「愛は毎日、どんな瞬間にも感じる」山本耕史が明かした家族との幸せな生活 “ピノキオ”吹替インタビュー(1/2 ページ)

「愛って大きな何かが起きることじゃなくて、何でもないことを積み重ねられることなのかな」

» 2022年09月24日 08時00分 公開
[Yukaねとらぼ]

 実写映画ピノキオが9月8日から、ディズニー公式動画配信サービスDisney+(ディズニープラス)で配信中。日本語吹替版ではジミニー・クリケット役を俳優の山本耕史さんが務めています。

ディズニー長編アニメーション映画「ピノキオ」実写化でジミニー・クリケット役の山本耕史 山本耕史さん。ポケットにはジミニー・クリケット

 ベースになっているのは、カルロ・コッローディ作の童話を原作にし、1940年にウォルト・ディズニー・プロダクションが公開した同名長編アニメーション作品。孤独なおじいさん・ゼペットが作った木彫りの人形・ピノキオが妖精の魔法で命を授かり、人間の子どもになる願いをかなえるため、彼の“良心”となるジミニー・クリケットとともに大冒険に出るストーリーです。

 実写版は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「フォレスト・ガンプ/一期一会」で知られるロバート・ゼメキス監督がメガホンを取り、オスカー俳優トム・ハンクスがゼペットを演じています。一方でピノキオやジミニーといった非人間キャラクターは主にCGで描かれており、2次元と3次元が混在する映像となりました。

 予告を見た視聴者からは「違和感があるふしぎな映像」との声もあがる中、山本さんは配信直前イベントで「パッと見ただけで、生きている人間と命をもらったピノキオが冒険するという輪郭がすごくはっきりする。人々の愛が、より表現できている」と実写の素晴らしさを熱弁。作品と、ジミニーの人柄ならぬ“虫柄”にどんどん引かれたと話す山本さんに、ジミニーの魅力から家族の愛にまつわるお話まで伺いました。

ディズニー長編アニメーション映画「ピノキオ」実写化のジミニー・クリケット ジミニー・クリケット

「完璧じゃないからこそ、人に伝わる」 “ジミニー・クリケット”というキャラクター

―― 原作映画公開から82年。長く愛され続けるアニメーション映画「ピノキオ」には、もともとどんな印象を抱いていましたか?

山本耕史さん(以下、山本) 「ピノキオ」はもちろん知っていましたし、ビジュアルもまぶたの裏に深く刻まれていましたが、お話をいただいて「どんな話だっけな」「おじいさん、ピノキオ、ジミニー・クリケットの他に、どんな登場人物がいたっけな」と思ったのが正直なところです。そこであらためて話を調べて、勉強しました。

 「そうだそうだ!」と「ここは記憶になかったな」と思う部分がそれぞれ混在していましたが、一貫してとてもシンプルなお話だなと。分かりやすく大事な教訓が詰まっていて、だからこそ長く愛され続ける作品なんだと思いました。

―― アフレコを通して、印象が変化した部分はありましたか?

山本 「ジミニーって、こんなにずっとピノキオに付き添って、しゃべっていた役なんだ!」と驚きました。何ならピノキオよりしゃべっていますから。そして思ったよりも早口でしゃべらないと日本語が入らない。アフレコをやって、初めて分かったことでした。

 ジミニーはピノキオに良心を伝える役でもあり、視聴者に説明している役。ピノキオに話すことを通して、視聴者に考えるべきいろいろなことを投げかけている。だからこそ、この“ジミニー・クリケット”というキャラクターじゃなければならない。

―― と、いいますと?

山本 例えばもっと体が大きくて強そうなキャラクターが問題提起するのと、ジミニーのような小さな虫が問いを投げかけるのとでは全然違う。見ている人たちがクスクスと笑いながらも「そうだよな」って素直に聞けるキャラクターが、ジミニーなんです。

 ジミニーが人間だったら、また話が全然違うはず。人間が人間の教訓を伝えていたら、説教臭いじゃないですか。ジミニーが人間ではなくてコオロギであること、それがこの作品の大きな特徴。

 虫のくせに偉そうに、蝶ネクタイだのハットだのおしゃれしているわりには、おっちょこちょいで、ちょっととぼけて抜けている。「優しい心って、こういうことだよ」と伝えながら、本人も学んでいる。完璧じゃないからこそ、人に伝わる。この役割は、ジミニー・クリケットにしか担えないと思います。

ディズニー長編アニメーション映画「ピノキオ」実写化のジミニー・クリケット ピノキオの側で、良心を伝えるジミニー

「用意してきたせりふの言い方は、ほとんど使えない」 声優の難しさ

―― 子役からスタートし、俳優としてこれまで多彩な役柄を演じられています。直近では月9ドラマ「競争の番人」(フジテレビ系)や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)、映画「シン・ウルトラマン」など“クセのある役”が話題になっていましたが、打って変わって今回の役作りは、どう行ったのでしょう?

