会議で視聴率の話は1回も出ていない――フジ深夜の激ヤバ番組「ここにタイトルを入力」若手Dがテレビというメディアで表現したかったこと(2/3 ページ)
実はロジック詰め詰め 様式美を求めた企画
――水曜日のダウンタウン」(TBS系)などで演出を担当する藤井健太郎さんも企画に参加したいと反応していました。前例を見ない企画だっただけに、誕生した会議が非常に気になります。
原田D 会議は、作家2人と思いついた一言を書き出していきました。#1は、「2つセットがくっついてる画って面白いですよね」という一言から、最初は回転椅子を使う案などもあった中で、たぶん右半身左半身でやったほうが面白いという着地になり、#3だったら、「異常にトランプマジックの工程が多い」という一言で、これは30分やる意味があると進んでいきました。
――会議自体が大喜利感ありますね。
原田D めちゃくちゃストイックな大喜利だったと思います。面白かったですね。
――でも、何でもありだったということではないですよね?
原田D ワンパッケージで30分もたせるというのがすごく大変で、面白いけど30分はもたないなとか、画でイメージしたときのインパクトとちゃんと声に出して笑えるかというところは大事にしました。
あと、今回は打ち合わせが絶対入っていたので、一種の様式美じゃないですが、「どうしてこれが起こったのか」という立て付けを大切にしていました。なので、めちゃくちゃ面白いけど、これをやる理由はないよねと省いちゃった企画は結構ありました。
――番組自体に文脈があったんですね。
原田D そうですね。好みの問題ではあると思うんですが、僕が無秩序にやるよりはちゃんとロジックを詰めてやる方が好きなんです。
――原田Dはどういった作品に影響を受けてこられたんですか?
原田D もともと大学時代に演劇の脚本を書いていたのですが、「シベリア少女鉄道」という劇団がきっかけで、自分もそういう作品を作りたいと思っています。今でも「シベリア少女鉄道」を超えるものに出会っていないな、というぐらいめちゃくちゃ影響を受けていますね。
テレビだとなんだろうな。実は小さいころテレビっ子ではなくて、そんなにたくさんは見ていないんですが、フジテレビだったら「トリビアの泉」とかは好きで本も全部買ってました。あとはテレビ東京の「ゴッドタン」とか有田(哲平)さんと堀内(健)さんの「アリケン」は当時好きで、打ち合わせから入るフォーマットは「アリケン」から影響を受けているんじゃないかというのは後から人に言われて気付きましたね。あとはCGアニメーションの「Peeping Life」とかが好きでした。
膨大なデータがある「テレビ」をフリに使える
――もともとテレビっ子ではなかったとのことですが、時代の流れとともにテレビはかつてほどの絶対的存在ではないですよね。一方で、いわゆる違法アップロードされたテレビ番組がネットで話題になることも。現場にいる原田Dはテレビのポジションをどう捉えているか教えてください。
原田D テレビを見る人が減ってきているというのは、もちろんそうだと思います。というか、こんなにコンテンツが乱立している時代で、テレビを見る人が減っている方が健康的な気がします。「テレビ」というくくりで見るのではなく、「ここにタイトルを入力」とYouTubeの○○チャンネルが同列として1つのコンテンツとして扱われる方が、視聴者の方にとってはいいかもしれません。
でもテレビで面白いことをやったときの影響力の大きさを見ると、プライオリティはまだ全然高いと思います。これからはテレビという大枠はありつつも、テレビという属性をもったコンテンツとしてうまく活用していくんじゃないでしょうか。
それこそ歴史が長い分蓄積があって、テレビと言われたときのイメージが良くも悪くも視聴者の中にはっきり根付いていると思うんです。だから、言い方は悪いですがフリが効いている。「ここにタイトルを入力」はまさに、既存のテレビをフリにして遊んだところがあるので。
――確かに壮大なフリが効いていました。
原田D それは先人たちが、良い意味でいかに見やすく分かりやすく、どうやったら面白く感じてもらえるかと模索してきた歴史ですし、それが60年あるってとんでもないことですよ。制作能力も、作っている人たちが面白いということも、テレビとして間違いなく圧倒的な部分だと思います。
笑えるコンテンツという分野の質として考えても、結局、声出して笑っちゃうみたいな経験はまだ圧倒的にテレビが多い気がします。
おまけ
――最後に、最近面白かったコンテンツがあれば教えてください。
原田D (スマホのメモを取り出し)最近か〜、それこそ「シベリア少女鉄道」が1年半ぶりに新作公演(「どうやらこれ、恋が始まっている」)をやっていて、やっぱり最高でした。
あとは、同じ年代の蓮見(翔)さんが主宰の「ダウ90000」にはめちゃくちゃ刺激を受けていて、ドラマでも所属メンバーの中島(百依子)さんに出演していただいています。自分が大学時代に演劇で上がりきれなかった部分をマスに体現しているグループで、やっていることは全然違うんですけど、あんなに誰もがちゃんと声に出して笑えるコンテンツを同じ年代の人が作っている。すごい団体だと思います。
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