クラウドファンディング実施中「シロナガス島への帰還」レビュー これは性癖のヤサイマシマシニンニクマシアブラマシカラメだ!やや最果てエンタメ観測所(1/2 ページ)

12月5日までCAMPFIREでクラファン実施中です!

» 2021年11月28日 20時45分 公開
[砂義出雲ねとらぼ]

 筆者がミステリADVゲーム「シロナガス島への帰還」公式サイト)をクリアして最初に抱いた感想は「これ性癖のヤサイマシマシニンニクマシアブラマシカラメじゃん!」だった。

 ちなみに「ヤサイマシマシニンニクマシアブラマシカラメ」はとあるラーメン店での注文方法だが、それを知らなくてもこのレビューを読むのにまったく問題はない。要するに、作者こだわりの味付けやトッピングがマシマシ(大盛り)の大変ぜいたくなゲーム体験をさせてもらった、ということだ。

シロナガス島への帰還 タイトル画面。現在はWindowsのみの対応だがさまざまなストアで販売中

ライター:砂義出雲

砂義出雲 プロフィール

作家・シナリオライター。はてなダイアリー「やや最果てのブログ」の運営を経て、2011年に小学館ライトノベル大賞・優秀賞を受賞し『寄生彼女サナ』でデビュー。なんだかんだ10年以上業界の片隅でラノベを書いたりゲームシナリオを書いたりしてきました。映画とゲームとsyrup16gが生きる糧。人生ベストゲームは「Outer Wilds」です。

Twitter:@sunagi



 では、「シロナガス島への帰還」の基本情報を簡潔に説明しよう。

 「シロナガス島への帰還」は鬼虫兵庫氏が文章・イラストまでほぼ完全個人制作で作り上げた、ポイント&クリック形式のミステリADVゲームだ(鬼虫氏の経歴に関してはIGN Japanのインタビューが詳しい)。

 主人公の探偵・池田戦は、完全記憶能力を持つ助手の少女・出雲崎ねね子とともに孤島「シロナガス島」へ赴き、そこで起きた殺人事件、そして島に隠された陰謀を解決する……という物語である。

シロナガス島への帰還 ヒロインのねね子。内気だが超人的な記憶力を持つ天才少女

 ちなみに、筆者がクリアまでに要した時間は6時間程度。伏線の回収も気持ちよく、一本のミステリ作品として軽い気持ちで遊ぶのに「ちょうどいい」ボリュームだと感じた。にもかかわらず、一体何が「マシマシだったのか。順を追って説明するので、それを読んでビビッと来た方はぜひこのゲームをチェックしてみてほしい。後述するが、12月5日まではNintendo Switchへの移植&ボイス追加のためのクラウドファンディングも実施中だ。


マシマシその1 講談社ミステリの系譜がマシマシ!

 本作クリエイターの鬼虫兵庫氏は、2009年に講談社BOX新人賞の奨励賞的なものを小説家として受賞している。そして、講談社BOXの代表的作家と言えば「物語シリーズ」の西尾維新氏であり、当時その西尾維新氏も参加していた雑誌『ファウスト』は菅野ひろゆき氏、竜騎士07氏などのノベルゲームライターを積極的にフィーチャーしていた。

 「シロナガス島への帰還」の作風には、はっきりとそれらの系譜に連なるものを感じた。天才的な記憶力を持つ少女・ねね子とバディを組む設定は西尾維新氏のデビュー作『戯言シリーズ』を彷彿とさせるし(中でも1作目の『クビキリサイクル』(2002)は孤島を訪れる設定やクライマックスの盛り上がりなど本作にテイストがかなり近いと感じた)

シロナガス島への帰還 ねね子と共通点の多い『戯言シリーズ』のヒロイン・玖渚友。(写真:版元ドットコム)

 孤島で行われた研究というモチーフは「DESIRE」(1994)、傲岸(ごうがん)不遜な探偵像は「EVE burst error」(1995)という菅野ひろゆき(筆名:剣乃ゆきひろ)氏が執筆した2作、孤島と探偵の組み合わせとなると竜騎士07氏の「うみねこのなく頃に」(2007)からの流れを感じる。もちろん、「シロナガス島への帰還」がこれらの「パクリだ!」などと言いたいわけではなく、「これらの作品が好きだった人ならハマるかも!」ぐらいのことを言っていると思ってほしい。

