街中にクリスマスソングが鳴り響き、どこか追い立てられたような気持ちにもなる今日このごろ。なんだよ! クリスマスってのは誰もが盛り上がらないといけないのかよ! ……なんて嘆きも聞こえてきそうですが、そんな定番ムードに真正面から冷水をぶっかけてくれるクリスマスソングが、雑貨店・ヴィレッジヴァンガードの名古屋中央店など「違いの分かる」店舗で猛プッシュされているようです。
「カップル撲滅」を歌うシンガー「鼻毛の森」のベストアルバム
「理想論撲滅ソング」のPOPとともに店頭に置かれていたのは、ねとらぼでも2月に取り上げたシンガーソングライター・鼻毛の森さんのベストアルバム「GRAY-TASTE FITS(グレイテイスト・フィッツ)」。
“君でもよかった むしろ誰でもよかった 僕が寂しかったとき たまたま君がいた”という身もふたもない言葉が並ぶ「誰でもよかった だから君でもよかった」、“浮かれすぎたらやがて沈むよ どうか気付いて お気を確かに”と、恋に浮かれる人々への警告をつづる「お気を確かに」など、ちまたの幸せそうなカップルを全否定するかのようなタイトルの楽曲が満載です。クリスマスだというのに。
「このCDで浮かれたムードをリセットさせます」
前述の記事では「カップル撲滅」のスローガンを高らかに宣言していた鼻毛さん。年末を迎えても以前そのスタンスは変わらないようですが、ずっとこんな調子で行くつもりなのでしょうか? 本人に直接話を聞いてみました。
―― 相変わらずカップルがお嫌いなんですね。
鼻毛の森 「どうせ終わる」カップル限定ですって(笑)。強いて言えば、それらを生み出す根本要因、「取りあえず恋人ぐらい作らないとね」的な社会の風潮が嫌いですね。「安心してください」という言葉が今年の流行語にありますけど、むしろみんな世の中に不安があって、そこから目を背けたいばかりに支持された側面もあるんじゃないかと見ています。
―― 確かに、世間を覆う「ムード」に従わない人を「アウト」と見なす風潮はありますね。
鼻毛の森 例えば、カップル以外はクリスマス不適合者? そうじゃないですよね。ムードに気おされ、理想のパートナー探しを焦れば「見誤る」リスクも高くなる……。この、起こるべくして起こる「無駄」を未然に防止するために、あえてネガティブなアプローチを続けてるんです。
―― 世間のムードとのバランスを取る、と。
鼻毛の森 そうですね。バランスを取る、というよりは、世間の浮かれたムードをこの1枚(CD)でリセットさせてみてはどうかと。
―― 医療の世界では、別視点からの意見を聞いて選択肢を広げる「セカンドオピニオン」も推奨されつつありますね。
鼻毛の森 それです。僕はJ-POP界の「セカンドオピニオン」的存在として、「君らは、今は浮かれていられるけど、現実的に見ればこういう残念な未来も起こり得るよ」という“警告”を、受け入れやすいメロディ、サウンドに乗せて発信しているんです。嫌がらせ? それは……あるかもしれませんね(笑)。
みんなもっと「仕方ない」と思えばいい
街は浮かれるSilent Night できることなら避けたい
いつものあの店も稼ぎどきさ 安く済まないよ
(「SorryNight 〜惨状のメリークリスマス〜」より)
―― この歌詞と同じキモチの人、多そうですね。
鼻毛の森 懐事情をはじめ、現状はなかなか変えられない。ならば潔く「開き直る」ことで、「年の瀬の大イベント」をスル―できるのではと思いまして(笑)。この曲を含めた13曲を聞き終えて、「仕方ないものは仕方ない。今後は身の丈に合わせよう!」と、新年を楽に迎えるきっかけになってくれたら、うれしいですね。
確かに浮かれ気分を自分に強いるのをやめるだけでも、かなり穏やかにクリスマスを過ごせるかもしれない。鼻毛の森さんの一言に、ただならぬセンスを感じます。心のセカンドオピニオンとしてどうでしょうか。
(天谷窓大)
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