ド真ん中をやると異質になる――超学生、メジャー1stアルバム「超」制作で込めた“狙い”とは(1/3 ページ)
「自己紹介のようなアルバムが今回作れた」
パワフルな“ガナリボイス”を武器とするボーカリスト・超学生さんが2月15日、メジャー1stアルバム「超」をリリースしました。
すりぃさん、ピノキオピーさんら有名ボカロPから、「BiSH」や「BiS」との仕事で知られる松隈ケンタさんや元「欅坂46」平手友梨奈さんの楽曲を手掛ける辻村有記さんらに加えて、海外作家陣も参加。ストーリー性あふれるほの暗いものから、新しい試みともいえるまぶしいまでにポップなものまで、各プロデューサーが腕をふるった楽曲を乗りこなす、超学生さんの歌唱スキルがたっぷり堪能できる作品となっています。
「超」という作品を“色彩豊かな世界”だと表現する超学生さん。初めてのアルバム作りでアーティストとして目指した場所、またそこにたどり着いた先で新たに生まれた夢などについてうかがいました!
曲順に表れた“意味”
―― 「超」リリースに先だって出されたステートメントで、同作のテーマを“多様性”にしていました。この言葉は現在だと、「異なる個性の認め合い」などの文脈で理解されることが多いですが、あえてご自身のファーストアルバムの軸に据えた理由をまずうかがえますか?
超学生 音楽ってすごく昔だと、やってはいけないことがあったりするんです。「禁則」というそうですけど、こういう音は使っちゃいけないみたいなものが、クラシックにまでさかのぼると存在していました。
そうした“ルール”的なものって過去だけじゃなく、現代にもある程度存在するなと。こうした作品を今のタイミングで出した方がいいとか、自身のリスナーが求めているからこういうタイプのものを発表した方がいいといった空気感が「あるな」ってどことなく感じていました。
「超」に関していうと、逆に世間の流れをいったん全部無視して、1曲1曲やりたい要素を優先して作ったアルバム。アルバムを見据えて作ったというより、自分の目指すところに沿った楽曲たちを最終的にアルバムの枠でまとめた段階で、集まった作品を眺めた際の共通点として“多様性”という言葉がしっくりくるなって。
―― それは“Break The Rules”みたいなニュアンスですか?
超学生 そうです。ただ、ものすごくトガった方向というよりは、世間が強く求めるところのド真ん中を特に選んでいないよ……っていうぐらいの感じですね。
―― 一点気になっていることがあります。本作はタイアップ曲「Did you see the sunrise?」ではなくて「サイコ」で終わるようになっています。あくまで印象ではあるんですけど、この並び順だとリスナーが一聴した際、スッキリとではなくドロッとした余韻が残りますね。
超学生 確かに!
―― 個人的には、こうした曲順にかなり意図的なものを感じたのですが、いかがでしょうか?
超学生 おっしゃる通りですね。
今回のアルバムは、テーマに沿って楽曲の順番を決めたのではなく、ほとんどリリース順で並べているんです。「ルーム No.4」で始まって最後を「サイコ」にしたいなって。こだわりじゃないですけど、その一点だけはやりたいなという思いがありました。
―― それはどういった理由なのでしょうか?
超学生 「ルーム No.4」は僕にとってインディーズ時代最初の、「サイコ」がメジャーデビュー直前、インディーズ時代最後の楽曲になるんですよね。2曲そろって作詞作曲はすりぃ(※1)さん、MVはイクミさんとねこぜもんさんと、制作陣も全く同じ方たちで。
※1 すりぃ……2018年活動開始のボカロP。「テレキャスタービーボーイ」「ジャンキーナイトタウンオーケストラ」などの代表曲を持つ他、Ado「レディメイド」、天月「負け犬のリベンジ」、缶缶「ドロシー」など楽曲提供も盛んに行っている。
僕もいろいろな人のオタクをやっていることが多くて、その感覚で捉えたときに「なんだか遠くなっちゃった感」みたいなのがありすぎるのも嫌だなと思ったんです。だから、アルバムのラストにインディーズ時代最後の曲を持ってくることで、「インディーズのころの超学生もちゃんと丸ごと引き連れて、メジャーで今後やっていきます」っていう意味を込めています。
―― 「超」は出発点であり、またある意味では原点回帰の1枚でもあるということですね。
超学生 メジャーで今後活動していくことを考えた場合、インディーズの最初と最後の曲をアルバムの入口と出口に配置するアイディアって今回しかできないなって。そういう意味でもやってみたかったので、実現できてよかったなと思っています!
