大手企業を退職し、無名の歌い手へ――急成長する歌い手グループ「いれいす」ないこ、「仕事を辞めても人生は終わらない」(1/3 ページ)
2020年10月9日に結成した新世代歌い手グループ「いれいす」。リーダーを務める“ないこ”は、大手企業を辞めて歌い手としての活動をスタートさせ、2.5次元アイドルグループ事務所「VOISING」の代表も兼任する。
人生100年時代といわれる現代、「何歳からでも新しいステージに踏み出すのは遅くない」という考え方が広がっています。著名人も例外ではなく、ある分野で成功を収めた人が転機を経験し、別のフィールドや新たなステージで奮闘する姿は多くの人に勇気を与え、モチベーションやインスピレーションを与えています。
インタビュー連載 「私の人生が動いた瞬間」
「歌い手」とは、主に既存の曲に自分の歌を載せた動画を投稿する人たちのこと。ここ数年は、グループを組んで活動する動きが盛んで、多くの歌い手グループが存在します。
その中でも、ほぼ無名だった歌い手6人で結成した「いれいす」は異例の急成長を遂げている歌い手グループ。多くの歌い手グループが既存曲のカバーを投稿する中、初投稿からオリジナル曲を披露する異例のデビューは業界をざわつかせ、以降、結成3年で武道館の舞台に立つことを目標に、毎月オリジナル楽曲をリリースしたり、YouTubeで歌ってみた動画やさまざまな企画動画を多数投稿したりとファンが息切れしそうなほどの活動量で、Z世代、α世代から高い人気を誇っています。
そんな「いれいす」のリーダーを務めるのが、ないこさん。「いれいす」をはじめとする歌い手グループが所属する日本初の2.5次元アイドルグループ事務所「VOISING」の代表も兼任しており、歌い手グループ業界をけん引する存在として注目を集めています。
歌い手になる前は、一部上場企業の会社員だったないこさん。そんな自身の半生をまとめた初の著書『歌い手社長 フォロワー0人の会社員が3年後に武道館に立つ物語』(KADOKAWA)が発売されており、インタビューでは「仕事を辞めても人生は終わらないし、だったら若いうちにやりたいことに挑戦したい」と“歌い手”としての人生を歩むきっかけとなった転機を語りました。
会社員と「いれいす」の両立 心身ともに「しんどかった」デビュー当初
――『歌い手社長』はどのような方に読んでほしいですか?
ないこ 今回の書籍はファンブックというよりは、僕の考えをまとめたエッセイで、お子さんが「いれいす」を応援してくださっている保護者の方に読んでいただきたいです。僕たちいれいすが、歌い手が、どんな活動をしているのか、理解が深まるといいなと思って書かせていただきました。もちろん、ファンの方が読んでも楽しんでいただけるものになっていると思います。
――もともと会社員として働いていらっしゃったんですよね。著書では歌い手との両立はかなりつらい時期を過ごされていたことも書かれていました。
ないこ 「いれいす」としてのコンテンツが伸び悩んだ時期は精神的にも肉体的にもメンバー全員がしんどかったです。本の中にも書いてありますが、伸びることでしかそのつらさは解消されないので、メンバー6人で支え合いながらとにかく気合で活動を続けていました。その時はファンの皆さんの応援だけが、活動を続けるモチベーションだったかもしれません。
――苦しい時期を乗り越えただけに、メンバー同士の絆は強そうですね。
ないこ 強すぎて家族みたいです。逆に最近は行儀悪い(笑)。VOISING所属の他のグループ(「すたぽら」、「シクフォニ」)と話すこともあるんですが、「いれいす」と話しているときだけ雰囲気が大雑把というか適当というか、家族みたいな感じがするんです。いい意味で!(笑)
――仲がよすぎるが故に素が出てしまうんですかね(笑)
ないこ 2022年の夏に、全国13会場を回る過去最大規模の全国ツアーライブをしたんですが、車での移動時間がとても長かったんです。そのときに絆が深まったなと思ってるんですけど、ずっと歌っててうるさいやつもいれば、何言っても笑ってるやつ、大きい音でYouTubeを垂れ流してるやつもいてメンバーの個性がめちゃくちゃ出てましたね。「うるせー!」ってずっと誰かが言ってました。
1カ月に2曲ペースで楽曲リリースする異常な活動量
――歌い手のエンターテインメント化が進んで、活動の幅を広げるグループも増えました。「いれいす」のサバイブ方法はありますか?
ないこ 特別意識していることはないですが、先輩方に負けないくらいの歌や動画のクオリティーやライブの楽しさという、「いいものを作りたい」という意識は大切にしています。
――楽曲制作は1カ月に2曲ペースでリリースされていますね。結構ハイペースだと思いますが、どのように制作を進めているのでしょうか?
ないこ 楽曲にもよりますが、主にクリエイターさんと曲のコンセプトを決めて作成→イラストクリエイターさんにラフイメージをもらって動画クリエイターさんと一緒にイメージを固める→フルコーラス部分があがったらメンバーでイメージを確認する→ラップがあるものはメンバーの初兎(しょう)がラップを作成→歌のない楽器で演奏されたインストが完成したらメンバーで歌を収録→ミックスやイラストの完成→イラストと楽曲を合わせて動画にして公開という流れになります。これを大体3〜4カ月くらいで進めてます。
――それを毎月2曲……! なかなかハードですね。
ないこ 結成当初はメンバーとごく一部のクリエイターさんという体制ではありましたが、「VOISING」を設立してからはスタッフさんのサポートもあり、今はメンバーの負担はかなり減っているかなと思います。一方で、同時にクオリティーアップもしていく必要があるので、作業工程やかける時間はむしろ増えています。
――ないこさんは社長として楽曲制作に関わることはメンバーに比べると多いですか?
ないこ クオリティーラインのチェックはクリエイターさんたちと一緒に確認するので、メンバーよりは多いと思います。やはり、ファンの方が見て喜んでもらえるものなのか、という感覚の部分はどうしてもファンの皆さんと一番近くで接している歌い手本人の意見がないと固まらない部分も多いので、そこは僕含め、メンバー全員でチェックしてます。
――ちなみに、武道館ライブを目標に掲げていますが、現段階で実現まで何パーセントまで来ていますか?
ないこ めっちゃ難しいですね(笑)。結成から3年以内に武道館ライブを実現する、という約束なんですが、2023年10月9日でちょうど3年目になるんですよね。だからそこが一つのタイムリミットなのかなと思っています。
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