「残さないといけない文化だと思った」 廃業の危機にあった書店、小説家が経営引き継ぐ その思いを聞いた(1/2 ページ)

事業継承に名乗りを上げたのは時代小説家の今村翔吾さん。その背景などを聞きました。

» 2021年11月03日 11時00分 公開
[新谷翔ねとらぼ]

 廃業のピンチに陥っていた書店の経営に人気作家が名乗りを上げた――そんな話題がTwitterで注目を集めています。なぜ経営を引き継いだのか、どんな店にしていくのか、聞いてみました。

 経営難で廃業の危機に陥っていたのは、大阪府箕面市にある書店「きのしたブックセンター」。1967年創業で、最盛期には4店舗あったものの、全国的な書籍の売り上げ減の中で1店舗に減っていました。

 その経営に名乗りを上げたのは、『羽州ぼろ鳶組』シリーズ(祥伝社)などで人気の、滋賀県に住む時代小説家、今村翔吾さん。今村さんが10月に書店の経営を引き継ぐことをTwitterで明らかにすると、「応援します」「感動しました」など反響がありました。

 「きのしたブックセンター」は今村さんが出資することで、事業の継続を実現し11月1日にリニューアルオープン。作家が書店の経営をするという驚きの事態に至ったいきさつや思いを今村さんに聞いてみました。

オープン前日の様子(左から2番目が今村さん) 画像提供:きのしたブックセンター

―― 経営を引き継ぐことになった決め手は?

今村さん 中高時代の友人から「買い手が見つからない潰れそうな本屋があるが経営に参加してみないか」という相談を受けて、面白そうだったので実際に店舗に赴いてみました。

 すると雨の中、おばあさんとお孫さんと思われるお客さんが来ていて、絵本を選んでいる場面に遭遇しました。その時にこれは残さないといけない文化だと思ったのがきっかけです。また、地域で唯一の本屋だったこともありますね。

―― 経営にどんな形で携わっていくのですか?

今村さん 作家事務所の完全子会社として出資した上で、作家業と平行して経営に携わります。本と出会うことのワクワク感をどうすれば演出できるか現場に立って考えていきます。作家の目線と読者の目線の両方に立った売り場作りをしたいですね。経営の「飛び道具」として作家のサイン会や、イベントの開催も提案していきます。

―― 新しい店はどんな店になりますか?

今村さん これまでの在庫は1万冊程度でしたが、まずは本の量を増やします。最終的には2万冊に近づけたいですね。店舗も全面改装を行い、本を見るには明るすぎた照明の光量を改善したり、お客さんの動線や従業員の働きやすさを考えた配置などに改善したりしました。

 屋号は変えず、従業員の雇用も維持した上で引き続き文化のインフラとしての地域の書店を目指します。従業員は私が経営に乗り出すと聞いたときに「ああ、これでクビになる」と思ったらしいですが(笑)。

―― 書店の経営に携わることになって気がついたことはありますか

今村さん 書店の経営に乗り出したのは縮小し続ける出版業界にいる者として「何もしないより、何かしたほうがいい」という考えからです。デビューしてまだ日は浅いですが、本を広める現場に立つことで私を育ててくれた出版界に恩返ししたいという思いが強くなりました。

 かつての自分がそうであったように、本との出会いは人生を変えます。もっといいものを書きたいというモチベーションにもつながっています。

―― 今村さんにとって書店の魅力とは

今村さん 街の本屋の良さは雑多に多世代が集まることができる場所であることだと思います。コミュニティーとしての魅力がそこにはあります。ネット通販では実現しません。この文化を残すことが大事なのだと思います。

 本との出会いは人の出会いに似ていて人生の交差点です。箕面の人たちにそういった人生を豊かにする場を提供できるように頑張っていきます。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  4. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  5. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」