映画「バービー」キラキラ&ピンクの世界で起きた“ケン”の大暴走で描きたかったもの グレタ・ガーウィグ監督&プロデューサー来日インタビュー(1/2 ページ)
この夏一番の注目作。
世界一有名なファッションドール“バービー”の世界が初めて実写映画化。「バービー」として8月11日から公開されます。どこもかしこもピンクで満ちたかわいさ満点のコメディー作品でありながら、悩み多い女性の生き方を描き出し「You Can Be Anything(何にでもなれる)」というメッセージに勇気付けられる女性が続出。先行して公開されたアメリカでは2023年No.1ヒットの滑り出しとなり、単独の女性監督作品で初めて全世界興行収入が10億ドル(約1410億円)を突破しました。
物語の舞台となるバービーランドの住人はみんなバービーでみんなケン。いつもいつでも最高で完璧な毎日を過ごしていたはずが、ある日マーゴット・ロビー演じる“典型的なバービー”の日常が一変。ボーイフレンド(?)のケンを伴い、バービーは人間の世界への旅を余儀なくされます。
7月から続くハリウッドでのストライキのためマーゴットらのプロモーションが中止になる中、ねとらぼでは来日したグレタ・ガーウィグ監督とプロデューサーのデイビッド・ヘイマンにインタビュー。時流に合致した女性へのエンパワーメント作品と高い評価を受ける一方で、監督とプロデューサーが一貫して訴えていたのは「この映画はコメディー」というメッセージ。かわいいだけではないけれど、やっぱりみんなに笑ってほしい映画「バービー」誕生秘話と込められた思いを聞きました。
バービーの世界で“ケン”が果たす役割 「みんなが笑える作品にしたかった」
―― 試写で作品をとても楽しく拝見しました。キラキラしたバービーの世界に魅せられる一方で、ケンの暴走は女性として一種の悪夢とも感じました。この描写の意図は?
グレタ・ガーウィグ監督(以下、ガーウィグ監督) まず第一にこの作品はコメディー映画。オーバーでばかばかしくても、ユーモラスで面白いものを作りたいと思っていました。ケンはそもそも、バービー誕生後にとってつけたように生まれた後付けのキャラクターで、大衆からの関心度も低い。映画でも、バービーランドには大統領、最高判事、ノーベル賞受賞作家といろんなバービーがいる一方で、ケンは仕事も家も、何も持っていません。だから何かピンとくるものを見つけたときに、いき過ぎてしまうことがあるんです。
私は兄と一緒に育ったので、ケンのとっちらかった生活ぶりからは子ども時代を思い出します。私は姉妹と一緒にいつも兄を注意する立場でした。ケンのシーンは女性にとってだけでなく、男性にもケンの中に自分自身との共通点を見つけ出して面白いと感じられるシーンにしたかったんです。
―― ヘイマンさんはどうでしょう? 男性の視点ではどういうふうに感じたかお聞きしたいです。
デイビッド・ヘイマン(以下、ヘイマン) (笑いながら)私の家はああいう感じではないんですけどね。
ガーウィグ監督 あなたの妻が好きじゃないからでしょう?
ヘイマン そう妻が。頑張ってはみたんだけど(笑)。
さてグレタが言ったように、この作品はコメディーで特定の層を意識してはいません。一連の描写もストーリーを構築する過程で生まれたものだよね? それが効果的だと思ったから。
ガーウィグ監督 その通り。
ヘイマン 面白く、そして感動的。バービーは受け付けられずにケンを何とかしようとするけれど……。
ガーウィグ監督 すっかり動転してしまう!
ヘイマン そう、めちゃくちゃなんだ。このシーンや展開に、あえて男性視点で付け加えることはありません。グレタが表現しようとした作品そのままを見てください。どの描写にも何かをこうだとジャッジする(決めつける)意図はない。全て愛情を持って描いています。
私がこの映画を好きなのは、「You Can Be Anything(自分らしくあること)」を重要なテーマとして中心に据えているからです。男性として、「男らしくなくてはならない」と社会から求められる男性像に自分を落とし込むときが多々あります。自分が好きでいられる自分になろう、それが「バービー」におけるケンの物語。ケンもバービーと同じように、ありのままの自分らしい自分を受け入れらられるようもがいているんです。
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