君島憂樹のこれから 「蘭世惠翔としての自分は宝塚で卒業」本名で母・君島十和子の背中から学ぶ日々(1/2 ページ)
「観客として宝塚を楽しむのは、もう少し時間がかかりそうです」
人生100年時代といわれる現代、「何歳からでも新しいステージに踏み出すのは遅くない」という考え方が広がっています。著名人も例外ではなく、ある分野で成功を収めた人が転機を経験し、別のフィールドで奮闘する姿は多くの人に勇気を与え、モチベーションやインスピレーションを与えています。
インタビュー連載 「私の人生が動いた瞬間」
君島憂樹さんは2014年に宝塚音楽学校へ入学し、卒業後は蘭世惠翔の名前でデビューし2023年4月末の退団まで月組で活動。約10年の在団期間中、2019年には男役から娘役への転向も経験しました。また、祖父は世界的服飾デザイナーの君島一郎さん(故人)、父は実業家の君島誉幸さん、母は元モデルで美容家の君島十和子さんと“キミジマファミリー”の一員でもあります。
ねとらぼでは、退団後の新生活開始からおよそ2カ月が経過したタイミングで君島さんにインタビュー。男役のかっこよさと娘役のかれんさを保ちながら、“清く正しく美しく”を体現したような礼儀正しさで全ての質問へ丁寧に答えてくれた君島さん。ベールに包まれた宝塚の世界や、キミジマファミリーの素顔、将来の夢まで広く聞きました。
宝塚退団から2カ月 「社会人2カ月目の気分で学ぶことばかり」
―― まずここまでの新生活を振り返ってみての感想からお聞かせください。
君島憂樹(以下、君島) 退団してあらためて感じることですが、宝塚はある意味ベールに包まれた世界かもしれません。内部のルールや規律がしっかりしていて、結束が固く守られている場所です。そうした世界に約10年近く在籍していたので、外の世界は全てが新鮮で刺激的です。社会人2カ月目の気分で学ぶことばかりです。
―― ファンから見てもとても神秘的な世界という印象があり、イメージを守るため節制することも多かったかと想像します。退団前「まずこれを」と決めて真っ先に取り組んだことはありますか?
君島 在団中はかなわなかったSNS配信はやってみたいと思っていたことの1つです。早速退団翌日から始めました。在団中からあれこれ考えていたので、とても楽しいです。
―― やってみての感想は?
君島 リアルタイムで、投稿したら数秒で反応が返ってくる。今まではお手紙だけのやりとりでしたので、間接的なコミュニケーションだけでした。今はお顔は見えないですが直接コメントをいただけるようになり、見てくださっている皆さまのリアルな存在を感じられるようになりました。コメントに目を通すことがすごくうれしく、新鮮に感じます。反応をいただけてありがたいです。
―― 退団からここまでの2カ月、すでにさまざまな活動に挑戦されてきたかと思います。最も印象深かったお仕事は何ですか?
君島 初めてのテレビ出演で「徹子の部屋」に出させていただいたことです。母が以前2回出させていただいた番組ですが、時を経て20代になった私と一緒に出演させていただけることを非常に喜んでいました。私にとっては初めてのテレビ出演でしたが、国民なら誰もがご存じの有名な番組に出させていただけたことに感謝しています。
―― 生きる伝説のような黒柳徹子さんの印象はいかがでしたか?
君島 本当に伝説みたいな方でした。80代になられた現在もお美しくて、温かく包み込んでくださる感じ。女性として憧れますし、これまでテレビで見ているだけだった“ナマ徹子さん”とお会いできて光栄でした。
「蘭世惠翔としての自分は宝塚で卒業」 君島憂樹としてのこれから
―― あらためて宝塚歌劇団を退団するまでの話をお聞かせください。別のインタビューでは「グレート・ギャツビー」(2022年7月〜10月上演)新人公演で演じた役をきっかけに退団を決めたと拝見しました。
君島 「グレート・ギャツビー」で演じたジョーダン・ベイカーという役は、今でいうキャリアウーマンみたいなすごくかっこいい女性。禁酒法時代の閉ざされた退廃的な世界でも、女性として自分らしい生き方を貫く役柄で、宝塚という世界から抜けて現代社会で生きていくには「こういう生き方ってすごくすてきだな」と感じ、退団を決意するに至りました。
役の影響もあり、最終的に決めたのは自分自身ですが、その背中を押してくれたのは家族です。背中を押してくれる家族がいる、そういう環境にあったので決められました。
―― 特定の活動がやりたいから退団を決めたわけではないんですよね?
君島 そうですね。芸能活動がしてみたいなという思いもあったんです。それ以上に宝塚の世界を経験したからこそチャレンジできることがあるんじゃないかという気持ちが大きいです。すばらしい歴史がある宝塚歌劇団。でもそこにはない可能性を自分で探してみたいです。
―― ここまではモデルやタレントとしての起用が多く、またお母様の十和子さんとご一緒のお仕事が多い印象です。いずれ1人でお仕事をするとき、何がしたいか考えていますか?
君島 今おっしゃったみたいに、美容やファッションに興味があるので、いただけるならモデルさんのお仕事や、お芝居も大好きなので女優さんのお仕事にも挑戦してみたいです。ゆくゆくは「こういうものがあったら」という自分の考えや思いを形にできる仕事にも関われたらと思っています。
―― 宝塚のOGですとミュージカルに出ている方が多いですよね。出てみたい作品、演じてみたい役はありますか?
君島 いただけるものは何でも挑戦してみたいです。もちろん外の舞台は男性もいらっしゃるので、それだけでも宝塚とは全然違うと思います。宝塚では演じなかったような役もやってみたいですね。
―― では共演してみたい方とかも特に?
君島 今はもうお仕事でご一緒させていただく皆さん、本当にお一人お一人から「あっ! こういう方なんだ」と発見して尊敬することばっかり。機会があればどなたでもご一緒させていただきたいです。
―― 宝塚時代は蘭世惠翔の芸名で活動、退団後は本名の君島憂樹としてスタートを切りました。どちらもすてきなお名前ですが、名前をあらためた理由は?
君島 宝塚を辞めると決めて、一番に思い付いたのが「本名に戻そう」ということでした。芸名で活動しようとは全く考えていなかったです。蘭世惠翔としての自分は宝塚で卒業。直感的ではあるんですけども、自分の区切りとしても、ステップアップの意味でも本名に戻そうと決めていました。
―― 例えば今後舞台に出るとか俳優活動をするときも、蘭世さんのお名前でとは考えていない?
君島 ないですね。これからは本名で活動していく、そこはぶれていません。何かがしたいとかよりも本名で行こうって一番に決めたので、全く迷いはないです。
―― これから芸名に代わって本名が知られていくにあたって、こういうイメージを抱いてほしいと願いはありますか?
君島 それについてはあまり考えたことがないんですけど、どうでしょうね……。宝塚出身ではあるので、その名に恥じない自分でありたいと思っています。宝塚時代から父や母には「やっぱり品格は大事だから」と言われていたので、品格は保っていたいと強く思いますね。
―― 清く正しく美しく?
君島 もちろんです!
―― お名前の漢字がすてきですが、ご自身ではどう捉えていらっしゃいますか?
君島 私の名前は家族で相談して決めたと聞いています。憂の字は名前で使うことが少ない字ですけど、「先を見通す」、樹木の樹には「自分らしく」という意味があり、憂樹という名前には“先を見通して自分の道を歩んでいけるように”と意味が込められています。画数がかなり多いんですけども(笑)、両親のそんな思いが込められていると知ってからは大切にしたいと思っています。
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