石田祐康監督、難産の「雨を告げる漂流団地」で抱いた決意 キャラの衝突を避けたら「いい部分が引き立たない」(1/3 ページ)
「すれ違いからもう一度わかり合えたときの気持ちよさを描いてみたかった」。
スタジオコロリドの長編劇場アニメ第3弾となる「雨を告げる漂流団地」が9月16日に全国公開されます。
石田祐康監督が「ペンギン・ハイウェイ」(2018年)から4年ぶりに手掛けた同作は、小学6年生の少年少女が体験するひと夏の不思議な冒険を描いたファンタジー作品。
夏休みのある日、クラスメイトとともに取り壊しの進む「おばけ団地」に侵入した幼なじみの航祐と夏芽たち。しかし、ひょんなことから団地ごと大海原が一面に広がる異世界に迷い込んでしまい、ときには支え合い、ときには激しく衝突してのサバイバル生活を繰り広げていきます。
石田監督にとっては、「陽なたのアオシグレ」(2013年)以来、約10年ぶりとなる劇場オリジナル作品。“本当に難しかった”と制作を振り返る石田監督に、「漂流団地」誕生までの複雑ないきさつや、同作に込めたというちょっとした願いなどをじっくりとうかがいました。
団地へ実際に移り住んで生み出した作品
―― 「雨を告げる漂流団地」は、団地を重要な要素に据えた作品です。石田監督が発表したステートメントでも「縁の下で人を支えようと頑張る存在」とありましたが、作品の完成前後で団地に抱くイメージはどのように変わりましたか?
石田祐康監督(以下、石田) 最初のころは、自分の少ないながらもある程度持っていたイメージや、「シンプルな構造をしたものが海に浮いていたら面白いな」といったアイデア、団地の見た目がちょっと好きで作り始めたところもありました。
団地に実際に住むようになってからは、住んでいる方たちとの交流もあったりして。同じ団地に住んでいらした「公団ウォーカー」の照井(啓太)さんと家族ぐるみで交流しながら作品を作っていったといういきさつもあり、完成後の実感としては大きく変わっています。
―― 実感、というと?
石田 特にヒロインの夏芽がそうなんですけど、団地を巡る思い出のいい部分だけでなく、ちょっとつらい部分にも踏み込んで書かなければならないところがあります。団地で過ごした過去が自分の血肉となっているからどんなことも切り離せない。それは作り手としても、同じ時間と体験をもってしないと感じられないものだと。
もう少し具体的には、コロナ禍でもあったので、リモート制作という人のつながりが希薄で気持ちのよりどころのない状況を通して作品を作っていたからか、夏芽ほどではないですけど、当時のつらかったこと、しんどかったことが団地での記憶と混ざり合ってしまって……今後の人生においては切り離せないかもしれない、と。
だから、最初にただ漠然と良いイメージを抱いていたころ、「団地ってなんかいいな……」と発想して作り始めたころとは別なんですよね。
―― キャラクターと同じような苦しさに身をおくことで、感情をいっそう込めやすくなったのでは?
石田 気持ちを込めやすくなったのは確かです。制作においては込められれば込められるほどいいという点も確実にありますし、今までの作品も全部そうしてきました。
自分の生活環境が変わったタイミングで、すぐ団地に移り住むという思い切った決断に踏み切ったこと、なかなか引けない状況に首を突っ込んでいってしまったこともあって、気持ちの入り方がまた一段違った感覚がありましたね。
さまざまな困難を乗り越えて完成した「漂流団地」、当初と異なるポイントは
※以下では、「雨を告げる漂流団地」のネタバレを含みます。
―― 「漂流団地」は、脚本も手掛けたということで、「一つの挑戦」ともおっしゃっていました。今うかがったお話でも相当の困難があったようですが、最も難しかった点はどこにあったのでしょうか?
石田 まさにその脚本の箇所だと思っています。どの作品もそうですが、胸を張って「これが自分の作品です」といえないといけないので。原作のあるなしに関わらずそうなんですが、オリジナル作品となると責任は余計にあります。だから、気持ちの込め方の部分が何よりも大事だろうと思っています。
物語においてどういった感情を一番のよりどころにするのかは、なかなか他の方に頼めるタイプの話ではありません。そのため、脚本の根幹部分というのは、こちらが考え抜かなきゃいけないことなんだろうなと。映画を最後まで描くのは自分ですし。
―― 軸をぶらしてはいけないという話ですね。脚本ですが、当初案と大きく変化した部分はあったりしたのでしょうか?
石田 団地が大海原を行くイメージボードを最初に提示したちょうど同時期に作っていたものが、基本的には現在のものに近かったのかなと。
メインキャラとなる航祐と夏芽の原型にあたる子がいて、自分たちの思い出の場所である団地が壊されることに抵抗を持っている点は同じですが、団地に最初は立てこもっちゃうんですよ。
主人公たち以外の部分でも、子どもたちが飛ばされた先が団地の持つ「意識の世界」になっていて。のっぽ君も当初、人間の男の子の姿ではなく、団地自体が意思を持ち、会話もできるという設定にしていました。
団地は航祐と夏芽に未練を抱いているので、あの手この手を尽くしてなかなか現実世界へ帰してくれない。最終的には、団地の暮らしで良かったとき、すてきだったときを幻影として見せてくるんです。
―― 最終部あたりで一部近いシーンが確かにありました。
石田 そうでしたね。
夏芽の目には前のお父さんと楽しく暮らしていたときの光景が映し出される。今では新しいお父さんと暮らすようになって、そこでつらい目に遭ってしまってる分……迷いが生じちゃうんですけど、最後は2人して団地に「ありがとう」って伝えて元の世界に戻ってくる。根幹の部分は今のものと結構似ています。
住人同士が「家族」として生活する中で生まれたさまざまな思い。時代の変化と一緒に、そうしたものとも別れなくちゃいけなくなるんですが、一人ひとりがどう折り合いをつけるのか、どう飲み込むのかっていうところが主題として最初からあったんでしょう。
その後は団地自体にキャラクター性、人物の姿を与えた方がいいということになったので、のっぽ君という1人の男の子を設定して、その子との別れの話にしたらいいんじゃないかという方向に落ち着きました。そこからの紆余(うよ)曲折が一番大変だったのですが、それはまた別の話で。
―― 他のキャラも当初からいたのでしょうか?
石田 航祐や夏芽ほど具体的ではなかったですけど、令依菜みたいなタイプの女の子は最初からいました。他のキャラはその後の段階で一気に出てきた感じです。
―― 話をうかがっている限りでは、のっぽが出てきたり、キャラ一人ひとりのカラーがハッキリしたことで物語にかなりの広がりが出てきた感じがします。
石田 確かに。苦労こそしたものの、結果的に「いつかはやってみたかった」と感じていた群像劇をある程度やれたのかもしれないです。
また、当初から目指していた航祐と夏芽を描くということ、そこは何とか一貫することができたのでよかった。先ほどもお話しした、企画が途中で紆余曲折したというのはまさにそこだったんですよ。
航祐と夏芽じゃなくて、夏芽とのっぽ君の話にしようとか、もしくはもっと全然違う方角へ向いた作品。あるいはキャラそのものの感情より作品の世界観を具体的に見せていく作品の方がいいんじゃないかとか、会議では本当にいろいろな意見が出まして……。
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