「ヨシ!」で守れる安全がある 指差呼称の歴史をまとめた同人誌『明日から使える指差呼称完全攻略BOOK』元司書みさきの同人誌レビューノート

歴史から、その効果までをさまざまな文献をもとにまとめています。

» 2023年04月16日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 今年は桜もチューリップもいつもより早く咲きました。新年度、新学期も始まり、初々しい姿の人たちを見掛ける一方、慣れた足取りのベテランの風格の方もいらしたり。こんな季節は不慣れ故のどきどきと、慣れすぎてしまった油断が交錯してうっかりミスが発生してしまったりしませんか。今回の同人誌は落ち着いて臨むための「ヨシ!」について書かれたご本です。

今回紹介する同人誌

『明日から使える指差呼称完全攻略BOOK』A5 20ページ 表紙カラー・本文モノクロ

著者:夏馬


同人誌『明日から使える指差呼称完全攻略BOOK』 りりしく「ヨシ!」

「ヨシ!」って何? 指差呼称の歴史から実践までをコンパクトにまとめる

 この同人誌がテーマにしているのは、指差呼称(しさこしょう)といわれる、声と動作による確認方法です。インターネットではよく、ヘルメットをかぶったネコさんが「ヨシ!」と躍動的なポーズをとっているのを見掛けます。注意喚起の方法だけに、短くてきりりとした呼びかけはインパクトがあり、たくさんの人の目に指差呼称の姿が触れられるようになりました。そこで、このご本の作者さんは、いい加減な指差呼称をまん延させたくない、指差呼称を理解してほしいという気持ちで同人誌を制作されたのだそうです。

 ご本では指差呼称とは何か、いつごろから使われているのか、どんな効果があるのかといった内容が文章でまとめられています。

同人誌『明日から使える指差呼称完全攻略BOOK』 指差呼称とは? からスタート

知って指させば効果UP!? 面白さにまじめに向き合う

 コミカルで印象的なネコさんをきっかけに指差呼称を知ったものですから、どことなくユーモラスにその姿を眺めていました。けれど声に指さし動作がつけられたいきさつや、実践の方法を読んでいくと、これは漠然としぐさをまねするだけでなく、意識的に使いこなすととても便利なものなのが分かってきました。

 ご本では図や多くの文献を挙げて根拠を示しつつ、指差呼称の研究が進められてきた点にも触れられています。作者さんは日常にも指差呼称を取り入れていらっしゃるそうですが、ご自身の職業や立ち位置を明らかにされていないため、こちらの同人誌を専門書と呼ぶのは難しく、このご本を現場に持ち込むとしたらあくまで参考の資料になると思います。しかし、情報元の紹介、その情報をどこから得たのかが丁寧に記載されており、素性は謎ながら誠実であろうとする姿勢を強く感じます。

同人誌『明日から使える指差呼称完全攻略BOOK』 効果的な「ヨシ!」を絵でも伝える姿がとってもかわいい

知らせたいことを伝えるための工夫と実践

 さて、そんな内容の堅実さとは裏腹に、表紙やイラストは華やかでぐっと目を引きます。丸っこさのあるヘルメットも愛らしいキャラクターによる指さしや、“なんだかわからんがとにかくヨシ!してしまう人のための”と親しみやすく訴えかけるキャッチフレーズ、本文に挟み込まれたちょっとしたクイズやコラムに肩の力を抜きながら読み進めると、あとがきにこのやわらかなムードの理由が書いてありました。

 こちらのサークルさんはこれまでは“硬派な”表紙づくりをされていたのだそうですが、今回は一人でも多くの人に知ってほしいと表紙にカラーイラストを初採用されたとのこと。なるほど、まず入口に興味を持ってもらい、しっかり内容を伝える……ご本そのものが注意喚起の実践のようでもありますね。「ヨシ!」を攻略して、新たな季節を安全に出発進行したいです。

同人誌『明日から使える指差呼称完全攻略BOOK』 「ヨシ!」を乱用しないのも大事なポイントだそうです(参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

サークル情報

サークル名:音響同人送音会

Twitter:@natsunouma_2nd

入手できる場所:メロンブックス


今週の余談

 ご本にきっちり参考文献を掲載されているのと同時に、調査で京都鉄道博物館図書室さんを利用されたことを紹介されておられて、興味深い資料を所蔵されてるんだ! と私も行ってみたくなりましたよー。

みさき紹介文

 公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

関連キーワード

同人誌 | 図書館 | コミケ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2409/15/news052.jpg 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  2. /nl/articles/2409/14/news009.jpg そうはならんやろ “バラの絵”を芸術的に描いたら……“まさかの結果”が200万再生 「予想を超えてきた」【海外】
  3. /nl/articles/2409/16/news020.jpg 「猛犬注意! 触らないでください」と貼られたフェンスをのぞいたら…… 吹き出し注意の光景に「ちょっと!www」「休憩中?」
  4. /nl/articles/2409/16/news032.jpg 100均の紙粘土でこのクオリティーを!? 『ファイブスター物語』のモーターヘッドを制作、野生の原型師に称賛
  5. /nl/articles/2409/16/news010.jpg 100均のクッションゴム、まさかの使い方に目からウロコ 家中の“プチストレス解消法”に「思いつかなかった!」「これはすごい」
  6. /nl/articles/2409/16/news037.jpg 「とんでもなく遠い」 空港に向かうドライバーを絶望させる“衝撃の標識”が話題 「なぜそこに」「飛行機が必要そうな距離」
  7. /nl/articles/2409/11/news120.jpg 「やば絵文字」見つけた―― LINEで送られてきた“見たこともない絵文字”の正体が予想外 「え、ほしい」「どうやって使うんや」
  8. /nl/articles/2409/16/news018.jpg 88歳女性「誰もしてないようなメッシュにしたい」→驚がくの大変身が850万再生 「どぅえええええ?!」「カッコ良すぎて憧れます」
  9. /nl/articles/2409/16/news034.jpg フーセンガムの「あたり」を磨き続けたら…… “とんでもない発想”が斜め上すぎる 「もうええやろw」「今までで一番理解できない」
  10. /nl/articles/2409/16/news031.jpg 仙猫カリン様そっくりだった子猫、3年後には…… 「本物だ」「想像以上にカリン様」と反響を呼ぶ成長っぷりが10万いいね
先週の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  3. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  4. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声
  5. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  6. 猛毒ガエルをしゃぶった30分後、口がとんでもないことに…… 直視できない異常症状に「死なないで」「この人が苦しむってよっぽど」
  7. 33歳の「西郷どん」二神光さん、バイク転倒事故での急逝に衝撃 1年前の共演者は“願い”明かし「叶わないなんて」
  8. 「コレ入れると草が生えない」 外構工事のプロがやっている“究極の雑草対策”に注目
  9. 「へー知らんかった」 わずか7年で“消えた駅” 東京メトロが明かす“知れば納得の歴史” 「だからあんなに……」
  10. 秋葉原のトレカ店が“買い占め被害” 近隣店とその常連客が共謀し“全口購入の人員確保” 「大変遺憾で残念な限り」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」