「ラーメン二郎」へ“表敬訪問”したジョージア駐日大使に話を聞いた 「次回は『ニンニク ヤサイ マシマシ、ブタ抜き、アブラ多め』を頼みたい」(1/2 ページ)

大使はコール時には「緊張感が走った」と振り返っています。

» 2022年06月27日 19時30分 公開
[上代瑠偉ねとらぼ]

 ジョージア駐日大使が、ランチに有名ラーメン店「ラーメン二郎」へ“表敬訪問”したことがTwitter上で大きな話題を呼んでいます。大使にラーメン二郎の感想を聞きました。

ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使「ラーメン二郎」へ“表敬訪問”

 話題となっているのは、ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使(@TeimurazLezhava)による投稿です。「ラーメン二郎 品川店」の店舗の前で、堂々とした立ち姿でこちらに視線を向ける大使の姿……。Twitter上では「ラーメン二郎の前に立ってかっこいい人をはじめて見ました」「スタイルよすぎてメンズスーツ売場のマネキンかと思いましたわ、、、」などのコメントが寄せられています。

 今回、編集部では大使にラーメン二郎の感想を聞きました。ラーメン二郎には、独自のルールとして「ニンニク ヤサイ マシマシ(ニンニクと野菜をかなり多めに)」などのコールが存在します。大使は初来店でコールを無事できたのでしょうか――?

 

ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使「ラーメン二郎」へ“表敬訪問”

――ラーメン二郎を訪れようと思ったきっかけは何かありますか?

ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使(以下、大使)来日中の弟から人気店だと教えてもらい、この機会に弟と大使館の職員を誘い、暑気払い(しょきばらい)を兼ねて訪問しました。ささやかですが、普段の感謝を込めて私が皆さんにごちそうしました。

――メニューは何を注文しましたか? お味の感想も教えてください。

大使 「ラーメン小」です。「小で大丈夫かな」と思ったのですが、みんなが「小で良い」と言うため、私もそれにしました。

 味はすすった瞬間に迫力が十分に伝わりました。うまみがたっぷりでした。しかし、予想に反して、単に破壊力のある味ではなく、素材本来のやさしさやミネラルがスープに閉じこもっていてバランスも良いと思いました。野菜もたっぷりで「くどい」という印象もありませんでした。

――サイズは「小」とのことですが、食べ切れましたでしょうか。

大使最後まで食べきれませんでした。25%ほどのスープと豚肉を残しました。個人的には、スープの量が多いのは、誰にとっても十分な量を提供する、おもてなしの気持ちをあらわす配慮だと感じました。「気前の良さ」というメッセージを受け取りました。

 私はアレルギーを患っていることもあり、体調や健康を日常から人一倍配慮しているつもりです。食事が体に合わない場合、1日の調子を大きく乱してしまいますが、ラーメン二郎は驚くほど体になじみました。人気店ならではの黄金比・秘伝があるのだと、その奥義に触れた気分になりました。

――ラーメン二郎には、独自のルールとして「ニンニク ヤサイ マシマシ(ニンニクと野菜をかなり多めに)」などのコールが存在します。初来店だと、コールのタイミングなどが難しいかと思いますが、うまくできましたでしょうか。

大使実は、量をカスタムで注文できることはなんとなく同僚から聞いておりました。だから、並んでいる間にどのような組み合わせで注文するかを漠然と考えていました。

 だが、お店に入ると、その独特な雰囲気に圧倒されて、たちまちそのことを忘れました。日本のラーメン屋、あるいはラーメン二郎は入店したときから、その楽しみが始まっているのだと感じました。

 自分の順番が来ると、券売機で手に入れた食券を店主に渡して、そっと席に着きました。まわりのみんなは静かに目の前の一杯に集中している様子でした。

 食券を渡したときに、お店の方に特に何も言われなかったため、事前に聞いていたほど味や量の組み合わせを指定することは、この店舗ではしないのだと思いました。

 しかし、席について数分後、お店の方と私の斜め前の(私はカウンターのちょうどの角の席でした)お客さんが不思議なやり取りをしているのが見えました。まさに「あうんの呼吸」という感じでした。私はそこで、「もしかすると、これが話で聞いていたあれか」とうすうす感じました……。

 すると、例によって、今度は私の隣の作業服を着た男性が「ニンニクマシ、麺固め、アブラ少なめで」と言っているのを確かに捉えました。

 お客さんに器を出す直前に好みを聞く、というタイミングに感動しました。なぜなら、直前にひとりひとりの好みに合わせることは「お客様への個別の配慮」という点で心をくすぐられるからです。

 『タンポポ』というラーメン屋を切り盛りする映画(※)には、ラーメン屋の完璧なオペレーションを映すシーンがあるのですが、そのときの様子を彷彿(ほうふつ)とさせました。

※伊丹十三 監督・脚本の1985年の日本のコメディ映画。タンクローリーの運転手がラーメン屋を経営している女性に惹かれ、「行列のできるラーメン屋」を目指す、という物語です

――その後、どうなったのか気になります。

大使同じやり取りが1、2回続きました。すると、「翻弄されている場合ではない、必ず自分の番もやってくると」とわれに返りました。しかし、ラーメン二郎初心者の私はオプションを伝える気構えは当然ながら、持ち合わせていません。「店内に不協和音をもたらしてはならない」という緊張感が走りました。

 ばらばらに座った(一緒に座れない、というのも二郎のスタイルです)大使館の職員や夢中にラーメンをすするお客さんには聞けない。ましてや、「店員に聞くなんて、ご法度だ」と思いました。

 案の定、私の番もやってきました。そこで私は、その数分(いや数秒かもしれません)の間に何度となく心で繰り返した「ふつうで」と声に出しました。

 どこからどう見ても、抜け目のないたった4文字の言葉を発するのに、どうしてこれほど緊張するのか? ラーメン二郎に行ったことのある人にしか伝わらないと思います。店員は一瞬何やら間を開けたましたが、すんなりと受け入れてくれて、私はほっとした気持ちになりました。

 結局、心行くまでラーメンを堪能できて、とても良い経験にもなりました。次回は「ニンニク ヤサイ マシマシ、ブタ抜き、アブラ多め」を食べてみようと思います。

画像提供:ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使(@TeimurazLezhava

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