え!? こんな安いの? 船乗りが説く「フライ&クルーズ」で楽しむ新・船旅のススメ(2/3 ページ)
実は「海外ツアー通販価格くらい」で楽しめちゃいます。「船旅は超高い」は誤解なのですよー。【写真85枚】
タダ飯だからと言って「自販機食堂」というわけじゃない
で、旅と言ったら楽しみは食事ですね。あ、もしかして船旅というと「イングリッシュブレックファストにビュッフェスタイルのランチにフルコースフレンチディナーと毎日が高級レストラン級の食費でとても財布が持たない!」と思っていませんか。大丈夫なのです。船旅の場合、食費が船旅料金に含まれていて、全期間朝昼晩と「タダ」で利用できるレストランが用意されています。何? タダ飯ということは自販機やレトルトやお弁当が出てくるようなイートインコーナーみたいなものを食べさせられるのでは、といいますか。
では、ご案内しましょう。こちらが大型客船で「タダ」で楽しめるレストランでございます。
こちらはDream Diningの2階部分になる中華レストラン「Dream Dining Upper」。Upperでは多彩な中華料理が盛りだくさん。個室もあって、自分たちのグループだけで盛り上がることも可能なんだぜー
船酔いは心配ない
というわけで、船旅では朝昼晩+間食2回の計5食をタダで食べまくれることが分かっていただけましたか。気に入った料理はお替りも自由。食い倒れ待ったなし!
あー、分かります。そこで「船酔い」のことが心配になったのですね。特に日本人は船酔いに対してとっても不安を感じるようなんです。日本近海は、黒潮などの大規模海流が流れているのと太平洋という“超どでかい”海洋の縁にあって、がっつり大きく成長した波が打ち寄せてくるという地理的な条件によって、船が揺れやすく船酔いしてしまう可能性が高いという事情があるからかもしれません。
その一方で、東南アジアの海域では島々に囲まれた内海的な条件で、かつ赤道に近くて風が起きにくいことから大きな波が形成されにくく、船もあまり揺れません。また、米空母ニミッツ級に相当する長さと13万695トンという大型な船型に加えて、船底の両脇から横に伸びた翼を揺れに合わせて上下に動かす「フィンスタビライザー」という横揺れを減らす艤装によって、この海域で運航している大型客船はほとんど揺れることがないのです。だから船酔いも心配なし。
え、本当に揺れないことを証明してくれってですか。んー、ならば、ちょっとこれを見てもらいましょうか。
これは、船内に設けた座席数999席の本格的な劇場「ZOATEC THERATER」でやっているアクロバットショー。他にもボールルームダンスといった、とにかくバランス感覚が求められるショーをやっているわけでして、こういうのって安定しているステージじゃないとまずできないですよね。こういうショーを航海中に毎晩普通にやっていることが何より船が揺れないという証明になるのではないかと思うのであります。
ということで、せっかくだからショーでも観てみませんこと? ん? どうせ船員が片手間にやる微妙な出し物じゃ、見ているこちらが気を遣ってつらいです、てか。ふふーん、取りあえず実際に観てみましょうか。
船旅では料理と並んでショーも重要な要素として評価されるんですね。なので「船員の片手間」どころか、ダンサーたちは誰もがワールドクラスのコンテストファイナリストや欧州タイトルホルダーなどなど、とてつもない経歴とスキルを持ったメンバーが集まっていたりします。舞台美術や演出もしかり。でもって、船旅の間毎日やっているショーも「タダ」で楽しめるのであります。
こんな感じで、今回は「シンガポール発着プーケット寄港三泊四日」をプレスツアーで体験しましたが、参考価格はベランダ付きの船室を利用した8万2000円+シンガポール往復航空チケット約8万円の16万2000円くらいから楽しめます。
参考までに、プーケット高級ホテル滞在4泊6日の海外ツアー通販価格の多くは、シーズンにもよりますが10万円台後半から20万円台前半。それに加えて、食事代はかかるし(しかも船で出てくるメニューと同じものを食べようとしたら、まず大抵はその街の高級レストランに行くことになる)、エンターテインメントを楽しむならばその入場料や観劇代だってかかる(それも超一流の)。それと比べると、多くの皆さんが「超高くて超時間がかかってとても私には無理」と思っている船旅が、実は想像以上に安く、かつ、短期間でもできる、ごく普通の「海外旅行」の1つだったりします。
あ、あと景色。これもタダ。もちろん、陸の旅行でもタダですが、船旅で移動している間、景色はどんどん変化していくし、普段では見ることができない洋上の風景を楽しむことができます。
いやぁ〜、船旅って本当にいいものですね〜(水野感)。
長浜和也
IT記者は仮の姿で本業は船長(自称)。小型帆船を三浦半島の先っちょに係留する“一人旅”セイラー。伊豆諸島を旅するため、学連経験やクルー修行をすっとばして、いきなり1級船舶免許を取得してヨットに乗りはじめて早20年。かつて船で使うデジタルガジェットを紹介する不定期連載も。
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