9月は台風や秋雨前線による大雨シーズン 「線状降水帯」など気象の言葉を理解して 日々の防災気象情報を
9月は秋雨前線や台風の影響によって、大雨による災害の発生しやすいシーズンです。
9月は秋雨前線や台風の影響によって、大雨による災害の発生しやすいシーズンです。天気の用語を理解しておくことも、「防災」につながります。大雨シーズンを迎えたこの時期に、押さえておきたい気象の言葉をまとめました。
年間の台風上陸数 9月が最も多い
日本は大昔から台風の襲来によって、大きな被害を受けてきました。
昭和9年9月21日に高知県室戸岬付近に上陸し、近畿を縦断した「室戸台風」、昭和20年9月17日鹿児島県枕崎付近に上陸し、終戦後の日本を襲った「枕崎台風」、昭和34年9月26日に和歌山県潮岬付近に上陸し伊勢湾岸に大規模な高潮被害をもたらした「伊勢湾台風」。昭和以降、特に大きな被害をもたらしたこの3つの台風は、いずれも9月に襲来しています。
近年でも台風が発生、襲来しやすいシーズンは8月から9月となっています。
過去30年間(1991〜2020年)の平均では、1年間で約25個の台風が発生し、約12個の台風が日本から300 km以内に接近し、約3個が日本に上陸しています。
台風の発生数はグラフの通り、8月が5.7個と最も多いですが、次いで9月が多く5.0個。接近数は8月と9月は同じで3.3個、上陸は8月が0.9個、9月は1.0個と最も多くなります。
また、10月は台風の接近数は1.7個、上陸数は0.3個ですが、稀に大きな被害をもたらす台風が上陸することがあります。
関東を含む東日本や東北に大きな被害をもたらした「令和元年東日本台風」(台風第19号)は10月12日に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸し、その後、関東地方を通過しました。
真夏を過ぎると、夏の太平洋高気圧が弱まり、台風が日本に近づきやすい進路をとることが多くなるため、災害の起こりやすい時期といえます。10月に入っても油断せずに、台風に気を付けて対策を行ってください。
夏と秋のせめぎあい 秋雨前線のシーズン
台風シーズンであることに加えて、9月は秋雨前線が停滞しやすい頃です。
前線とは、暖かい空気の塊と冷たい空気の塊が、ぶつかる境界線です。
前線付近では強い上昇気流が起こりやすく、活発な雨雲が連なることが多くなります。暖かい空気と冷たい空気のぶつかり合う勢力が同じくらいになる場合、同じ位置にとどまるのが「停滞前線」です。「秋雨前線」は停滞前線の一つで、夏から秋へ季節が移り変わる時期に、日本付近に発生します。
これからの時期に注意したいのが、「秋雨前線」が停滞する中、その南から「台風」が北上するなど、前線に台風が絡むとかなり危険な大雨をもたらす恐れがあります。台風周辺の暖かく湿った空気が流れ込んで、前線の活動を活発化させ、日本付近に長雨や大雨をもたらす恐れが高まるためです。
秋雨前線の停滞している中、台風が北上する際には、早めに台風の備えを行うなど厳重な警戒が必要です。
よく天気予報で聞く「大気の状態が不安定」とは?
大雨シーズンになるとよく天気予報で、「大気の状態が不安定で・・・」というコメントを聞くことがあると思います。
この「大気の状態が不安定」というのは、簡単に言うと、大雨をもたらす積乱雲が発生・発達しやすいことを示します。
暖かい空気と冷たい空気がある場合、暖かい空気は軽いため上に、冷たい空気は重たいため下に移動する性質があります。
この性質と同じく、暖かい空気が上、冷たい空気は下にある場合は「大気安定」の状態となりますが、それとは逆に空の上の層に、冷たい空気が流れ込むと、冷たい空気は下に下がろうとし、暖かい空気は上に持ち上げられ、対流活動が活発になり、積乱雲が発生しやすい状態となります。これが「大気不安定」な状態です。
積乱雲は大雨だけでなく、雷や竜巻などの突風、ひょうなど様々な現象をもたらすことがあり、前触れを感じたら、早めに安全な場所に移動して過ごすことが大切です。天気予報で「大気の状態が不安定」という言葉を聞いた時には、局地的な大雨や落雷、竜巻などの突風、ひょうの可能性がありますので、十分注意して、お過ごしください。
「線状降水帯」 発生すれば急激に状況悪化の恐れ
大雨の際に、注意や警戒を呼び掛けるために、気象庁からは様々な情報が発表されますが、中でも大雨の備えとして、知っておきたい気象情報の1つに「顕著な大雨に関する気象情報」があります。
これは、大雨による土砂災害や浸水害など、災害発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯によって、非常に激しい雨が同じ場所で実際に降り続いている状況を「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報です。
「線状降水帯」とは、発達した雨雲が線状に次々と発生して、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過・停滞することで作り出される、強い雨のエリアのことです。同じような場所で顕著な大雨が続くことから、発生すると急激に状況が悪化し、甚大な災害が発生する恐れがあります。
線状降水帯の発生が予想される場合には、いつ大雨が降り出しても避難ができるよう、普段からの準備や心構えが必要です。
警戒レベルが最大となる「大雨特別警報」 発表されたらどう行動する
この夏も、瞬く間に状況が悪化するような危険な大雨があちらこちらで観測されました。
少しでも避難が遅れると、命に関わる場合もあるため、避難のタイミングが重要です。
上の図は、防災気象情報と警戒レベルを示しています。自分はどのタイミングで避難が必要かを知っておきましょう。
警戒レベル3の場合、高齢者や障害のある方などは、避難に時間がかかる方は早めに安全な所へ避難する必要があります。警戒レベル4では、対象地域の方は、全員速やかな避難が必要です。
「氾濫発生情報」や「大雨特別警報」が発表されるのが警戒レベル5相当で、最大級の警戒が必要です。すでに身近なところで災害が発生しいている恐れもあり、命が危険な状況となります。
このため、警戒レベル4までには、必ず避難完了しておく必要があります。改めて、警戒レベルを意識しながら日々の気象情報をご確認ください。
関連リンク
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