 なにより、インタビューから察するに鬼虫氏は84年生まれの筆者とそこまで年齢も変わらないはずで、有り体に言えば「同じものを食べて育った感をめっちゃ感じる。ゼロ年代の空気を吸って育った子どもたちは多分同じ体臭を発するようになるのではないか。臭いで仲間が分かる。そういうことが言いたかった。


マシマシその2 ミステリADVのド定番がマシマシ!

 本作のシステムである、画面をクリックして新しい手掛かりを探す「ポイント&クリック」形式のアドベンチャーは、現代でも「逆転裁判」シリーズなどに残っているが、どこをクリックすれば話が進むのかも自分で探っていく本作の手触りはどことなく古き良きPC-98の名作ADVゲーム群を感じさせる。

 そして中盤で出てくる「犯人選択」シークエンス。

シロナガス島への帰還 あくまで中盤の展開なので直接真相に関わるわけではない

 これがまた「ミステリ系のADVならこれ欲しいよね、分かってるー!」って感じなのである。やっぱり、この手のゲームだと筆者の世代的には「かまいたちの夜」(1994)を思い出してしまう。そういえば、「かまいたちの夜」の2と3も孤島が舞台だ。鬼虫氏、これもきっと好物でしょ?

 ちなみに、犯人選択システムはミステリ作品が「ゲーム」であることの最大の利点だと思っているので、この手のADVはもっと積極的に採用してほしい。これが小説だと目星を付けていた犯人と違う人物が真犯人でも「あー、犯人やっぱこいつね。そうだと思ってた!」と記憶を改ざんしがちだ。しちゃわない? 僕はする。ゲームだとそういう甘えを許さないのがいい(余談だが、筆者の思う犯人選択系ゲームの最高傑作はファミコンの「殺意の階層 ソフトハウス連続殺人事件」(1988)だ。きちんと推論を積み重ねたときにだけ到達できるエンディングとどんでん返しの真相がまたいいんだ。今年になって「ファミコン探偵倶楽部」がリメイクされたんだから「殺意の階層」もリメイクとかされないもんですかね?)。

 ちなみに、推理を展開する場面で主人公たちが滞在する館の「見取り図」が入る。これもまた分かってる!

シロナガス島への帰還 ちなみに筆者が犯人選択を何回間違えたかは……恥ずかしいからノーコメント

 ときおり入る時間制限付き展開やホラー演出も、プレイヤーが飽きはじめる前の絶妙のタイミングで配置されており、とても良い。とあるシーンでのビックリ展開など、思い切り悲鳴を上げてしまった。

シロナガス島への帰還 エレベーターってどうしてこんなに怖いんでしょうね

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/17/news163.jpg 柄本佑、「光る君へ」最終回の“短期間減量”に身内も震える……驚きのビフォアフに「2日後にあった君は別人」「ふつーできねぇ」
  4. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  5. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. /nl/articles/2412/17/news049.jpg 「品数が凄い!!」 平愛梨、4児に作った晩ご飯に称賛 7品目のメニューに「豪華」「いつもすごいなぁ」【2024年の弁当・料理まとめ】
  7. /nl/articles/2412/17/news183.jpg 「秋山さん本人がされています」 “光る君へ”で秋山竜次演じる実資の“書”に意外な事実 感動の大河“最終回シーン”に反響 「実資の字と……」書道家が明かす
  8. /nl/articles/2412/17/news144.jpg 「私は何でも編める」と気付いた女性がグレーの毛糸を編んでいくと…… 「かっけぇ」「信じられない」驚きの完成品に200万いいね【海外】
  9. /nl/articles/2412/17/news078.jpg 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  10. /nl/articles/2412/17/news033.jpg セリアのふきんに、糸で“ある模様”を縫っていくと…… 思わずため息がもれる完成形に「美しい」「やってみます」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」