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» 2023年02月23日 18時00分 公開

商業的に見たプリキュア20年史 隆盛と苦戦を繰り返しながら歩み続けた玩具戦略サラリーマン、プリキュアを語る(1/3 ページ)

プリキュアが20周年を迎えられたのも、ひとえに子どもたちが玩具を買ってくれたからなのです。

[kasumiねとらぼ]

 2023年は記念すべき「プリキュア20周年イヤー」です。

 東京、大阪、名古屋での展示会「全プリキュア展」の開催など、各地でイベントも予定され大きな盛り上がりを見せています。

プリキュア バンダイの本社ビル(台東区)のプリキュア20周年記念のビルラッピング(著者撮影)

 プリキュアも商業作品である以上、関連商品の売り上げとは切っても切り離せない関係にあります。プリキュアシリーズが20周年を迎えることができたのも、ひとえに「関連商品が売れ続けている」からなのです。

 前回は「プリキュアの表現」からみた20年史を見てみました。そこで今回は、この20年「玩具業界誌」が報じ続けたプリキュア玩具の「商業的な側面」からみたプリキュアの歴史を見ていきたいと思います。

プリキュア バンダイナムコのプリキュアシリーズのトイホビー売り上げの推移

kasumi プロフィール

プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。


初代「ふたりはプリキュア」大ヒット

 2004年2月1日。記念すべき第1作目「ふたりはプリキュア」が始まります。当時としては画期的だった徒手空拳で戦う女の子のアクションと友情を描いたこのアニメはまたたく間に子どもたちの心をつかみます。

 番組開始と同時に、数量、金額ともに前年「明日のナージャ」の200%という驚くべき売り上げでのスタートとなりました。

数量、金額ともに前年の「明日のナージャ」と比較しても昨対200%で推移しているといい「おジャ魔女どれみ」以来のヒットキャラクターとしての売り場での期待も高まっているという。
『月刊トイジャーナル2004年3月号』(東京玩具人形協同協会)P79

プリキュア 年間売り上げ1位2位となったカードコミューン(左)とプリティコミューン(右)(全プリキュア展から。著者撮影)

 変身玩具「カードコミューン」は累計60万個を売り上げるヒット商品となり、プリティコミューンとともにその年の年間玩具売り上げの1位2位を独占(PDF:東映アニメーション2005年3月期第3四半期決算から)。

 視聴率も好調に推移し、すぐに2年目の制作が決定するなど、プリキュアは一気に女の子向けアニメのスターダムへと駆け上がったのです。

 2年目も勢いは止まりません。続編「ふたりはプリキュア MaxHeart」では、追加キャラ「シャイニールミナス」が大人気となり売り上げをけん引。その勢いは加速していきます。

―― ルミナスが登場して、視聴者の反応はいかがですか?
鷲尾 今年になってから、4〜6歳女児の視聴率が急上昇したんです。平均して45%、最高で62.5%と、これは驚異的な数字です。これは前のシリーズでのプリキュアふたりの認知度が上がったことと、さらにルミナスが登場したこともかなり大きく付与したと思っています。
『ふたりはプリキュアマックスハート ビジュアルファンブックvol.1』(講談社)P83

スプラッシュスターの苦戦

 わずか2年で子ども向けアニメのトップへと躍り出た「プリキュア」。3年目はキャラクター、設定を一新して「ふたりはプリキュアSplash☆Star」がスタートします。

 しかし、順風満帆かと思われた新シリーズは、ここで大きな苦戦を強いられることとなります。関連商品の売れ行きが良くなかったのです。玩具業界紙では「変身玩具の販売数が半減した」と報じられるほどの落ち込み様でした。

ミックスコミューンの販売数が昨年のハートフルコミューンの半分。
『月刊トイジャーナル2006年4月号』P87

―― 「Splash☆Star」はビジネス的に落ち込んだと聞いていましたけど、それはおもちゃも?
渥美 一番顕著に表れていたのがおもちゃです。
幻冬舎『プリキュアシンドローム!』P145

プリキュア 苦戦を強いられることとなったスプラッシュスターの玩具(全プリキュア展から。著者撮影)

 絶好調だったプリキュア玩具の売り上げが「前年の半分」にまで落ち込んでしまう。プリキュア3年目にして最初の試練が訪れます。

 この落ち込みの大きな要因として挙げられているのは、前年から大ブームとなっていたセガの女の子向アーケードカードゲーム「おしゃれ魔女・ラブandベリー」です(「・」はハートマーク)。最終的にカード出荷枚数が2億6000万枚を超える大ヒットコンテンツとなるこの「ラブandベリー」は、プリキュアに使われるはずだったであろう可処分所得を大きく奪うこととなったのです。

