腹の中まで真っ黒な“謎の深海魚”を捕獲→食べてみた “衝撃的な食レポ”に「学びがあるのにめちゃめちゃ面白い」(1/3 ページ)

生物の不思議さに驚く。

» 2024年12月03日 19時00分 公開
[三日月影狼ねとらぼ]

 口から中身まで全て真っ黒、とってもおいしいけれど超絶食べにくい魚を食べる動画が、YouTubeチャンネル「平坂寛」に投稿されました。動画は記事執筆時点で13万回以上再生され、3000件をこえる高評価を獲得しています。

中身まで真っ黒! 超美味だけど超食べにくい深海魚「クロシビカマス」を釣って食う

「腹黒い魚」を釣って食べる!

 動画を投稿したのは、世界中を飛び回って取材をしている生物ライターの平坂寛さん。これまでも世界最強クラスのハチ・オオスズメバチに刺されてみたり、猛毒ガエルの毒液をなめてみたりと、文字通り体を張った姿を見せてくれました。

 今回沖縄の海にやってきた平坂さんは、研究用の標本を集めるために珍しい深海魚を狙っていくとのこと。せっかく船を出すため、同時においしい魚を持って帰りたいと考えているようです。

 水深700メートルくらいを攻めていくため、この水深で狙えるおいしい魚である「包丁を入れると中身が真っ黒なやつ」と「逆に真っ白なやつ」の2種類をターゲットにします。どちらもおいしいけれど、一癖も二癖もある魚なのだとか……。

クロシビカマスを調理する

 学生時代の恩師である、指導教官の先生と出船した平坂さん。特大の電動リールや水中ライトを使い、700メートル辺りの深海に新鮮な魚の切り身を落としていくと……早速ヒット! 体長65センチほどと立派なサイズの「クロシビカマス」を、2匹も釣りあげることに成功したのでした。

クロシビカマス 今回のターゲット「クロシビカマス」が釣れました

 クロシビカマスの体色は銀色ベースですが、コロコロと色を変えて、ときおり体の色が真っ黒に染まるそうです。そのため別名「スミヤキ」と呼ばれることもあるのだとか。

 その後はいよいよ、持ち帰ってきたクロシビカマスを調理していきます。釣りあげたばかりのときは黒っぽく見えたクロシビカマスですが、船にあげると同時に退色しはじめたそうで、いつの間にか青みを帯びた銀色に変色していました。

まな板の上のクロシビカマス 全長65センチほどと立派なサイズです

 クロシビカマスの歯は見た目通りとても鋭く、触れるだけで皮膚がスパッと切れてしまうとのこと。観察してみると目にはタペータムという器官があって深海のわずかな光を増幅して物を見ていること、口の中が喉まで真っ黒なことが分かりました。

 平坂さんによると、クロシビカマスは持ち方に注意が必要とのこと。まず歯が鋭いため、ブラックバスのように口の中に指をつっこんで持つことはできません。また背びれの筋は鋭いトゲになっているため、うかつに胴体をつかむのもNG。さらにエラにも鋭い歯が生えているため、指を突っ込むと血まみれになってしまうそうです。

歯が恐ろしく 口の中には恐ろしく鋭い歯が
エラの中 エラの中にも歯があるとのこと

 一通り説明をした後におなかを開け、出てきた胃袋を開けてみると……中から深海魚の1種である、ハダカイワシの仲間が出てきました。ハダカイワシは捕食者から身を守るために、おなか側に発光器を持っている魚なのだそうです。

ハダカイワシの仲間が 胃袋の中にはハダカイワシの仲間が

 続いて内臓を取り除いたクロシビカマスのおなかの中を見てみると、驚くほど真っ黒でした。色素を作るのにもコストがかかることを考えると、何か特別な理由がなければ、おなかに色をつけるはずがありません。ではなぜ、クロシビカマスのおなかの中は黒いのでしょうか。

おなかの中まで真っ黒 おなかの中が絵の具で塗ったように真っ黒です

 その理由は、クロシビカマスが食べるものにあるといいます。深海生物の多くは何らかの形で発光するといわれていて、クロシビカマスもハダカイワシやホタルイカなどの発光する生物を食べることが多いのだそうです。

 食べた生き物がおなかの中で発光してしまうと、光が外に漏れ外敵に見つかりやすくなってしまいます。そのため、おなかの中を黒く染めて暗幕を作っているそうです。なんとも不思議で面白いですね。

身をスプーンでこそぐ なめろうを作っていきます

 その後クロシビカマスを3枚におろすと、身はとてもキレイな白身でした。平坂さんによるとクロシビカマスはどう料理してもおいしいけれど、おすすめは生食とのこと。しかしとても小骨が多いため、刺身ではなく“なめろう”にするのがおすすめだそうです。

 しっぽ側から頭側に向けてスプーンを動かしてみると、身がキレイに取れていきます。そして身が取れてくると、大きな骨が出てきました。普段目にする魚とはまた違った骨の入り方です。

皮から骨が出ている様子 ものすごい骨です

 削ぎ取った身と薬味、みそを合わせて包丁でたたき、粘り気が出てまとまってきたら「クロシビカマスのなめろう」の完成です。今回はなめろうにしましたが、塩焼きにしてもおいしいそうですよ。

クロシビカマスのなめろう クロシビカマスのなめろうが完成しました

 これが食べたかったと語りつつ、なめろうを口にすると……平坂さんの表情から、とてつもなくおいしいことが伝わってきます。そのお味は肉のうまみが強くて油の豊かなコクがあり、油っこいけれどくどくないという、すばらしいバランスなのだとか。

なめろうを味わう男性 おいしいことが伝わってきます、食べてみたい……!!

 キンメダイ漁などの深海漁をする地域ではクロシビカマスが一緒に獲れることがあり、お店でも出てくることがあるそうです。普通に釣りをしていて釣れることはあまりないけれど、市場でもたまに並んでいるため、クロシビカマスを手にする機会があればぜひ食べてみてほしいと語る平坂さんなのでした。

 平坂さんにしては珍しく、平和かつおいしいだけで終了した今回の動画。しかしいずれ公開する予定だという真っ白な魚・バラムツの回ではいつも通り(?)、苦しみの表情を浮かべる平坂さんが見られる……かもしれません。

 ※バラムツ…筋肉中に人間には消化できない油脂を大量に含んでいて、大量に食べると腹痛や下痢を起こす魚。食品衛生法で販売が禁止されていますが、釣りなどで入手したバラムツを自己責任のもとに食べることは違法ではありません。

「生き物って不思議で面白いな」の声

 動画には「生き物って不思議で面白いな」「自然界の生物のフォルムや色にはちゃんと意味があるんですね。とても神秘的で興味深いです」「学びがあるのに、めちゃめちゃ面白いね」「今回は平坂さんのご褒美回でよかった〜と思ったのも束の間、次回予告でぶち上がってしまいました。たのしみにしてます!」「新しく動画が上がると安心するYouTuber1位」といった、たくさんのコメントが寄せられています。

 平坂さんはYouTubeチャンネル「平坂寛」とX(旧Twitter/@hirahiroro)で、他ではなかなか見られない生物に関する情報を発信しています。

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