2019年4月18日:追記
記事中「オルバースのパラドックス」の解説について、記述に誤りがあると読者からご指摘いただいたため、津村耕司氏(東京都市大学天文学研究室准教授)のご協力のもと、本文を修正いたしました。
現代において「宇宙」といえば、100人中99人は
これをイメージすると思う。漆黒の空間に星の光が散らばっているこれ。
ところが、宇宙のことがそれほど分かっていなかった昔、ある人は「宇宙が暗いのはおかしい」と疑問を抱いたという。
現代ならそんなことを言った方がおかしいと思われそうだが、説明を聞くと本当におかしい気もしてくる。そんな「オルバースのパラドックス」について考えてみよう。
オルバースのパラドックスとは
パラドックスの内容は、
- 宇宙が無限に広がっていて
- 恒星が均等に散らばっている
- ならば、宇宙は明るいはず
というもの。
なかなかピンとは来ないが、地球は無限の宇宙空間に取り囲まれており、そこに無限に星があるのだから、地球から見たら星星の光がそれこそ無限に入ってきてまぶしい、という話だ。
もう少し詳しく……
とはいえ、ここまでの説明はアバウトだ。もう少し詳しく見ていこう。
「星が無限の宇宙空間に均等に存在するため、宇宙は明るくなるはずだ」、というところまでは説明した通り。ただ、そうカンタンには行かない。
車のライトや電灯の灯りは、同じ強さの光を放っているならば当然遠くにあるもののほうが暗く見える。これはみなさんもご存じだろう。これは星についても同じだ。光は分散するので、遠い星の光は近くの星ほど明るくは見えない。
これだけ見ると「遠くほど暗いのだから、空全体が明るくなったりはしないのでは?」と思えるが、それだけではまだこのパラドックスは崩せない。
恒星の見かけの大きさ(明るさ)は距離の2乗に反比例するが、同時に恒星の数が距離の2乗に比例するため、遠いところ(つまりはより広いところ)には一つ一つは弱いがたくさんの光があるのだ。球体の表面積は半径が大きいほど広くなるため、遠いところのほうが多くの星が位置できる、というわけである。
よって「宇宙全体の明るさ」という観点からすると、距離による一つ一つの星の減光は、距離が離れるほど星がたくさん位置することによって相殺される。
つまり、上で述べた仮定が正しいとすれば、無限の宇宙空間は四方から明かりに照らされるピカピカ空間になるだろう、というのがこのパラドックスである。
そういわれれば確かに……と思わないだろうか。
何が間違っているのか?
無論、みなさんが今見ているように、宇宙は暗い。となると、パラドックスの説明のどこかが誤りである。
提唱当初から多くの科学者がこの説明を試みたが、ここではその中でもより分かりやすいものを紹介する。
すなわちそれは、「われわれが『見ることのできる宇宙』が有限であるから」というものである。
光速が意外と遅いので……
宇宙にはビッグバンと呼ばれるはじまりの瞬間がある。これは、現在からおよそ138億年前だといわれている。
そして、その宇宙にはわれわれから見えていない部分が存在する。「宇宙誕生から現在までに光が到達できる距離」よりも遠くにある星は、その光がまだわれわれに届いていないがゆえに見えないのだ。
ゆえに、宇宙にある全ての星のうち、われわれが見えているものは一部である。つまり有限であり、われわれの見ている宇宙の全てが光で埋め尽くされるようなことは起こらないのだ。
まとめ
- 宇宙が無限に広いと思われていた時代に、
- それならば宇宙は明るいはずだと考えた人がいたが、
- われわれから見える宇宙が有限であることが分かり解決した
となる。
このような思考実験が行われていたのは、宇宙の広さも、宇宙空間が真空かどうかも分かっていなかった時代のこと。このような「〜だとしたら……」を足掛かりとしながら、数多の科学者が宇宙の謎に挑んでいったのだ。
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