人気ゲームアプリ「ねこあつめ」を実写化した映画「ねこあつめの家」(4月8日からロードショー)。スランプの小説家・佐久本勝が庭先に集まってくる猫を眺め心を癒していくニャラスジ(あらすじ)で、出演は主役の佐久本を演じる伊藤淳史さんに木村多江さん、田口トモロヲさん、大久保佳代子さんら。
今回は同作のヒロインで、佐久本を励ます熱血編集者、十和田ミチルを演じた忽那汐里さんを直撃。現場にはニャストの一人、シナモン(ちゃはちさん役)も来てくれました。
ミチルを「情熱だけが表に出る感じにはしたくなかった」
—— 今回のお仕事が決まったとき、演じる若き編集者・十和田ミチルについてどんなことを考えましたか?
忽那 まず、佐久本との関係をどう見せればいいかなと考えました。家族でもなければ、友だちでもないけれど、一番接する時間が長い存在なので。そして、ミチルのまだ若くて経験がないというのは残しつつも、暑苦しかったり、世間知らずすぎて、情熱だけが表に出てしまう感じにはしたくないと思いながら演じましたね。
—— ミチルは、スランプ中の佐久本に対して、頑張ってほしいけど歯がゆい、でも傷つけたくない……という複雑に入り交じった感情を抱いて見つめていますよね。この佐久本との関係性や距離感を演じるのは難しそうですね。
忽那 そうですね。作家さんと編集というのは、上司と後輩、同期といった関係性ともまた違うし、どこまで踏み込むかは人それぞれだと思うんですが、この二人ならではの距離感とか関係性は何がいいのかなと考えました。
伊藤(淳史)さんとは前にも一緒にお仕事しているんですけれど、とても面白く、常に相手が楽しんでいるかどうか気を使ってくださる方で、すごく心地よく仕事ができるので、実際の伊藤さんとの間には壁はなく、演じている間は自由に本当に会話しているように演じていました。
—— 主人公の佐久本にはどんな印象を?
忽那 作家さんはやるもやらないも自分次第で、苦しい職業だなと思うんです。映画監督さんも脚本を書くのに「何年掛かった」というお話も聞くことがありますが、明確に先が見えない中で、地道に書いて、それをいつか出版しようと、自分に自信を持ち続けないといけない。でも、佐久本は繊細なところがあり、なおかつ周りの意見がすごく気になってしまい、いろいろなものがうまくいかなくなって、一度全て捨てて環境も変えるところまで追い込まれてしまった人だなと。
—— そんな佐久本を、ミチルは放っておけなかったわけですが、佐久本のような追い込まれた人を前にしたら忽那さんならどうします?
忽那 うーん、どうだろう? 難しいですね。ミチルは仕事だからできていますけれど、自分の周りにそういう方がいたら……本当に地道に信じてあげるしかないかなと思います。
—— ご自身とミチルの共通点や、自分とは違うなと感じた部分もありましたか?
忽那 私自身は、ミチルよりももう少し自分の情熱や野望を冷静に見ている気がします。ただ、彼女のように、今の自分では、やりたい方向に物事を導いていけない……というじれったさも感じたことはありますね。
—— この映画は、ちょっとしたきっかけで人は変わるというのもテーマの1つだなと思いましたが、忽那自身の人生の転機も気になります。
忽那 1年くらい前から、積極的に、現場で共演者の方や監督さんとコミュニケーションをとることを意識するようになりました。仕事をしていくチームの中でみんなとかかわっていたいなと思うようになって。やっぱり環境は大事ですから、仕事をしていく人との距離感が変われば全部変わった感じもしますし、これは大きいですね。
—— そうなんですね。何がきっかけだったんでしょう。
忽那 ドラマ「鴨川食堂」で萩原健一さんと共演してからですね。ある意味レジェンドのショーケンさんは、今まで会ったことがないような面白い方で、すごくかわいがってもらいましたし、いろいろ教えてもらいましたね。撮影の後半なんて、もう目を合わせれば笑っちゃうくらい、いい関係が築けて。(撮影が)終わるときはもう毎日会えないんだって、ものすごく寂しくて。それからは現場でなるべく人とかかわろうと。
猫もプロ? 「相当すごいです」
—— 映画の中で一番印象深いシーンはどこですか?
忽那 佐久本先生が初めて猫の魅力に気がついたところ。私自身ももとから猫派だったわけではないので、その感覚が分かりますし、猫だけじゃなく、何かに気がついた瞬間って可能性がどんどん広がっていくときで、その瞬間が多ければ多いほどいい循環になって、いいんだろうなと思います。
—— もしかして、この映画をきっかけに猫派に?
忽那 あ、私は日本に来てからはずっと猫派だったんです。
—— お、そうなんですね。
忽那 猫はすごく好きで、オーストラリアに住んでいたころは、あまり野良猫と接する機会がなかったんです。(土地が)広大なので、猫も野性的な感じで、寄ってくることも基本ないから。日本に来てから、3〜4カ所くらいの地域に住んだんですが、偶然どこの地域もすごく野良猫が多くて、しかも人間慣れしていて、ついてきたりもするので仲よくなってはまっていった感じですね。
—— 猫って不思議な魅力がありますよね。
忽那 他の動物と違って、唯一しつけができないところが逆にみんなが好きな理由ですよね。呼んだら必ずしも来るわけでなく、自由気ままに生きている感じがみんながはまる理由じゃないかと思います。
—— 先だって公開された動画インタビューで「猫との場面が少なくて残念」と話していましたが、何か猫とやりたかったことは?
忽那 ただただ猫に触れたかったですね。本編ではあまり触れることがなかったので。撮影じゃないときは遊んでいて、たまに抱っことかもさせてもらいましたが。
—— 撮影中、猫の機嫌待ちなどもあったりしそうな。
忽那 そんなになかったです。私は猫とのシーンは少なかったんですが、一番多かった伊藤さんも全く苦労しなかったそうなので、今回は本当恵まれていたというか。特に今日ここにいるシナモンちゃんは、取材もいつも一緒にいるんですけれど、一日中平気なんですよ。
—— プロ猫(笑)。作中には「くろねこさん」「ちゃはちさん」など“ニャスト”もたくさん出てきますが、特に印象に残った猫もやっぱりシナモン?
忽那 そうですね。シナモンは相当すごいのでダントツでシナモンですね。妙に落ち着いているというか、シナモンは「今ここに置いたら、絶対動かない」と自信を持っていえます。これだけおとなしい猫もそういないかなと。
—— 映画で、主人公の佐久本は猫に癒されますが、忽那さん自身が癒されるのは、どんな瞬間ですか?
忽那 癒しはやっぱり音楽です。映画やスポーツも好きですが、映画は見終わってからいろいろと考えることがありますし、スポーツは応援しているところが負けたら1日むしゃくしゃするので(笑)。唯一、音楽が他のことを考えずに楽しめるものですね。自分でたまにギターを鳴らすこともありますし、ここ最近は70'sのR&Bが好きでよく聴いています。
—— 庭先に猫をたくさん集めて暮らす「ねこあつめ」のような生活を送ってみたい?
忽那 猫に限らず動物は何でも好きで、虫も大丈夫だし、鳥も自由に飛んだ方がいいので飼いたいとは思わないのですが、鷹とかがすごく好きです。いつかたくさんの動物に囲まれて暮らしたいなぁとは思いますね。
—— 最後に、公開を楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
忽那 猫がテーマでもありますが、もう1つ、人間ドラマもちゃんと描かれている作品なので、いろいろな方に見ていただけたらと思います。
(田下愛)
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