中国で発表された3DCGアニメ映画「ドラゴンフォース(原題:鋼鐵飛龍)」にウルトラマンがゲスト出演するというトレーラー映像が公開され、「円谷プロダクションの許可を得ていないのでは?」と物議をかもしています。
7月10日の「ウルトラマンの日」に、中国のイベントで発表されたのは「ドラゴンフォース〜さようならウルトラマン〜(原題:鋼鐵飛龍之再見奧特曼)」のトレーラー映像。「ドラゴンフォース」は、「時空警察ヴェッカー」シリーズなどを手掛け、中国でも活躍する日本のクリエイター・畑澤和也さんが総監督原案を担当した3DCG映画で、2013年には日本でも作品が公開されました。
今回はその映画の第二作目にあたり、フルCGで表現されたウルトラマンがゲスト出演・活躍する様子が描かれています。作中のウルトラマンの姿は腹筋がシックスパックに割れて筋肉質になり、全身にグレーのラインが入るなどオリジナルデザインに見えます。なお、7月17日に畑澤和也さんに確認したところ、「ドラゴンフォース〜さようならウルトラマン〜(原題:鋼鐵飛龍之再見奧特曼)」には畑澤さんおよび2013年に日本で「ドラゴンフォース(原題:鋼鐵飛龍)」を公開した際の日本人スタッフは一切関与していないとのことでした(※)。
(※)【2017年7月17日追記】:当初「ドラゴンフォース〜さようならウルトラマン〜(原題:鋼鐵飛龍之再見奧特曼)」に畑澤和也さんが携わっているのかは不明と記載していましたが、その後畑澤さんご本人に取材することができ、一切関わっていない事実などが分かったため、一部加筆・修正させていただきました。
またトレーラーの中には、過去の作品に登場した歴代のウルトラマンや、ハワイ観光局と円谷プロダクションがコラボした企画「ウルトラハワイ」の映像、6月7日にリリースされたばかりの科楽特奏隊「ウルトラセブンの歌」のPV映像、人気親子YouTuberがウルトラマンゼロと触れ合う様子の映像も盛り込んでおり、これらを資料映像として紹介しています。
さらにイベントにはこのオリジナルデザインのウルトラマンも登場しました。
ところが、このウルトラマンは肌に直接ペイントを施しているため、乳首があったり、はだしだったり、なぜか顎がとがりすぎてしゃくれて見えたりと円谷プロダクションのウルトラマンのデザインとは大きく異なるように見えます。
これについて日本では「海賊版」「無許可ウルトラマン」「パロディだとしてもクオリティが低すぎる」と怒りの声があがっています。また中国国内からも「恥知らず」「円谷の許可を得てるの?」といった声もあがっていますが、中国系の複数のメディアがステージ上で「著作権侵害はなく、公式のライセンスを使用したリメーク作品だ」との説明があったと報じています。
なぜ今回の作品が発表されるに至ったのか、これにはウルトラマンの海外での権利関係が複雑に関与しているとみられます。日本国内でウルトラマンの著作権を有するのが円谷プロダクションであるということは広く知られていますが、あるタイ人の実業家が、円谷英二氏の息子である故・円谷皐(のぼる)氏から「ウルトラQからウルトラマンタロウまでのシリーズの海外利用権を譲渡するという契約書を1976年にもらった」と主張。海外での権利利用について1997年から円谷プロダクションと長きに渡り、さまざまな国で争っているのです。
これらの訴訟についてHUFFPOSTは2013年に、「契約書は真っ赤な偽物」という円谷プロダクション側の主張がタイ王国では認められたものの、日本・中国ではこの主張が認められず、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA(エース)」「ウルトラマンタロウ」の6作品の中国国内での利用権は、タイ人実業家側にあることが確定したと報じています(HUFFPOST・ウルトラマン裁判、中国最高裁で円谷プロが敗訴 ユーエム社「中国版ウルトラマンでリメイクも」の記事より)。
こうした背景も踏まえて円谷プロダクションに対し、「ドラゴンフォース〜さようならウルトラマン〜(原題:鋼鐵飛龍之再見奧特曼)」へのウルトラマン出演や、見た目が日本版と大きく異なるウルトラマンの登場を把握しているかを問い合わせたところ、広報の担当者は「本件映像作品やウルトラマンキャラクターの利用等について、弊社としては一切関知しておらず、許諾・監修等を実施したものではありません」と回答。
今後については「権利者としてしかるべき対応をとってまいります」としつつも、これまでの訴訟の経緯が関係しているかについては、「法律的な見解を含め、詳細については今後の対応に関わりますので現時点でのコメントは控えさせていただきたく存じます」としました。
中国をはじめ、アジア圏でも絶大な人気を誇るウルトラマンシリーズ、今後の対応に注目が集まります。
(Kikka)
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