アトピーを放置したら死にかけた 彼氏と彼女の「感染性心内膜炎闘病記」(3)(2/3 ページ)

» 2021年11月05日 18時00分 公開
[てんもんたまごねとらぼ]

発症から28日目

 金銭の相談をしていた病院のソーシャルワーカーさんのおかげで、彼氏の住んでいる区の役所の人がきました。ありがとうソーシャルワーカーさん。

役所の人「金銭的援助する気はありますか」

私「無理です。この先、介護が必要であれば別れるつもりなので私はいない前提にしてください」

 ときっぱり言いました。正直、これを言葉にするのはつらかったです。でも実際、彼氏に後遺症が残った場合、20代後半の私に介護しながら仕事ができるかどうかは疑問だったし、自信もありませんでした。

 区役所の人が持ってきた書類の署名以外の部分を代筆をしましたが、彼氏の家系図を書くとき、空欄がすごく目立ちました。本人と亡くなったお母さんの名前しか知らなかったので、「天涯孤独ってこういうことなのか」と痛感させられました。

 一方、彼氏は栄養をとるための(鼻から胃への)管がぬけ、普通に食事がとれるようになりました。そして手術後、一時はできなくなっていた足し算もやっとできるようになったのです。何がきっかけにできるようになるのか、隣で見ていてもよく分かりませんでした。人体って本当に不思議ですね。

発症から29日目

 この日の彼氏はまた大きな回復力を見せます。なんとリハビリで100メートル歩き、しかもペースメーカーを外すことになったのです。

私「えっ!? だって昨日看護師さんと話したときは『ずっと横ばいだから退院後もついてるかも』って言われたよ!?」

彼氏「ん、でも今日卒業した!」

私「すごい!」

発症から30日目

 彼氏は今度はリハビリで900メートルを歩ききりました。

 余談ですがこの日の私は炊き立てご飯にキムチをのせて食べたらスゴくおいしくて「ご飯にキムチをのせるだけでこんなにおいしいなんて、人生ってすばらしいな……」と少しだけ前向きな気持ちが戻ってきました。

発症から31日目

 彼氏、今度は心臓リハビリ(通称心リハ)を開始しました。15分間、自転車をこいだんだそうです。この日からは月・水・金曜日は心臓リハビリを行うことになりました。

※心臓リハビリとは、心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することをめざしておこなう総合的活動プログラムのことです(引用:心臓病の基礎知識/日本心臓リハビリテーション学会)

 具体的な内容には生活指導やカウンセリングを含むようですが、彼氏の場合は今回のように自転車をこぐなどの運動療法の割合が多かったようです。ちなみに退院後も心臓リハビリに通うことも可能でした。

発症から34日目

彼氏「リハビリ順調でおむつ卒業できそう!」

私「え……」

彼氏「うれしくないの?」

私「ごめん、下着洗濯するのは無理かも……」

彼氏「そうだよね。そこまで迷惑は……」

私「うちの洗濯機、入院の1週間前に壊れてる」

二人「……」

 退院まで介護おむつで頑張ってもらうことになりました。

発症から35日目

 私は急に胃痛&吐き気&頭痛が起きました。彼氏が発症してからの約1カ月間、手術後の2日間以外はずっと休みがなかったので、持った方なのでしょう。

 長期戦なのは分かりきっているし、彼氏のリハビリも順調なので、この日から面会時間を短くすることにしました。

発症から36日目

彼氏「たまごちゃん、DSのクロノトリガー差し入れてくれたじゃん」

私「うん、進んでる?」

彼氏「久しぶりで暗号忘れたし目的地が分からなくなった」

私「一昔前のRPGあるあるすぎる」

 ある日はゲームの暗号が分からなくて、病院から私に電話をかけて調べてもらうという珍事件(?)もありました。

発症から39日目

 この日は生活保護の申請が通りました!

 金銭面はやっとここで安心できる状態に。ソーシャルワーカーさんのアドバイスで生活雑費のレシートをノートに貼ってまとめていたものの、その分は戻りませんでした。このあたりは自治体によるのかもしれません。

 彼氏は小学3年生の算数を解くものの、なかなか100点がとれません。とはいえ、はじめは足し算・引き算もできなかったのでだいぶ回復したものです。

 また身体のリハビリでは初めて病院の外を歩きました。平たんな病院の床とは違って、外のコンクリートのささいな凹凸でも結構歩きにくくなるみたいです。とはいえ本人は「娑婆の空気がうめえ(笑)」と喜んでいました。

発症から40日目

 この日の私は病院の面会者バッジをつけたまま家に帰ってしまい、なんなら途中でスーパーに寄って、きゅうりを買っていました……。家についてから気が付き、がっくしきました。

 家に帰ったらまた仕事です。彼氏の入院中は一貫してねとらぼと受験勉強サイトの仕事と翻訳とお見舞いを頑張り続けていました。

発症から52日目

 お見舞いに行くと、彼氏はめずらしく何か考え込んでいるようでした。

彼氏「俺、たまごちゃんがいなかったら孤独死してたし、今は手術も成功してリハビリも順調だし、これってよくある『生きて使命を果たせ』的な奴なのでは」

私「中二っぽくていいね(とにかく生きる気力があってよかった)」

彼氏「で、なにをすればいいんだろう」

私「さあ……」

 このころ、念願の退院日が決まりました!

発症から56日目

 このころの彼氏は、小学3年生の算数や国語はほぼ満点が取れるようになっていました。

私「はじめは足し算・引き算もできなかったのに、2週間で3桁の足し算引き算ができるようになるなんて。来月には大学物理までいけるのでは(わくわく)」

彼氏「それはもはやリハビリじゃない」

 この日は退院前の頭のリハビリ度合いをはかる最終試験でした。ほぼ満点だったのに唯一まちがった問題がありました。それがまさかの「自分の年齢」。発症からほんの2カ月くらいなのですが、彼氏には何年も寝ていた気分だったみたいです。

発症から57日目

 ついに退院日!!

 ですが昼間は暑かったので夕方までダラダラして、看護師さんに「退院拒否ですか(笑)」と言われてしまいました。

 退院の帰り道には日高屋(中華料理屋)に寄って、二人でラーメンを食べました。入院以来初めてラーメンの味がしておいしかったことが、忘れられません。病院から駅までの20分間を一度に歩くのは大変だったので、コンビニにも立ち寄ってえびせんとキャラメルミルクを飲みました。

 退院したものの私は正直不安だらけ。病院のように栄養のある食事を用意できる自信もなければ、仕事をしながら面倒を見る自信もなかったのでした。

 以来、通院しながら少しずつ回復し、彼氏は今普通に働いています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/22/news047.jpg 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. /nl/articles/2412/18/news207.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. /nl/articles/2412/21/news040.jpg 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  4. /nl/articles/2412/22/news034.jpg 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  5. /nl/articles/2412/21/news019.jpg 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. /nl/articles/2412/22/news036.jpg 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. /nl/articles/2412/21/news023.jpg 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. /nl/articles/2412/17/news042.jpg 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. /nl/articles/2412/22/news020.jpg 余りがちなクリアファイルをリメイクしたら…… 暮らしや旅先で必ず役に立つアイテムに大変身「目からウロコ」「使いやすそう!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」