プリキュア オシャレ魔女ラブandベリーは女の子に空前の大ヒットとなりました(出典:Amazon.co.jp

鷲尾「その中でも『ラブandベリー』は『ふたりはプリキュア』放送開始から約半年後の二〇〇四年十月からスタートして、あっという間に情報番組やニュースにとりあげられるくらいダントツの人気になりました。女の子のニーズをよくとらえていたし、非常によくできていたと思います。
幻冬舎『プリキュアシンドローム!』P75

 最終的に、2007年3月期のトイホビー売り上げは前年の123億から一転し60億(昨対48.8%)と半分以下となってしまいました(PDF:2007年決算短信から)。

 「ふたりはプリキュアSplash☆Star」は、視聴率やこどもアンケートの結果を見ても子どもに人気がなかったわけではありません。しかし当時の「商業的な落ち込み」はプリキュアシリーズの存続の危機となってしまうのです。

もう1年やってうまくいかなかったら「プリキュア」は終わる

 プリキュアを立ち上げた鷲尾天プロデューサー(当時)は、上司から「もう1年やってうまくいかなかったらプリキュアは終わる」と通告されたことを語っています。

亀田 「Splash☆Star」は番組放送開始の二月から夏くらいまではよかったんですが。その後ちょっと視聴率的にも伸び悩んでいた。
鷲尾 そんな周囲の状況を受けて、社内では「来年はキャラクターを変更します」という報告をしたら当時の上司から「もう1年やってうまくいかなかったら『プリキュア』は終わるだろうし、鷲尾君もこの枠から離れることになると思う」と言われました。
幻冬舎『プリキュアシンドローム!』P76

 3年目に大きく売り上げを落とし、初めての危機が訪れたプリキュア。

 プリキュア制作陣は、予定していた「Splash☆Star」の2年目を取りやめ「新しいプリキュア」に変える決断をします。

鷲尾 私は『Splash☆Star』の2年目を考えていたんですが、さまざまな周辺状況の中、1年で終わらざるを得なくなってしまった。私自身、この作品も2年続くと思い込んでいた慢心と油断があったと思います。でも、内容としては充実した良い作品をみんなでつくったという自負は今でもあります。
ぴあMOOK『プリキュアぴあ』P85

 そうして生まれたのが、2007年「Yes!プリキュア5」です。

 スーパー戦隊のような多人数によるチーム制になった「プリキュア5」。この年、プリキュアは「ふたりは」の看板を下ろす決断をしたのです。

プリキュア シリーズの転換点となった「Yes!プリキュア5」(出典:Amazon.co.jp

 プリキュア5の放送開始前、玩具業界紙にバンダイから「プリキュアのブランド名は残す」が「反省点を踏まえて、番組のコンセプトから商品展開まで全てを変える」というコメントが出されます。

4作目となる新作は前作「ふたりはプリキュアSplashStar」の反省点を踏まえて、番組のコンセプトから商品展開まで全てを変えていますが、プリキュアのブランド名だけは変えていません。
『月刊トイジャーナル2007年2月号』

 これは「Yes!プリキュア5」で「プリキュアシリーズは大きく方向転換しますよ」という玩具メーカーからの宣言でもありました。

「棚から商品が消えた」プリキュア5の大成功

 そして、この方向転換は大成功をおさめます。「Yes!プリキュア5」でプリキュアは驚くべき復活を遂げることとなるのです。

「Yes!プリキュア5」も2週目は前週比180%と良い動きを示した。
『月刊トイジャーナル2007年3月』P69

2月の立ち上げより、前例がない右肩上がりの販売目標で推移しています。夏の売り上げ目標はずばり対比300%。絶好調のピンキーキャッチュとドリームコレットを核に、「武器2種類」を売って売って売りまくる商戦を予定しています。
『月刊トイジャーナル2007年7月』

 「Yes!プリキュア5」の人気はすさまじく、玩具業界誌のレポートでも「前週比180%」や「前例がない右肩上がりの販売目標」「夏の売り上げ目標は昨対300%」など景気の良い言葉が飛び交いました。

プリキュア プリキュアの危機を救った「Yes!プリキュア5、5GoGo!」の玩具(全プリキュア展から。著者撮影)

 春先からGWにかけては、変身アイテムを始めとした関連商品が玩具屋さんの棚から消えるほどの人気となり、後にバンダイの関係者が「GWに商品が行きわたらなくて流通に迷惑をかけた」(『月刊トイジャーナル2008年2月号』)とまで発言しています。

 最終的に、2007年度のプリキュアのトイホビー売り上げは、前年60億円から105億円(前年比175%)とV字回復。「Yes!プリキュア5」の成功がシリーズ終了の危機を救ったのです。

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