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“ネット鎖国”のジャニーズが放った「バーチャルジャニーズ」 ジャニオタは何に戸惑い、何に希望を見たのか(1/2 ページ)

「ジャニーズ再評価」につながってほしい一手。

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 デジタル化が進む昨今、イケメンを山ほど抱えながら「ネット鎖国」を続けていた「ジャニーズ事務所」という芸能事務所がある。そんなジャニーズが、2月19日にいきなり発表したのが「バーチャルジャニーズプロジェクト」だ。

 バーチャルのジャニーズというフレーズが明らかになったとき、私含め、周囲のジャニーズファンの反応は、圧倒的な「戸惑い」だった。

 ジャニーズの楽曲を人にすすめようにも、ネット配信がない。電子書籍では写真を塗りつぶされる。ブロマイドは「学校行事の写真注文スタイル(見本を見ながら選ぶ)」のみで通販はない。それでも最近は、YouTubeにジャニーズJr.の公式チャンネルができたり、デジタルチケットが使われるようになったり、限定的ながらWeb媒体で写真が解禁になったりと、少しずつ近代化してきた。そんな最中の発表だった。

バーチャルジャニーズ

 動画生配信サービス「SHOWROOM」とタッグを組んだプロジェクトだ。バーチャルアイドルの海堂飛鳥(かいどう・あすか)、苺谷星空(いちごや・かなた)が、プラットフォーム上で活動する。「VTuber(バーチャルユーチューバー)」と呼ばれる配信者の勢いがすごいのは知っていたが、まさかこのビッグウェーブがジャニーズにやってくるとは……。ちょっと思い切りすぎではないか!?

 バーチャルジャニーズの、いわゆる「中の人」をつとめるのは、藤原丈一郎(ふじわら・じょういちろう)くん大橋和也(おおはし・かずや)くん。関西発のグループ「なにわ男子」のメンバーで、ミュージカルW主演も経験した実力派。上り調子の2人だ。

バーチャルジャニーズ
左から、藤原丈一郎くん、大橋和也くん、SHOWROOMの前田裕二代表(プレスリリースより)

 ファンからは「リアルな2人が好きなのに、バーチャルアイドルなんて……」という意見もあった。実際にアイドルである2人がバーチャルアイドルをする意味を疑問に感じても無理はない。今まで藤原丈一郎と大橋和也を応援していたのに、なぜ海堂飛鳥と苺谷星空という架空の存在を間に挟む必要があるのか――と、戸惑う気持ちも理解できる。

 そんな戸惑いと心配の空気で満ちる中、記者会見のその日から配信が始まった。

「大丈夫かな……」が、「かわいい!!!!」に

 一番怖かったのは「微妙に盛り上がらない」「中途半端」という結果だ。動いているキャラクターがかわいくなかったり、しゃべりが台本っぽすぎたりしたら、せっかくの挑戦が台無しになってしまう。

 初回放送を見た。

 「大丈夫かな……」「あっ、かわいいかも」に変わっていくのを感じた。「かわいいかも」が「かわいい!!!!」に変わったのもすぐだった。かわいい。ちゃんとかわいい。飛鳥と星空はかわいいのである。

 一番懸念していた「盛り上がらない」「中途半端」という点はクリアしていたように思う。キャラクターイラストは、HoneyWorksのビジュアルを手がけるヤマコさんが担当。3Dモデルになっても細部までかわいらしく、挙動も自然だ。

 3Dモデルは、上半身のモーションをキャプチャーするようになっており、表情だけでなく身振り手振りがリアルタイムで動く。そのしぐさは、明らかに藤原くんと大橋くんのものだった。「声」と「動き」が一致していた分、統一感があった。

 かといって、「まんま藤原くんと大橋くんじゃん!」というわけではない。

 星空は、能天気かと思いきやしっかり者。家事も苦手ではないようで、何かと器用なタイプだ。

 星空よりひとつ年下の飛鳥は王子様キャラだがツンデレ、ジェットコースターやお化け屋敷が苦手なヘタレっぽい一面もある。

ALTALT 星空(大橋くん担当)と飛鳥(藤原くん担当)

 実は普段の藤原くんは、プロフィールに「趣味:ネタ作り、特技:漫才」と書くほどThe・関西な男の子なのだ。一方で、彼が声を当てる飛鳥は「甘い言葉」を口にする「王子様キャラ」。普段の彼とはどうしても結びつかず、らしくなさにちょっと笑ってしまった。

 ただ、らしくなさにときめいたのも確かだ。藤原くんは彼なりに、キャラに寄せて「中の人」に徹しているんだなぁと思うとうれしかった。

バーチャルジャニーズ
甘い言葉タイムはカメラが寄る(3月3日配信の「海堂飛鳥の飛鳥クルージングルーム」より)。

 飛鳥と星空は大阪府出身の設定で、藤原くんと大橋くんの関西弁も生かされていた。そして2人とも、1人しゃべりがうまい。彼らはFM大阪で毎週火曜に放送中の「関西ジャニーズJr.のバリバリサウンド」でラジオパーソナリティーもつとめているが、ラジオ仕込みのトーク力が光っていた。キャラクターを演じながらも自然なトーク回しだ。

 大橋くん演じる星空はハイテンションに視聴者を巻き込みながら、藤原くん演じる飛鳥は甘い言葉をはさみつつゆったりと配信を行うスタイル。初日の時点でそれぞれのスタイルも確立していた。

常にお互いを感じさせる「関係性萌え」

 細かい設定がときめきスイッチを絶妙に押してくる。

 下手すぎる飛鳥のイラストを勝手に配信で公開してしまう星空、2人はルームシェアしており、家事全般は星空の方が得意、お互いの配信を見ていてコメントを送りあう……など、おいおい最初から飛ばしすぎだろ!! と頭を抱えたくなる関係性萌えの嵐。その結果、コメント数、送付アイテム数などから決まる月間ランキングでは、2月のトップと2位を獲得。それぞれのフォロワーは6万人を超えた。

バーチャルジャニーズ
飛鳥が描いた"メリーゴーランドに乗っている自分"のイラスト(3月4日配信の「苺谷星空のいちご果汁99%のお部屋」より)

 そして2人をプロデュースするのは、HoneyWorksの楽曲プロジェクト「告白実行委員会〜恋愛シリーズ〜」の舞台、桜丘高校2年生の「前田くん」(という設定)。前田くんは、「バーチャルジャニーズプロジェクト」公式アカウントとは違う、個別アカウントを開設している。彼の最初のツイートがこれ。

バーチャルジャニーズ
前田くんの設定もある

 「僕は、何があっても、二人の事を一生裏切らない」――。お前はタイムループとかしてんの!? 別の世界線で2人を幸せにできなかったの!? と問い詰めたくなるツイート。前田P関連でとんでもないことが起きそうな予感がする。

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