アジア系モデル、AIで“白人に変えられた”と告発 当のデザイナーは「写真家がやった」「ファンアート」とのらりくらり

これが多くのモデルが心配していることとの声も。

» 2023年11月07日 12時34分 公開
[城川まちねねとらぼ]

 台湾系アメリカ人モデルのシェリーン・ウーが10月29日、自身のSNSで米デザイナーのマイケル・コステロによってAIで外見を「白人に変えられた」と訴えました。シェリーンはデザイナーへ直接苦情を申し立てたものの、誠実な対応をしてもらえないと現状を明かしています。

アジア人モデルがAIで白人に変えられたとデザイナーを糾弾 全くの別人に(画像はシェリーン・ウーのTikTokからから)

 シェリーンは29日、マイケル本人がInstagramストーリーズへ投稿した写真と、実際の出演場面を比較する動画をTikTokへ投稿。マイケルが投稿した画像のモデルは「私ではない」と主張し、「全くもって無礼」と彼女の外見がまるで白人のように修正されていることを説明しました。マイケルが投稿した画像のモデルはもとの写真に比べると、目が大きく瞳の色も変わり、骨格の凹凸が鋭くなって、完全に別の人種、別の人物のように変わっていました。

 シェリーンはマイケルへ、DMでどういうことなのか理由を尋ねたといいますが、マイケルは写真や動画、イラストやAI画像を送ってくるフォトグラファーやアーティストには「何の規制もない」と返答。著作権は写真を撮ったフォトグラファーのものでモデルは有していないことを踏まえ、暗にフォトグラファーがやったことだと主張したといいます。

 しかしシェリーンがフォトグラファー本人へ尋ねると、彼女の写真に手を加えていないとの回答があったそうです。シェリーンは、フォトグラファーがInstagramストーリーズに投稿していた彼女の写真がオリジナルのものであったことから、この言葉に信ぴょう性があると考え、またフォトグラファーは、マイケルが“モデルが怒っているから”と彼のメッセージを消すよう頼んだと教えてくれたといいます。

 さらに、マイケルと近い別のモデルからは、マイケルがこの画像はAIで白人風に変えられたファンアートと説明しているとのメッセージが届いたとのこと。つまり、マイケルは3人の人物にそれぞれ別の話をしているとシェリーン。その後、マイケルは一切の謝罪もなく“白人風”シェリーンの画像をストーリーから削除しました。

シェリーンが投稿した告発動画

 シェリーンは、まずモデルは顔を知られることが重要とマイケルのショー出演にあたり報酬は受け取っていないとしています。しかしAIで顔を変えられてしまえば機会損失になり、また彼女はこの告発によりモデルのキャリアを失うかもしれないとしつつも「私が立ち上がるべきことだと思ったんです」と勇気を振り絞ったことを伝えました。

アジア人モデルがAIで白人に変えられたとデザイナーを糾弾 ビヨンセなど大物とも仕事をする人気デザイナーのマイケル・コステロ(画像はマイケル・コステロのInstagramから)

 シェリーンが投稿したTikTokの動画は31万回以上も再生され(記事執筆時)、コメント欄には「これがまさに多くのモデルや俳優がAIについて心配していること。投稿してくれてありがとう」「彼は肩をとがらせてドレスの形も変えているよね。つまりこの服を着たら実際どう見えるかも変えているんだ」「加工後の画像もひどすぎる。あなたはとてもすてきだったし正当な報酬を得るべきだった」など、シェリーンに同情し、AIの発達と台頭でモデルや俳優といった職業に懸念される負の影響に言及する声が目立ちました。

 2023年エンターテインメント業界ではAIの発展で俳優や脚本家らの仕事が奪われ、また無断で意図しない形式に改変されてしまうのではとの不安が強まり、全米脚本家組合(WGA)と全米俳優組合(SAG・AFTRA)が立て続けにストライキを開始(全米脚本家組合のストライキは9月27日に終結)。

 また、リーバイスは3月、デジタルファッションスタジオ「Lalaland.ai」と提携し、より多様性を高めるためにAIで生成されたモデルを利用し、より顧客一人一人の個性に沿った商品を提携すると発表しています。しかし「多様性を高めるため」としたこの取り組みは、モデルやクリエイター、特に白人に比べ圧倒的に仕事を得られない有色人種の仕事を奪うのではないかとの批判も多数寄せられています。

 なお、このシェリーンはInstagramでもこの出来事について訴えていましたが、その後アカウントを削除されたとのこと。英The Guardian紙は、10月31日にマイケルがInstagramへ「画像はAIを使ったファンアートだった」と釈明し、意識せずシェアしてしまったことを謝罪する投稿をしたと報じており、さらにシェリーンの動画による「虚偽の訴え」に対し法的手続きを進めると主張していたとのことですが、投稿はその日のうちに削除されたのことです。

 この記事には、「コステロの方が法的手続きを進めるって、なんで?」「これを報じている大手紙はThe Guardianしか見当たらないよね。もっと広めるべき」「彼女のInstagramアカウントが削除されたのも、ファッション業界仲間が必死に働きかけてるからなんじゃない?」など、業界による圧力を疑うコメントも目立っています。

 なお、シェリーンの告発では、過去にマイケルがセクシュアルハラスメントや人種差別で糾弾されていることにも言及。マイケル自身が2021年、モデルでタレントのクリッシー・テイゲンからSNS上で「人種差別主義者」と非難され、彼女と彼女の友人がかけた圧力によって複数の仕事を失い、精神を病み自殺を考えるまでに追い込まれたと明かしていたものの、この騒動をきっかけとしてマイケル自身が行ったハラスメントなどが次々に露呈しました。なおクリッシー側も、過去にネット上で何人かの人物に嫌がらせをしてきたことが発覚し、のちに謝罪しています。

読まれている記事

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」