JR6社の特別チケットで同性カップルが対象外になると波紋 JR東日本は「『法律上の婚姻とは異なる』ため該当しない」と回答(1/2 ページ)

背景には「LGBT差別禁止法」が導入されていないなどの問題もあります。

» 2022年06月24日 10時40分 公開
[上代瑠偉ねとらぼ]

 東日本旅客鉄道(JR東日本)などJR6社が、“2人の年齢を合わせて88歳以上の夫婦”を対象に提供している「フルムーン夫婦グリーンパス」において、自治体による「パートナーシップ制度」を利用している同性カップルが対象外になる――。三重県議会議員の稲森としなお氏(@inamori2009)による投稿がSNS上で波紋を広げています。

 「フルムーン夫婦グリーンパス」は、JR6社が2021年10月1日から2022年6月30日まで提供している、JR線のグリーン車(新幹線「のぞみ」号「みずほ」号など、一部の列車を除く)を自由に乗り降りできるきっぷです。

 投稿は、同性パートナーがいる知人がJR東日本に「フルムーン夫婦グリーンパス」の利用について問い合わせたところ、「これまで男女のご夫婦を対象として設定してまいりました」「同じ性別のパートナーのお客さまにつきましては『フルムーン夫婦グリーンパス』のご利用はできかねます」という回答を得たというもの。

東日本旅客鉄道(JR東日本)などJR6社が提供する「フルムーン夫婦グリーンパス」で、自治体による「パートナーシップ制度」を利用している同性カップルが対象外になるとして波紋を広げている 画像は三重県議会議員の稲森としなお氏(@inamori2009)の投稿より

 今回、特に疑問視されているのは「事実婚」「内縁関係」など婚姻関係のない異性カップルと、同性カップルでの対応の差異です。異性カップルの場合、乗車時に年齢を証明できる公的証明書(健康保険証など)を所持する必要があるだけで、「事実婚」「内縁関係」などでも問題なく利用できます。一方で、同性カップルの場合、自治体による「パートナーシップ制度」を利用していても対象外です。

 編集部がJR東日本にこのような運用になっている理由を聞いたところ、「同性婚に対する一部自治体などの取り組み(渋谷区など)は、現時点で『法律上の婚姻とは異なるもの』として位置付けられるため、同性婚(※)の方については、『フルムーン夫婦グリーンパス』の利用資格要件に該当しないという整理にしております」と回答しました。

※正しくは「パートナーシップ制度」です。JR東日本の回答のまま掲載しています

 続けて、JR東日本は「(異性カップルの)『事実婚』『内縁関係』については、生計を同一にしている事実上の夫婦であり、婚姻届を提出すれば受理が可能であることから、利用資格要件に該当するとしております」と述べています。

 これらのJR東日本のコメントを踏まえると、「フルムーン夫婦グリーンパス」の対象・対象外の判断は、「婚姻届を提出すれば受理が可能である」かどうかが決定打になっていると考えられます。ただし、日本では「同性婚」は導入されていません。

 JR東日本は任意団体「work with Pride」がLGBTQ+など性的マイノリティへの取り組みを評価する「PRIDE指標」で、2016年から2021年まで5年連続で「ゴールド」を受賞しています(※)。社内では先進的な取り組みをしているものの、今回の利用客への対応には「遅れてる」「この対応はひどい」との声が寄せられています。

※JR西日本も2020年から2021年まで2年連続で「ゴールド」を受賞しています

 また、背景には政府や自治体が抱える問題もあります。日本の「パートナーシップ制度」は、現在では人口カバー率は5割を超えていますが、普及率はまだ十分とは言えないでしょう。今回のような民間サービスも対象になると考えられる、性的マイノリティに対する差別を禁止する「LGBT差別禁止法」も導入されていません。

 今後、同性カップルは「フルムーン夫婦グリーンパス」の対象外であるという運用を変える予定があるかと聞くと、JR東日本は「国などの法律整備状況などを注視しながら、JR6社で議論していきます。当社単独で発売している特別企画乗車券で、『夫婦』を対象に販売しているものはありませんが、社会の状況などを踏まえ今後当社として検討を進めてまいります」と述べています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/01/news049.jpg 一般家庭で暮らすワニ、“ご飯だよ”の合図を聞いた瞬間 400万再生の予想外すぎる顔に「温室育ちの純粋な目をしてて草」
  2. /nl/articles/2502/03/news057.jpg 「押すなよ、絶対に押すなよ」なポーズの猫ちゃん→次の瞬間…… 笑っちゃうほどの展開が200万再生「爆笑しました」
  3. /nl/articles/2502/02/news028.jpg 生後2カ月で迎えた保護たぬき、犬に囲まれて育ち5カ月後…… 見事な“オラオラ俺様モード”に「愛嬌の塊みたい」「可愛すぎて虜」
  4. /nl/articles/2502/03/news152.jpg 母「昔は男性からモテまくりだった」→娘は信じられなかったが…… 当時の“説得力ある姿”が260万再生「なんてこった!」【海外】
  5. /nl/articles/2501/31/news050.jpg 「許されると思ってんの?」 スマホのアラームを設定→翌朝…… “絶望の通知内容”が430万表示 「ほんとこれ」
  6. /nl/articles/2502/03/news157.jpg 「目を疑った」 “8割引”も……恵方巻の「大幅値引き」目撃相次ぐ 「予約購入は少数派」消費者との温度差も
  7. /nl/articles/2502/01/news047.jpg 【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
  8. /nl/articles/2502/03/news009.jpg 27歳女性がひとりで営む“おにぎり屋台”が話題沸騰中 必死にリヤカー引く姿に「なんだか泣けました」「見かけたら必ず買う!」400万再生
  9. /nl/articles/2502/03/news025.jpg 真冬なのに“様子がおかしい木”を発見→近付きよく見てみると…… まさかの正体が200万表示「初めてみた」「マジで存在するんだ」
  10. /nl/articles/2501/31/news164.jpg 妻「おはぎ教室行ってくる!」→持って帰ってきたものは…… 妻が作った“衝撃のおはぎ”が400万表示 「知ってるおはぎと違う」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議