ギリギリで生活している人たちの強い味方 同人誌『半分寝ながらでも作れる限界飯』が教えてくれる“めんどう”との戦い方:司書みさきの同人誌レビューノート
現代社会を生きる戦士たちへ。
慌ただしい年末年始のあれこれをこなしてきたはずなのに、なぜかまだ忙しい……むしろ忙しさが加速しているのでは? というときに、自分好みのあたたかいごはんを食べると、ほっと力が抜けます。今回は、いろいろと立て込む前に知っておくと味方になってくれそうなご本です。
今回紹介する同人誌
『半分寝ながらでも作れる限界飯』B6 44ページ 表紙本文インク替え色刷り
著者:ばんちょ
「半分寝ながらでも作りたい」ごはんとキッチン回りお役立ち集
今回の同人誌のタイトルは『半分寝ながらでも作れる限界飯』です。なるほど、限界と感じる状況でも簡単に作れるレシピ集なのかな? と手に取りました。しかし、ページを開いた第一印象は「あっ、これちょっと手が掛かってますね!?」でした。例えばカット済みの野菜とウインナーを炒めるレシピ。包丁を使わずにフライパン一つでできるのがありがたく、味付けのポイントになる粒マスタードがおいしそうなんです。ただ、粒マスタードを常備してたかな? と自宅の調味料棚の層の薄さが頭をよぎってしまいました……。
いえ、ご本のレシピは「絶対にこうしなさい」という指示はないんです。極力手順が少ないシンプルな作り方なんです。でもおいしそうに描いてあるからその通りにやってみたい気持ちと、そもそも限界のときには炒めることすらせず、“買う”を選んでしまうかも。いや、がんばって“あたためる”かな……と自らのやる気のなさを振り返って、気付きました。そうか、このご本は、限界でもごはんを“作りたい”人のご本なんだと!
そこ面倒ですよね! のありがたい共有感
「限界のときに料理できないかも……」と自分のやる気のなさを感じつつちょっと遠い目になっていたのですが、ご本を読み進めるにつけ、「これは知っておいてうれしいかも」「これは限界のときじゃなくても試してみたいな」という気分になってきました。だんだん「できないなぁ」が「知ってるとうれしいな」へと気持ち向かっていった要因の一つは、そこここに表れる面倒くささとの戦いが率直に描いてあることでした。
ご本には簡単なレシピと、キッチン回りの便利グッズのご紹介などが載っています。そのページに踊る「待っていられないので」「洗い物めんどう」の文字。それにどう立ち向かったかのアイデア、「こうしたら良かったよ」という体験が惜しみなくイラストとコメントで共有されています。すっぱいフルーツに当たったときの対策、軽くてフタ付きの食器の紹介、と言った味覚や体感を直接サポートする情報から、めん類はゆで時間が短い方がいいからなんでも細いものを選ぶ、など、気持ちのつらさを解消できそうな案も、1ページごとにコンパクトにまとまっています。
「できるかも」をためていく優しさ
絵柄の力の抜け方、さらりと読めるのに必要な情報がちゃんとまとまっている構成、さまざまな色で刷ってある装丁、それらがミックスされて、できたらうれしいかも、な気持ちがじわじわとたまっていきました。
時々登場してコメントをくれる犬っぽい生き物は、忙しいときにごはんを食べるときの虚無の顔も、作ったおかずがおいしかったときのうれしい顔も、よそ行きの誰かに見せる表情ではなく、自分のためだけの完全に力の抜けたお顔です。
限界を感じるとき、外向きの表情にするだけでもエネルギーがいるものです。そんなとき「できたらうれしいこと」をためておけたら、少し、限界に立ち向かう気持ちが楽になるかもしれません。限界だからこそキッチンに立ちたい人にも、限界が来たらキッチンには立たないかもしれない人にも、どちらの人にも「できるかも」は来るべき“限界”の緩和につながるのではないでしょうか。半分寝ながらキッチンに立つようなお顔のイラストは緩くそれを応援してくれているようです。
1ページごとに違うインクで刷られた本文は、くっきりとした明るい色合いもあれば、薄く淡くクラフト紙になじんでしまうようなページもあります。この違いを楽しんで、じっくり目を凝らしながら、「できるかも」がたまっていくうれしさを感じました。
サークル情報
サークル名:ゆるにがおえ屋さん/極彩色モノクローム
Twitter:@b13c88
入手できる場所:BOOTH
次回イベント参加予定:関西コミティア(開催日:2022年1月23日、会場:インテック大阪)、参加サークル名「ゆるにがおえ屋さん」(D-47)※参加はTwitterで告知
今週の余談
限界を超えないよう、みなさまおいしいものいっぱい食べて、手間を減らして、ゆっくり寝ましょうねー。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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