが、これを帰国する前に返却しておかなければいけません。

 荷造りが終わったのが19時半。朝から何も食べていなかったので、「スーパーに食べ物を買いに行く」という名目で外出証明書を用意し、レンタルサイクルに乗って教会へ出かけました。

 外出制限中の夜でも、ローヌ川沿いにはちらほらと人の姿が。警察が設置した侵入防止柵をものともせず、川辺でお酒を飲んでいる青年たち、カップル……。窓から大音量でヒップホップを流して、ブチアゲな部屋もありました。

 そんな賑やかな区画の前を通っていた時、突然、全部の建物の窓から一斉に拍手が湧き起こりました。後から知ったのですが、夜20時ちょうどに、医療従事者への感謝の意を表して拍手するというキャンペーンが行われていたのでした。

 やっとの思いでたどり着いた教会。しかし、鍵の暗証番号が分からずローブは返却できないままに……。この日は、おとなしくスーパーで夕飯を調達し帰宅しました。

フランス最後の夜

コロナ帰国日記

 夕食後、同じ寮の友人(韓国出身・留学生)が部屋を訪ねてきてくれました。日本には持って帰れないけど、捨てるにはもったいない家電製品やお酒類などを引き取ってくれるというのです。そして「せっかくのお酒だから、一緒に飲もう」ということになり、ささやかな飲み会をしました。彼女とは「そのうちご飯でも食べに行こう!」と約束していたのですが、なかなか予定が合わず、コロナ禍で外出もできなくなってしまいました。これが、ゆっくり話す最後の機会だったのです。

 今振り返ってみると、コロナ感染防止のためには、決して褒められた行動ではなかったと思います。ただ、その時の私は、体こそ動いていましたが、急激な変化に心がついていけず、やぶれかぶれだったのです。友人との明るい会話のエネルギーがなければ、正気を保っていられなかったでしょう。

コロナ帰国日記

 友人と別れた深夜2時、最後のミッション「部屋の掃除」にとりかかります。荷造りの疲労、寝不足、飲酒などの要因が積み重なり「今立ち止まったら寝る! 寝たら飛行機逃す!」と確信。意識を保ち続けるために、日本の友人と通話しながら、ひたすら風呂場を掃除しました。

 はたして、私は寝落ちせずに朝を迎えられるのか? 部屋は綺麗に原状回復できるのか? 飛行機はちゃんと飛ぶのか? 次回、最終回に続きます!

これまでの「帰国日記」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/05/news022.jpg 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. /nl/articles/2410/05/news040.jpg 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  3. /nl/articles/2410/02/news116.jpg 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  4. /nl/articles/2410/05/news023.jpg 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. /nl/articles/2410/05/news018.jpg 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  6. /nl/articles/2410/05/news012.jpg 「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
  7. /nl/articles/2410/04/news048.jpg 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  8. /nl/articles/2410/04/news040.jpg 50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
  9. /nl/articles/2410/04/news025.jpg 「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
  10. /nl/articles/2410/05/news032.jpg 大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
  2. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  3. トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
  4. 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
  5. そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
  6. 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
  7. 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
  8. “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
  9. 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
  10. 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声