山本 まず、今回は僕が演じているわけではない。俳優はジミニーで、僕の演技ではないんです。ジミニーのお芝居に声を当てているだけ。だから役作りは“半分”っていうのかな。僕自身がジミニーを演じるなら、また違うものになるだろうし。

 ジミニーはすでに出来上がっているキャラクターだから聞かなかったけれど、役を演じる上で、僕はいつも最初に「この役っていい人ですか? 悪い人ですか?」と聞きます。例えば「どちらかというと悪い人です。でも良い人に見せておいて、裏で悪い人です」と説明を受けて、「あ、なるほどね」と。その上で「こうしたら面白いかもしれませんね」と自分のアイデアを少なからず盛り込んでみる。

 役によってアプローチの仕方は変わるけれど、基本的に俳優は台本に書かれている役をどうみせていくかというだけ。与えられた役の印象を、そのまま具現化するだけなんです。最近「うさんくさい」とよく言われるけれど、僕が悪役を作っているのではなく、たまたま悪役が続いただけだから(笑)。

ディズニー長編アニメーション映画「ピノキオ」実写化でジミニー・クリケット役の山本耕史 ピノキオと正直ジョンと一緒に

―― 今回のような声のみでの表現は、例でいえば映画 「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成」のムキムキマッチョなアームストロング少佐役を演じるときのような身体での表現と比べて、どのような違いがあるのでしょうか?

山本 アフレコは下を向いて、映像をなんとなく上目で見ながらせりふを読むのですが、後からあらためて映像を見たときに「声と合っていないな」ということが起こるんです。せりふの前に、ジミニーが「ハッ」っと息を吸う瞬間を見つけて、「この時、すごい息吸ってるな。このテンションのせりふじゃないな」と気付くとか。

 だから自分が用意してきたせりふの言い方は、ほとんど使えない。「こういう声を出しているだろう」と、見ているキャラクターに合わせて演技しないといけなかった。身体作りのように自分の理想に寄せていくのではなく、あくまで相手に寄せていく感じ。声を当てるお仕事の難しいところで、自分の理想は持ち合わせられないんです。

―― 自分の理想のイメージが通用しない中で、“ジミニーの声の感じ”は、どうやって作り上げていったのですか?

山本 僕の場合「今の感じ、聞いていてどうですか」とプロデューサーさんやディレクターさんに聞きながら「もう少し楽しそうにしようかな」「もうちょっと明るく言ってみます」と調整していきました。自分だけで調整するのは、とても難しい。

 声優さんがすごいのは、自分でどんどん進めていくこと。例えば録音した自分の声を聞くと、ちょっと違うでしょう? 今自分はこんな声で話しているけれど、あとで聞くと「あれ、思っていたのと違うなぁ」となる。

 声優さんはそれを分かった上でしゃべっていく。長年の技ですよね。僕は分からなかった。だから他の人に聞いてもらって寄せていくことしかできなかったなぁ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/01/news016.jpg 消波ブロックの隙間にカニカゴを仕掛けたら…… 「うそでしょ!」“想像を絶する結果”に大興奮「見てて声出た」
  2. /nl/articles/2501/31/news050.jpg 「許されると思ってんの?」 スマホのアラームを設定→翌朝…… “絶望の通知内容”が430万表示 「ほんとこれ」
  3. /nl/articles/2502/02/news005.jpg 「正直破格です」 成城石井の元店長が辞めてからも買い続ける“名品”がリピ必至 「ヨダレが出そう」
  4. /nl/articles/2501/31/news013.jpg これは“1秒”で解きたい! 「8×2×0÷4」の答えは? 【算数クイズ】
  5. /nl/articles/2502/01/news047.jpg 【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
  6. /nl/articles/2502/02/news069.jpg 「レベル間違えてる」 イオンの“1944円恵方巻”、衝撃ビジュアルにネット大騒然 「なにこれ」「本気かよ」
  7. /nl/articles/2502/02/news038.jpg 100均ビーズをどんどんテグスに通していくと…… うっとり見入る完成品に世界が注目「これは傑作」「どれも可愛いいい!」
  8. /nl/articles/2502/02/news003.jpg 「こんなお母さんになりたい」 北海道で暮らす67歳女性の“手作り料理”がすてき 「参考にしたい」「ぱぱっと作ってみな美味しそう」
  9. /nl/articles/2502/02/news027.jpg 「この子はきっと豆柴サイズ」と言われた子柴犬、4年後の姿が大きな話題に…… それから約1年たった“現在の様子”を聞いた
  10. /nl/articles/2501/30/news003.jpg 親の反対を押し切り、17歳で同棲を開始→それから13年後…… 若くしてママとなった女性の“現在”が話題
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議