ドン・キホーテ運営会社、低用量ピルの費用全額負担 導入の背景を聞いた「みんな人には言わないけれど、生理痛に悩んでいる」(1/2 ページ)
制度を導入した背景を聞きました。
「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入しました。SNS上では、「本当に凄い」「もっと広まってほしい」など称賛する声が広がっています。ねとらぼ編集部では、PPIHに制度を導入した背景を聞きました。
PPIHが女性社員を対象に実施した調査によると、約4分の1が月経(生理)痛で仕事を休んだ経験があり、なかでも2〜3カ月に1度以上休むという回答は30%にのぼったといいます。同社では、このような状況を踏まえ、月経痛やPMS(月経前症候群)の改善に効果があるとされる低用量ピルの費用を全額補助すると決定しました。
制度の対象には、女性社員のみならず、社員の女性パートナー(同性パートナーの場合も対象)も含まれます。オンラインピル処方サービス「mederi for biz(メデリフォービズ)」を活用し、オンライン受診の内容を踏まえ、症状や悩み、体質に合わせた低用量ピルを医師が処方して、自宅に1カ月分が配送される仕組みです。
約4分の1が月経痛で仕事を休んだことがある
制度の導入にはどのような背景があったのか。ねとらぼ編集部の取材に対し、PPIHの広報担当者は「弊社グループでは、多種多様な個性を認め合う文化を大切にしながら、女性が活躍できる環境づくりを中心に、幅広くダイバーシティを推進しています」とコメント。
続けて、約4分の1が月経痛で仕事を休んだことがあるという社内調査に触れ、「低用量ピルの服用により、月経痛や月経周期などをコントロールできるようになり、女性従業員の心身の健康維持をサポートし、能力をさらに発揮しやすい職場づくりにつながると期待し、制度を導入いたしました」と説明しています。
また、女性社員のみならず、社員の同性パートナーも含む女性パートナーも対象にした理由については、「弊社の『ライフパートナー規程(※)』では、同性カップルも各種福利厚生の対象としています。女性パートナーを持つのは男性社員だけではありません」と前置きしつつも、こう語りました。
「制度の利用対象を男性社員の女性パートナーも対象とすることで、『男性従業員が女性の健康課題や働き方について、知識を深めるきっかけにしてほしい』という期待を込めました」(広報担当者)
「また弊社では、結婚祝い金などの夫婦やカップル向けの福利厚生には、独自に定めた『ライフパートナー規程』を適用しております。今回の低用量ピル服用費補助につきましても、社員の『ライフパートナー』を制度利用の対象としているため、女性ライフパートナーを持つ女性社員も含まれます」(広報担当者)
※「ライフパートナー規程」は、配偶者、内縁者(事実婚)、当事者配偶者(同性カップル)をライフパートナーと定める同社の規程です。例えば、同性カップルは「従業員と同性で、同居しており、生活を共に営み、家計を共にしている者」を対象としており、自治体のパートナーシップ制度の利用有無は問いません
みんな人には言わないけれど、月経痛やPMSについて悩んでいる
ところで、PPIHが先進的な取り組みをしたのは初めてではありません。2022年3月にはドン・キホーテなどの店舗従業員を対象に、2023年2月には国内グループ法人の管理部門で働く従業員を対象に、髪色自由化などの服装ルールを緩和しました。
なぜ、PPIHはこれほど先進的な取り組みを進めているのか。広報担当者は「多様性を認める企業文化」「トップダウンではなく、現場に大きな裁量権を与える『権限委譲』という企業文化」のほか、女性の健康課題については「役員や従業員の理解があること」が理由ではないか、との考えを示しています。
「弊社には社外取締役に、産婦人科医で内閣官房参与を務めた経験もある吉村泰典がおります。吉村は弊社の幹部や従業員向けに、女性の健康課題についてセミナーなどをしております。ダイバーシティ推進担当役員の二宮仁美が、そこで月経や女性の健康課題について知識を得る機会を得て、(今回の低用量ピル服用に関する)制度を導入するきっかけになりました」(広報担当者)
社内でも制度の導入について、早くも好意的な声が多く上がっているとのこと。女性社員からは、「今は低用量ピルを自費で買っているので、費用補助があってすごくうれしい、病院で処方されたのを服用しているので、在庫がなくなり次第申請する」「低用量ピルは、ひと月約3000円と出せない金額ではないが、いいランチを食べられる額だし、年間だと3万(円)以上になるので、これを会社が負担してくれるのはありがたい」など、評価する声が多数寄せられています。
特に「男性社員も制度の対象にしたのはとても素晴らしい」という声が多数あり、男性社員からは「月経がそこまで重いものだと知らなかった。4分の1の女性社員が仕事を休んだことがあるなんて、もっとこの割合は低いと思っていたので正直驚いた。また、ピルが避妊だけではなく生理痛やPMSの改善になるんだと初めて知った」と、制度導入をきっかけに月経について詳しく知ったという声も見られました。
広報担当者は「すでに自分自身で病院を受診し、低用量ピルを服用している女性従業員が私たちの予想以上に多くて驚きました。『みんな人には言わないけれど、月経痛やPMSについて悩んでいるのだな……』ということをあらためて実感しました」と、現在の心境を明かしています。
すでに同様のオンラインピル処方サービスはさまざまな企業で導入されており、2022年10月に導入したGMOインターネットグループでは、利用者の費用の半額を会社が負担しています。幅広い人々が活躍できる社会になるよう、このような福利厚生制度が多くの企業に広がることが期待されます。
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