ドン・キホーテ運営会社、低用量ピルの費用全額負担 導入の背景を聞いた「みんな人には言わないけれど、生理痛に悩んでいる」(1/2 ページ)

制度を導入した背景を聞きました。

» 2023年03月03日 20時10分 公開
[上代瑠偉ねとらぼ]

 「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入しました。SNS上では、「本当に凄い」「もっと広まってほしい」など称賛する声が広がっています。ねとらぼ編集部では、PPIHに制度を導入した背景を聞きました。

「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入 画像は公式サイトより
「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入 画像はPPIHによる提供
「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入 社内に掲示されたもの(画像はPPIHによる提供)

 PPIHが女性社員を対象に実施した調査によると、約4分の1が月経(生理)痛で仕事を休んだ経験があり、なかでも2〜3カ月に1度以上休むという回答は30%にのぼったといいます。同社では、このような状況を踏まえ、月経痛やPMS(月経前症候群)の改善に効果があるとされる低用量ピルの費用を全額補助すると決定しました。

「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入 画像はプレスリリースより

 制度の対象には、女性社員のみならず、社員の女性パートナー(同性パートナーの場合も対象)も含まれます。オンラインピル処方サービス「mederi for biz(メデリフォービズ)」を活用し、オンライン受診の内容を踏まえ、症状や悩み、体質に合わせた低用量ピルを医師が処方して、自宅に1カ月分が配送される仕組みです。

約4分の1が月経痛で仕事を休んだことがある

「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入 画像は公式サイトより

 制度の導入にはどのような背景があったのか。ねとらぼ編集部の取材に対し、PPIHの広報担当者は「弊社グループでは、多種多様な個性を認め合う文化を大切にしながら、女性が活躍できる環境づくりを中心に、幅広くダイバーシティを推進しています」とコメント。

 続けて、約4分の1が月経痛で仕事を休んだことがあるという社内調査に触れ、「低用量ピルの服用により、月経痛や月経周期などをコントロールできるようになり、女性従業員の心身の健康維持をサポートし、能力をさらに発揮しやすい職場づくりにつながると期待し、制度を導入いたしました」と説明しています。

 また、女性社員のみならず、社員の同性パートナーも含む女性パートナーも対象にした理由については、「弊社の『ライフパートナー規程(※)』では、同性カップルも各種福利厚生の対象としています。女性パートナーを持つのは男性社員だけではありません」と前置きしつつも、こう語りました。

 「制度の利用対象を男性社員の女性パートナーも対象とすることで、『男性従業員が女性の健康課題や働き方について、知識を深めるきっかけにしてほしい』という期待を込めました」(広報担当者)

 「また弊社では、結婚祝い金などの夫婦やカップル向けの福利厚生には、独自に定めた『ライフパートナー規程』を適用しております。今回の低用量ピル服用費補助につきましても、社員の『ライフパートナー』を制度利用の対象としているため、女性ライフパートナーを持つ女性社員も含まれます」(広報担当者)

※「ライフパートナー規程」は、配偶者、内縁者(事実婚)、当事者配偶者(同性カップル)をライフパートナーと定める同社の規程です。例えば、同性カップルは「従業員と同性で、同居しており、生活を共に営み、家計を共にしている者」を対象としており、自治体のパートナーシップ制度の利用有無は問いません

みんな人には言わないけれど、月経痛やPMSについて悩んでいる

「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入 画像はプレスリリースより

 ところで、PPIHが先進的な取り組みをしたのは初めてではありません。2022年3月にはドン・キホーテなどの店舗従業員を対象に、2023年2月には国内グループ法人の管理部門で働く従業員を対象に、髪色自由化などの服装ルールを緩和しました。

 なぜ、PPIHはこれほど先進的な取り組みを進めているのか。広報担当者は「多様性を認める企業文化」「トップダウンではなく、現場に大きな裁量権を与える『権限委譲』という企業文化」のほか、女性の健康課題については「役員や従業員の理解があること」が理由ではないか、との考えを示しています。

 「弊社には社外取締役に、産婦人科医で内閣官房参与を務めた経験もある吉村泰典がおります。吉村は弊社の幹部や従業員向けに、女性の健康課題についてセミナーなどをしております。ダイバーシティ推進担当役員の二宮仁美が、そこで月経や女性の健康課題について知識を得る機会を得て、(今回の低用量ピル服用に関する)制度を導入するきっかけになりました」(広報担当者)

「ドン・キホーテ」運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が3月1日から、女性社員および社員のパートナーを対象に、低用量ピル服用にかかる費用を全額補助する制度を導入 画像は公式サイトより

 社内でも制度の導入について、早くも好意的な声が多く上がっているとのこと。女性社員からは、「今は低用量ピルを自費で買っているので、費用補助があってすごくうれしい、病院で処方されたのを服用しているので、在庫がなくなり次第申請する」「低用量ピルは、ひと月約3000円と出せない金額ではないが、いいランチを食べられる額だし、年間だと3万(円)以上になるので、これを会社が負担してくれるのはありがたい」など、評価する声が多数寄せられています。

 特に「男性社員も制度の対象にしたのはとても素晴らしい」という声が多数あり、男性社員からは「月経がそこまで重いものだと知らなかった。4分の1の女性社員が仕事を休んだことがあるなんて、もっとこの割合は低いと思っていたので正直驚いた。また、ピルが避妊だけではなく生理痛やPMSの改善になるんだと初めて知った」と、制度導入をきっかけに月経について詳しく知ったという声も見られました。

 広報担当者は「すでに自分自身で病院を受診し、低用量ピルを服用している女性従業員が私たちの予想以上に多くて驚きました。『みんな人には言わないけれど、月経痛やPMSについて悩んでいるのだな……』ということをあらためて実感しました」と、現在の心境を明かしています。

 すでに同様のオンラインピル処方サービスはさまざまな企業で導入されており、2022年10月に導入したGMOインターネットグループでは、利用者の費用の半額を会社が負担しています。幅広い人々が活躍できる社会になるよう、このような福利厚生制度が多くの企業に広がることが期待されます。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news039.jpg 母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた