アトピーを放置したら死にかけた 彼氏と彼女の「感染性心内膜炎闘病記」(3)(2/3 ページ)
発症から28日目
金銭の相談をしていた病院のソーシャルワーカーさんのおかげで、彼氏の住んでいる区の役所の人がきました。ありがとうソーシャルワーカーさん。
役所の人「金銭的援助する気はありますか」
私「無理です。この先、介護が必要であれば別れるつもりなので私はいない前提にしてください」
ときっぱり言いました。正直、これを言葉にするのはつらかったです。でも実際、彼氏に後遺症が残った場合、20代後半の私に介護しながら仕事ができるかどうかは疑問だったし、自信もありませんでした。
区役所の人が持ってきた書類の署名以外の部分を代筆をしましたが、彼氏の家系図を書くとき、空欄がすごく目立ちました。本人と亡くなったお母さんの名前しか知らなかったので、「天涯孤独ってこういうことなのか」と痛感させられました。
一方、彼氏は栄養をとるための(鼻から胃への)管がぬけ、普通に食事がとれるようになりました。そして手術後、一時はできなくなっていた足し算もやっとできるようになったのです。何がきっかけにできるようになるのか、隣で見ていてもよく分かりませんでした。人体って本当に不思議ですね。
発症から29日目
この日の彼氏はまた大きな回復力を見せます。なんとリハビリで100メートル歩き、しかもペースメーカーを外すことになったのです。
私「えっ!? だって昨日看護師さんと話したときは『ずっと横ばいだから退院後もついてるかも』って言われたよ!?」
彼氏「ん、でも今日卒業した!」
私「すごい!」
発症から30日目
彼氏は今度はリハビリで900メートルを歩ききりました。
余談ですがこの日の私は炊き立てご飯にキムチをのせて食べたらスゴくおいしくて「ご飯にキムチをのせるだけでこんなにおいしいなんて、人生ってすばらしいな……」と少しだけ前向きな気持ちが戻ってきました。
発症から31日目
彼氏、今度は心臓リハビリ(通称心リハ)を開始しました。15分間、自転車をこいだんだそうです。この日からは月・水・金曜日は心臓リハビリを行うことになりました。
※心臓リハビリとは、心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することをめざしておこなう総合的活動プログラムのことです(引用:心臓病の基礎知識/日本心臓リハビリテーション学会)
具体的な内容には生活指導やカウンセリングを含むようですが、彼氏の場合は今回のように自転車をこぐなどの運動療法の割合が多かったようです。ちなみに退院後も心臓リハビリに通うことも可能でした。
発症から34日目
彼氏「リハビリ順調でおむつ卒業できそう!」
私「え……」
彼氏「うれしくないの?」
私「ごめん、下着洗濯するのは無理かも……」
彼氏「そうだよね。そこまで迷惑は……」
私「うちの洗濯機、入院の1週間前に壊れてる」
二人「……」
退院まで介護おむつで頑張ってもらうことになりました。
発症から35日目
私は急に胃痛&吐き気&頭痛が起きました。彼氏が発症してからの約1カ月間、手術後の2日間以外はずっと休みがなかったので、持った方なのでしょう。
長期戦なのは分かりきっているし、彼氏のリハビリも順調なので、この日から面会時間を短くすることにしました。
発症から36日目
彼氏「たまごちゃん、DSのクロノトリガー差し入れてくれたじゃん」
私「うん、進んでる?」
彼氏「久しぶりで暗号忘れたし目的地が分からなくなった」
私「一昔前のRPGあるあるすぎる」
ある日はゲームの暗号が分からなくて、病院から私に電話をかけて調べてもらうという珍事件(?)もありました。
発症から39日目
この日は生活保護の申請が通りました!
金銭面はやっとここで安心できる状態に。ソーシャルワーカーさんのアドバイスで生活雑費のレシートをノートに貼ってまとめていたものの、その分は戻りませんでした。このあたりは自治体によるのかもしれません。
彼氏は小学3年生の算数を解くものの、なかなか100点がとれません。とはいえ、はじめは足し算・引き算もできなかったのでだいぶ回復したものです。
また身体のリハビリでは初めて病院の外を歩きました。平たんな病院の床とは違って、外のコンクリートのささいな凹凸でも結構歩きにくくなるみたいです。とはいえ本人は「娑婆の空気がうめえ(笑)」と喜んでいました。
発症から40日目
この日の私は病院の面会者バッジをつけたまま家に帰ってしまい、なんなら途中でスーパーに寄って、きゅうりを買っていました……。家についてから気が付き、がっくしきました。
家に帰ったらまた仕事です。彼氏の入院中は一貫してねとらぼと受験勉強サイトの仕事と翻訳とお見舞いを頑張り続けていました。
発症から52日目
お見舞いに行くと、彼氏はめずらしく何か考え込んでいるようでした。
彼氏「俺、たまごちゃんがいなかったら孤独死してたし、今は手術も成功してリハビリも順調だし、これってよくある『生きて使命を果たせ』的な奴なのでは」
私「中二っぽくていいね(とにかく生きる気力があってよかった)」
彼氏「で、なにをすればいいんだろう」
私「さあ……」
このころ、念願の退院日が決まりました!
発症から56日目
このころの彼氏は、小学3年生の算数や国語はほぼ満点が取れるようになっていました。
私「はじめは足し算・引き算もできなかったのに、2週間で3桁の足し算引き算ができるようになるなんて。来月には大学物理までいけるのでは(わくわく)」
彼氏「それはもはやリハビリじゃない」
この日は退院前の頭のリハビリ度合いをはかる最終試験でした。ほぼ満点だったのに唯一まちがった問題がありました。それがまさかの「自分の年齢」。発症からほんの2カ月くらいなのですが、彼氏には何年も寝ていた気分だったみたいです。
発症から57日目
ついに退院日!!
ですが昼間は暑かったので夕方までダラダラして、看護師さんに「退院拒否ですか(笑)」と言われてしまいました。
退院の帰り道には日高屋(中華料理屋)に寄って、二人でラーメンを食べました。入院以来初めてラーメンの味がしておいしかったことが、忘れられません。病院から駅までの20分間を一度に歩くのは大変だったので、コンビニにも立ち寄ってえびせんとキャラメルミルクを飲みました。
退院したものの私は正直不安だらけ。病院のように栄養のある食事を用意できる自信もなければ、仕事をしながら面倒を見る自信もなかったのでした。
以来、通院しながら少しずつ回復し、彼氏は今普通に働いています。
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