「24時間『死ね』と言われる」「病んで倒れて一人前」 テレビ業界のイジメ体質と問題点を現役映像作家が告白(1/2 ページ)
現役映像作家で障害・虐待・機能不全家族に関する社会活動にも取り組む米田愛子さんが実名で告白。
仕事中に24時間以上「死ね」と言われ続ける――。「病んで倒れて一人前」のかわいがり――。テレビ業界に根付くイジメ体質と止まらないハラスメント連鎖について、現役映像作家で障害・虐待・機能不全家族に関する社会活動にも取り組む米田愛子(こめだあいこ)さんが実名で告白。ねとらぼ編集部が取材しました。
「病んで倒れて一人前」のイジメ体質
映像デザイン事業「CreDes」の代表を務める米田愛子(こめだあいこ)さんは、自身の家族を描いたドキュメンタリー作品「おにい〜筋ジスになって絶望はないの?機能不全家族の妹が問う〜」で受賞歴を持つ映像作家。
大阪芸術大学卒業後に、地方ローカル局と東京キー局の両方で映像の編集業務を担当した経験を持ち、その際、壮絶なハラスメントを体験したといいます。
――最初に担当したのはどんなお仕事でしたか。
米田:大学を卒業後、地方ローカル局子会社の制作会社に就職し、報道番組の映像編集を担当しました。
――就職してみて、どんなことを感じましたか。
米田:まず感じたのは、女性と華奢でまじめな男性へのあたりの強さです。業界の労働環境がメチャクチャだ、というのはなんとくなく分かっていたので「がんばろう」と思っていたのですが、その想像を超える労働環境でした。
――具体的には。
米田:入社から3カ月経ったころから1人で番組を担当することになり、最初は決められた業務が終わっても進んで残業をしたり自主トレーニングしたりしていたのですが、激務もあり、次第に業務が終わったら帰宅するというルーティーンに移していきました。
そうしたら同じ部署の責任あるポジションの男性上司から「自主トレせずに帰るのをやめた方がいい。米田のことを思って言っている」と言われるようになりました。
ただ、残業自主トレを無理やり継続した期間もあったのですが、睡眠不足などによってじんましんが出てしまったり、自分が想定していたよりも自分自身の体力が足りなくなってきたりしたこともあり、「仕事が終わったら帰るのは悪」という風潮に思い悩んで人事部に相談に行きました。
――人事部への相談で問題は解消できましたか。
米田:結果的にはむしろ悪化しました。
相談を受けてくれた人事担当からは念を押して「誰にも言わない」「秘密厳守」と言われていたのですが、後日その担当者から「米田さんの相談が自分のキャパを超えてしまったから上司本人に話を聞きました」と言われまして。
案の定その上司からは無視をされたり、個室に呼ばれて延々と「お前のやっていることは無意味」と人格否定を繰り返されました。
特に何度も何度も謝罪しながら「ご指摘について具体的にどうすればよろしいでしょうか」と尋ねても「そんなことをお前に言ったところで」と言われるのはつらかったです。
――これに対して会社はどう対応したのでしょうか。
米田:人事に相談して状況が悪化したこともあり、長時間ずっと内容のない叱責をされていたことを報告することはできませんでした。ただ、この悩みを抱えている際に、東京キー局の関連会社から引き抜きがあったので転職を決めました。
――転職後はどのような仕事を担当しましたか。
米田:最初に配属されたのは報道関係の部署でした。私が入社したのは、東京にあるキー局の100パーセント子会社だったのですが、基本的に番組を支えているのは、番組制作を委託されている別の制作会社から出向している人員や労働力でした。
そのため報道局では、制作会社の社員がキー局子会社の社員をいじめ抜く「新人つぶし」が“伝統的な文化”として根付いており、「病んで倒れて一人前」と言われていました。
――一つの番組内において、主要制作会社の社員と別制作会社の社員間でいじめが発生するということでしょうか。
米田:そういうことです。例えば報道には夜勤があるので、休眠時間という寝て体を休めながら何かあったら対応する時間があるのですが、「寝たらダメ」という風潮がありました。万が一寝ているところを見つかれば、ずっと噂話を流されたり、無視されたりするというわけです。
――いじめられる側の新人はどのように対応していたのでしょうか。
米田:それが、新人同士・いじめられる者同士で「何とか支え合おうという結束力」が生まれるんですね。
報道にはデスクと呼ばれる「指示を出す人間」が何人かいて、その指示に従って編集マン(映像を編集する業務を行う)が動くんですが、その日デスクに何人制作会社の社員がいて、何人キー局子会社の社員がいるかのバランスで仕事の地獄具合が全然変わるんですよ。
報道だからこそ最新情報の共有が最も重要なのに、情報が更新されていることを新人にだけ教えてくれなかったりするので、何とかしてそれに対応していくという感じです。
――中でも印象的な事件はありましたか。
米田:キー局子会社だけでなく、制作会社側の新人もついでにいじめられることがあったのですが、その日は制作会社側の若い男性がターゲットになり、ずっとくすくす笑われたり、嫌味を言われたりしていました。しかしそのうち耐えきれなくなり、男性がブチ切れて自分で自分の頭をボコボコに殴り始めたんです。
フロアにいたスタッフたちはみんな「やべー!」と盛り上がっていて、それを止める人はおらず、「異常だな」と思いました。
また激務で疲れているときに、男性の管理職が「朝まで死ぬほどセックスすれば疲れを忘れられるよ」と悪気ない様子で話してくることもありました。
――米田さん自身にもいじめの影響はありましたか。
米田:いじめを日常的に受け続ける状況が影響してか、朝出勤するときに手足など体が震える症状が出ました。その後何とか無理やりに出勤したのですが、汗がダラダラ止まらず震えているのを管理職が見つけて「異動したほうがいい」と提案してくれました。
――異動先はどんな部署でしたか。
米田:ポストプロダクション(ポスプロ)という、映像素材の編集を行う部署でした。上司もすごく良い人で環境はとてもよかったのですが、ここでは衝撃的なクライアントに遭遇してしまいました。
仕事中に24時間以上「死ね」と言い続ける異常なクライアント
――どんなクライアントだったのでしょうか。
米田:公共放送のとある番組制作を委託された会社の男性ディレクターだったのですが、24時間以上ぶっ続けで「死ね!」と暴言を吐かれるんです。
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