「怖すぎる」とネットを席巻したホラー小説『近畿地方のある場所について』はどのように生まれたか 作者インタビューで裏側を聞く(4/6 ページ)
――ところで、なぜ近畿地方を舞台に選んだのでしょうか。
背筋 理由はいくつかありまして。私が関西に住んでいたことがあるので、地理的に想像がつきやすかった、というのが一点です。山があって、街があって、平野があって。いろいろと話を広げやすいだろうな、と思ったんです。
2つ目としては、読者さんにある程度の親しみをもってもらいたかった。近畿地方は修学旅行や観光などで、日本人ならだいたいの人が訪れた経験のある場所じゃないかな、と思ったんです。物語の考察をしていただく上で、ここは知っているぞ、見たことがあるぞ、行ったことがあるぞ、みたいな親近感を覚えてほしかった。そのほうが「もしかしたら身近で起きている怪異なのかも」といった感じで、没入感が増すと思ったんです。
もうひとつは考察していただく上で、舞台をいい感じに限定させて狭くしたかった、という点です。例えば舞台を「関西地方」にしてもよかったんですけど、人によって関西がどこからどこまで、というイメージは違いますよね。一方で「近畿地方」は、明確に言葉として地域が決められていますので。
――ちょうどいい案配だと思います。考察といえば、「近畿地方のある場所について 3」などに登場する「るきえむどじえうずめ」といった呪文の考察をしている方々へ、なんらかのヒントをお願いします。
背筋 ノーコメントでお願いします……と言いたいですが、一点だけ。書籍版では追加エピソードがありまして、そちらにも呪文はでてきます。意味が明かされることはありませんが、より想像を膨らましていただける内容かと思います。
――本作がデビュー作とうかがっていますが、アマチュアで小説などの執筆経験はありますでしょうか。
背筋 よく聞かれるんですが、本当にないんですよ。ちょっとしたショートストーリーを書いて友達に見せる、ぐらいのもので……。本格的に小説を書いて公開したのも、小説サイトをのぞいたのも、いずれもカクヨムが初めてですし、『近畿地方の〜』が最後まで書ききった最初の作品なんです。
――そういった点なども踏まえて、背筋さんなりの小説の書き方や心がけなどがあれば教えてください。
背筋 私が素人だから、という点は大きいのですが……「誰も自分の作品には興味を持っていない」というのを心がけていました。聞いた話ですが、雑誌なんかの表紙は「0.5秒で興味を持たせる」という意図で作られているらしいんですよね。書店を歩いてる人の目に表紙が入る時間は1秒もないぞ、という意味だと思うんですが。
そこで「私はこういうテイストの作品を皆さんにお送りしていきますよ」と、一目で分かるようにしました。作者ページを不穏な雰囲気にしたりというのもその一環で、とにかく少しでも興味を引けるように。作品の内容も、自分が誘導していきたい展開にする、なんてのは二の次になってしまうぐらいでした。
ひとつひとつのストーリーも「ひとつ読んだだけではわけが分からないから、次を読んで確認したくなる」というようなものにしました。とにかく続きを読んでもらえるように、どうやったら読んでもらえるだろうかと考え抜いて、いわゆる「引き」を強く意識しています。
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