「オンラインでの出会いはもはや当たり前」 “アラジン”ナオミ・スコット&池松壮亮が国際カップルを演じる「モダンラブ・東京」インタビュー(1/2 ページ)
コロナ禍で撮影できた“喜び”が重なるストーリー。
東京の街を舞台に現代の愛をテーマに描くAmazon Originalドラマ「モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜」の配信が10月21日からPrime Videoでスタートしました。1話完結のオムニバス形式で、マッチングアプリやセックスレス、シニアラブや国境を越えた愛など現代的なトピックを扱った全7話で構成されています。
同作のオリジナルは2019年から現在まで2シーズンが制作された米版で、『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたコラムを基に、愛にまつわる物語を描いたオムニバスドラマ。日本版第6話「彼は私に最後のレッスンをとっておいた」には、池松壮亮さんとナオミ・スコットが出演。実写版「アラジン」でジャスミン姫を演じ話題になったナオミと、子役時代にトム・クルーズ主演作「ラスト サムライ」で映画初出演を果たした池松さんが全編英語で演じる、全7話中最も国際色が豊かなストーリーとなりました。
二人が演じるのはロサンゼルスに滞在中の英国人女性と、東京で暮らす日本人男性。オンライン英会話レッスンを通じて出会った男女がリモートで関係を深めていく様子は、コロナ禍を経験した私たちにはよりリアルな“恋愛”に写ります。ねとらぼでは東京の池松さんと、英国在住のナオミにリモートでインタビュー。モニターを介して劇中さながらの再会を果たした二人に、オンラインデーティング(交際)への考えや、言葉での意思疎通が不完全な中で進められた撮影について聞きました。
あなたにとっての愛って? 「問い直すこと、そのものがとてもいい」
―― 劇中でキーとなるこの質問から展開させてください。「What is love for you?(あなたにとっての愛とは何ですか?)」
池松壮亮(以下、池松) その質問は、プロモーションできっと聞かれるだろうと身構えていましたけど、やっぱり答えは出ませんね。おそらく感覚的には理解しているものだと思うんですけど、誰にも答えがない問いで、誰もが人生をかけて探すもの。いわば概念。捉え方は人それぞれ、大小異なるものだと思いますが僕にはまだまだ分かりません。
「映画って何ですか?」という質問くらい難しいです。少しずれますが、コロナ禍から立て続けに世界でさまざまなことが起き、今なお戦争が続き過渡期にある現代で、愛とは信じるに値するものなのか。困難を乗り越える手段としてまだ愛は有効なのか、つまりそういう愛を問い直すこと、“What is love for you?”という問いそのものに、とても価値があるなと思いました。
ナオミ・スコット(以下、ナオミ) すごくいい答え。「愛とは何かを問う」ってとてもすてき。私は問うこと自体がその答えと同じくらい重要だと思う。愛は常に変化し続け、その意味は人生を通じて変わっていくもの。あらゆる意味を持ち、壮亮が話したように概念であり、いろいろな形があり、経験するものでこれといった定型はない。
犠牲も愛ですし、愛は行動。アクティブで能動的。子どもがいたらまた変わる。「これまで愛が何か分かっていたつもりだけど、子どもが生まれて初めて理解した」とはよく聞きますよね。ある人との間に感じた「これが愛!」と感じていた感情が、別の人との関係がスタートしたら「あぁ、これこそ本当の愛!」と変化したなんてこともよくある話。
壮亮の言葉通り、ものすごく難しい質問で、必ずしも完全に答えることができない。願わくは最も健全な愛の道に進めたらというところでは。答えになっているかな(笑)。
―― すてきな答えです。「愛とは何かを問いかけていく」点を魅力に感じ、出演を決める材料にもなったのでしょうか?
池松 ステイホーム期間中にオリジナルの「モダンラブ」をたまたま見ていたんです。すごく面白くていろいろ調べたら、『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムがベースになっていて、市井の物語をすくい取りなかなかスポットが当たらないような人物にも焦点を当てているところがとても気に入りましたた。
だからこのオファーがきたときは驚きました。まさかあのシリーズの一員になれるだなんて。そして海外へ渡ることが非常に難しい状況下でのオファー。だけどリスクのあるところにはいいものが生まれる、楽な方を選ぶのではなく、困難を越えていかないと超えていかないと生まれないものがあります。この企画の持つそういったダイナミックな姿勢にも心引かれました。愛とパスポートとヘタな英語を持って、海を渡らなければと思わせてもらえました。
ステイホーム期間後のロサンゼルス 撮影できる喜びを体現したストーリー
―― 挑戦的といえば、物語の半分はリモートを介した接触のないシーンで構成されています。コミュニケーションの取りにくさはチャレンジングだったかと想像しますが、撮影時はいかがでしたか?
