いつからゴミだと思っていた? ストロー袋の写真ばかりを集めた同人誌が一種のアート作品:司書メイドの同人誌レビューノート
あなたは取り出した後のストロー袋をどうしていますか?
このあいだ小雪混じりの風に首をすくめていたと思ったら、ここのところにわかに暖かくなってきました。このまま春に向かっていくのでしょうか。冬の間は温かい飲み物ばかりを飲んでいましたが、ぽかぽか陽気になると、ひんやり冷たい飲み物も急に目につきはじめたり。今回は、冷たいお飲物のお供、ストローについての同人誌です。いえ、もっと詳しくお伝えすると、こちらの同人誌は「飲み物」でもなく「ストロー」でもなく、ストローの「袋」しかも「ストローの袋のゴミ」ばかりを集めた同人誌です。
今回紹介する同人誌
『ストローの袋のゴミのかたち図鑑』A5 20ページ 表紙・本文カラー
作者:ふねこあみ
出会って、気付いて、収集して。きっかけはお父さんの喫茶店
この同人誌は、著者さんがお父さまの経営する喫茶店でアルバイトをされていたのがきっかけだそうです。ある日お客さんが帰った後に残されたストローの袋に目をとめ、そこから興味を持って集め始め、2017年4月から10月までの7カ月間に渡る収集の成果がいまここに!
ちょっぴりアート? ゴミから見える形の面白さ
ご本の中にはたくさんのストロー袋の写真が掲載されています。なにげないストロー袋のゴミ。それに「ヤブル」「ネジネジ」「クシュクシュ」など、著者さんが名付け、近しい形ごとに分類してあります。並べてある名前を見るだけで、ストロー袋のゴミには「開ける」「ストローを取り出す」「そのあと加工する」のアクションが発生していることに気付きました。これは多彩な!
とはいえ、きっとこのストロー袋が卓上にあったら「あ、ゴミね」と思って片付けてしまうでしょう。それなのにこうして分類され、並べられると急に一つ一つの形の面白さにも目がとまります。無造作に丸めてあるもの、ねじったり、折り込んだり。人の手わざとは、限られた材料でありながらこのようにさまざまな姿を作り上げるものなのか! と感嘆さえ湧いてきました。
それらを黒の背景で並べることにより、ストロー袋の白さが際立ち、一種のアート作品のたたずまいです。最終的にはリサイクルのロゴがワンポイントのアクセントにすら見えてくるほど。
ストローの袋に過ごし方が反映される。あなたはどの形?
「イモムシ」にあるあると思ったり、結び目をわざわざ2つも作っている袋にはなぜ? と興味が湧いたり……暇だったのでしょうか。そんな風に思いをはせて、いつもの間にか残された物の形から、使った人の過ごした時間を想像していました。
著者さんも「無意識のうちに行われる何気ない行動が『かたち』となって現れていることにとても魅力を感じるようになりました」と書かれているように、ストローの袋はほとんど記憶に残りません。先週飲んだオレンジジュースのストロー袋をどんな風にしたか覚えてる? と聞かれても、自信をもって答えられる気がしません。そんな通り過ぎてしまう喫茶店の一瞬を、ストロー袋はその体めいっぱいを使って記録しているんですね。しかも「ストロー袋」という本体の付属品という宿命ゆえのはかなさと、使った人の癖が見えるような見えないような……という不確かな情報具合が絶妙のバランスです。
巻末のごあいさつは「日常に溢れる些細な違いを少しでも楽しんでいただければ幸いです」と結ばれています。「ちょっと違う」が並べてみるとこんなに面白くなるんですね。明日、冷たい飲み物を飲んだら思い出してしまいそうなご本です。
サークル情報
サークル名:ねみみみみず
Webサイト:https://nemimi.sss-fc.com/
Twitter:@funekoami
note:https://note.mu/funekoami
参加予定のイベント:おもしろ同人誌バザール(4月6日開催)
今週のシャッツキステ
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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