軽自動車界のカリスマ、鈴木修語録(後編)(2/2 ページ)
生きがいは仕事
2021年2月24日、スズキから緊急の連絡がありました。午後6時からのオンラインによる新中期経営計画の記者会見、その後半で修会長の退任が正式に発表されたのです。修会長は退任の理由をこのように述べました。
「(計画の)着実な実行を推進するために役員体制を一新して、後進に道を譲ることを決めた」
なぜ40年以上も社長・会長を続けられたのか、私は最後にたずねました。
「生きがいは仕事。人間は仕事を放棄したら死んでしまえということ。挑戦することは人生である。皆さんも仕事をし続けて下さい。バイバイ」
修会長も91歳。さすがに滑舌が悪くなっていましたが、しっかり、ゆっくりとした「修節」、そしてバイバイ……司会の社員からも思わず笑みがこぼれました。
軽自動車は芸術品
私は10年間にわたって修会長の発言を聞いて来ましたが、振り返ると「本当に軽自動車を愛している」……そんな姿勢が伝わって来ます。なかでも私がいちばん印象に残っている言葉がありました。
「限られた制限のなかで挑戦した。軽自動車は芸術品だ」(2013年2月・新車発表会)
全長3.4m、全幅1.48m、全高2.0m、排気量660cc以下、乗車定員4名以下……日本人はこうした厳格なルールの下で、最良のものをつくることに関して天才的な才能を発揮する人種だと思いますが、こうしたなかでできる製品を修会長は「芸術品」と称しました。2021年5月13日、会長として最後の決算会見で、私は軽自動車についての思いをたずねました。
「軽自動車の芸術品は守り通して欲しい」
軽自動車界のカリスマとして、大変重い言葉だったと思います。
数多くの失敗から多くを学び、成長することができた
2021年6月25日の定時株主総会、修会長は株主へのあいさつで感謝の意を示しました。そこで感じたのは、「中小企業のオヤジ」としての謙虚な姿勢でもありました。
「数多くの失敗をしでかした。しかし、失敗から多くを学び、成長することができた。メーカーはつくっておしまいではなく、つくって売ってナンボ。スズキを愛して下さるすべての皆さんに感謝、感謝いたします」
そして最後はこんな言葉で締められ、笑いと拍手に包まれました。
「来年以降はそちら側に座りまして、株主としてよろしくお願いします」
ちなみに修会長、昨年(2020年)はゴルフを47回やり、体はぴんぴんしていると話しています。第一線を退き、相談役になってもその意気軒昂な様子は変わっていないようです。
一方、電動化の波は軽自動車にも押し寄せています。小さくて安くて使いやすい……そんな日本の軽自動車は、どのように変化して行くのか。修会長は別の角度から見届けて行くことになるのでしょう。
お伝えした修会長の“肉声”は、ニッポン放送のポッドキャスト「報道記者レポート2021」でお聴きいただくことができます。(了)
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