「王者っぽい曲がほしい」コラボ相手への思い
―― 非常に面白い話ありがとうございます。同作では作曲だけで、10人以上のプロデューサーが関与しています。コラボ相手というのはどのような基準で選んでいるのでしょうか?
超学生 基本的にボカロPさんやFAKE TYPE.(※2)さんらインターネット出身の方に関しては、僕がまずやりたいこと、例えばエレクトロ・スウィングをやりたいとか、「人類のさらにちょっと上にいるような目線」の曲が欲しいといった希望が前提としてあって、その内容に沿って選ばせてもらうことが多いですね。
※2 FAKE TYPE.……トップハムハット狂とDYES IWASAKIの2人が2013年に結成したユニット。Mori Calliope「NEZUMI Scheme」やHey! Say! JUMP「OH MY BUDDY」などを手掛けている。
それ以外の辻村有記(※3)さんやJazzin’park(※4)の皆さんなどの場合だと、基本的にレーベル側から提案いただいた中から楽曲を聞かせてもらった上で、僕がやりたいと思っていたことを実現させてもらえそうだなと感じた方をピックアップしています。
※3 辻村有記……4人組ロックバンド「HaKU」の元ギター&ボーカル。2016年のバンド解散後、2018年1月にアルバム「POP」をリリースした他、欅坂46「誰がその鐘を鳴らすのか?」や平手友梨奈「ダンスの理由」などメジャーで活躍するアーティストの楽曲を多く担当している。
※4 Jazzin'park……久保田真悟と栗原暁の有名音楽プロデュ−サー2人からなるユニット。King & Prince「koi-wazurai」「恋降る月夜に君想ふ」、Snow Man「Secret Touch」、なにわ男子「Brand New Heroine」「ダイヤモンドスマイル」など、ジャニーズ楽曲での仕事で知られている。
―― 辻村さん、Jazzin’parkさん、また松隈ケンタ(※5)さんは非常にエッジが立っているというか、作家性の部分で大変な評価を受けている面々だという印象があります。数多く受けたであろう提案の中でこの方たちを特に選んだ理由というのは何でしょうか?
※5 松隈ケンタ……音楽クリエイターチーム「SCRAMBLES」を率いるプロデュ−サー。WACKとの関係が深く、BiS、BiSH、GANG PARADE、豆柴の大群などのグループ楽曲を制作している。「超」では有名曲「Did you see the sunrise」を担当した。
超学生 辻村さんは、平手友梨奈さんの「ダンスの理由」はじめいろいろな担当曲を聞かせてもらっていて。
当時、超学生がみんなを引っ張っていくというか、余裕のある王者っぽい曲がちょっと欲しいなと思っていました。平手さんの楽曲のような“主人公感の強い曲”を作るのが得意な方だなと感じたので、打ち合わせのときにもそうお願いした結果、「Fake Parade」のようにトガりめな曲になったんじゃないかなと。
―― ひるがえってJazzin’parkの「Untouchable」は非常に爽やかな感じで、明るい王道曲になっています。
超学生 この曲はボカロっぽくない、メジャーっぽい音の曲をぜひやってみたいと思って作った1曲ですね。Jazzin’parkさんといったら、ジャニーズさんはじめメジャー中心に活躍されているので、音作りに関しては全くもう期待しかなかったんです。
楽曲制作にあたっては、「超学生はとにかく何でも歌いますので、今までの創作で抑えている部分があったら、そういうのは全部開放して好きに作ってください」ってお願いしたので、「Untouchable」はある意味で一番Jazzin’parkさんらしい曲なのかもしれません。それもさっき言った、ひとつの“多様性”なのかなっていう。
―― 冒頭とうまい具合につながりましたね(笑)。
超学生 はい(笑)。
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