池松 外国で仕事をするというのは大変なことばかりです。言葉の問題や、環境、文化、さまざまな違いが壁として待っています。さらにコロナ禍だったこと。リモートのシーンの苦労も、今日久々にオンラインでつないでみて思い出しました。
でもラブストーリーとしては壁があればあるだけ良い。「ロミオとジュリエット」ですね。近年なら「愛の不時着」か。世界や個人が分断を極める今、諦めずに“人とつながる”ことを役を通して体現してみて、その結果ナオミさんや(監督の)平柳(敦子)さん、アメリカのクルー、Amazon USのチームといった素晴らしい方たちに出会えました。自分の人生にとって財産となる出会いや経験がたくさんありました。
―― ナオミさんは英国在住。コロナ禍から撮影時まで、池松さんや私たち日本人とは少し違う感じ方をされたのでしょうか?
ナオミ ロサンゼルスでの撮影だったので、私にとっても久しぶりの海外でした。ステイホーム期間を経てようやくの渡航、出張ができて本当にうれしかった。私はステイホームにすっかり慣れすぎてしまって。居心地のよさにどっぷり浸りすぎていたので、国境を越える経験ができてよかった。
それ以上に日本の映像制作に関わり、日本の映像監督と仕事ができた経験もありがたかったです。以前に(監督の平柳)敦子の作品「オー・ルーシー!」を見て、映画監督としてのセンスに感動したことがあったので、彼女とともに今までと違う仕事ができたのはエキサイティングな経験でした。
役者や制作者たちも私が普段、一緒に組むコミュニティー外の方たちばかり。それに日本が大好きだから、日本の文化に触れられたのもよかったです。短い間だけど一度だけ日本へ行ったことがあってそれからずっと魅せられています。
作品の一部となれて光栄です。この物語は本当に感動的で、スイートでありながらいろいろと考えさせる内容。本当に楽しかったですし……えーと、撮影したのはいつだった? 2021年の終わり? 覚えてる、壮亮?
池松 2021年の8月くらいだよ。
ナオミ そう、ちょうど1年くらい前ね! その時点では、撮影現場での感染対策も少しずつ緩和してきていた。とにかく安全第一で依然として規制は厳しかったですが、それでもみんなで「やっと会えたね」「やれたね」と言い合える。セットにみんなで集まって仕事ができることへの喜びを実感できました。
何が何でもソーシャルディスタンスで離れすぎなくてもいい、食事のシーンも普通に食べていい。今まで当たり前に思っていたものがそうじゃないんだと誰もが学んだ。だからこそ当然に思っていたことがいかに重要か、ありがたみが感じられました。
―― ステイホーム期間を思わすリモートのシーンがあったからこそ、初めて実際に顔を合わせたシーンの感情の動きが際立ったように感じました。撮影はどのように進められたのでしょうか?
ナオミ 大半は時系列通りに、オンラインのシーンから先に撮影したのかな?
池松 あやふやだけど、最初にお好み焼き屋さんのシーン、初デートの場面を撮影したことは覚えてる。
ナオミ 最初だったっけ? 私もこういうの覚えられなくて。スピーディーに進むので。
―― 初デートのシーンはお二人のぎこちなさがリアルで、10代の思い出がよみがえるような甘酸っぱい気持ちになりました。実際に対面してからすぐ撮影したということは、あの空気感はリアルだったのでしょうか?
ナオミ あぁ、その通り! 敦子は意図的に「知り合ってすぐでまだ居心地悪いうちに最初に撮影しよう」とスケジュールのトップに用意していたんじゃないかな。
初デートのシーンですごく気に入っているのは、沈黙の長さ。敦子は全然気にしないんです。9割方黙りっぱなしの場面を、監督は「それがいい」って。誰もが経験したことがあるからこそ、誰もがいいと思えるシーンじゃないでしょうか。(池松さん演じる)守はお好み焼きを焼くのに集中していて、私は周囲をキョロキョロ。くだらないジョークで余計に寒くなって、そういう奇妙で居心地が悪いところがとてもスイートでしょう?
―― まさに甘酸っぱい気持ちになりました。お二人の実体験が生きた側面はあるのでしょうか?
池松 恋、デートとかじゃなくても、あれくらいの探り合いっていまだに僕はわりとあります。日本人だからかな(笑)。ナオミさんは?
ナオミ 考えてみると、恋愛に限らず初対面の人と接するとき、それが唯一私とエマが似ているところかな。一生懸命すぎてから回ってしまって、自分で「大丈夫よ! すごい! すばらしい!」とオーバーに演出しちゃう。守というか壮亮は落ち着いて見えたけれどね。
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