ちょっぴりマニアック? 同人誌『日本全国医薬博物館巡り』を読んで奥深き“医薬”の世界に思いをはせる:司書みさきの同人誌レビューノート
実際に現地を訪れた作者さんによる博物館情報がいっぱい。
年の瀬が迫ってきましたね。2019年はどんな年でいらしたでしょうか。慌ただしい師走の締めくくりは、ゆっくり体を休ませながら、日々の健康を助けてくれる“医薬”を巡る旅に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
今回紹介する同人誌
『日本全国医薬博物館巡り』 A5 36ページ 表紙カラー・本文モノクロ(一部カラー)
作者:ゆげ笹太郎
薬、歯科、麻酔、お灸(きゅう)、医師国家試験の歴史まで! 多彩な医薬系博物館の世界
日本全国にある医療や薬に関する博物館を作者さんが実際に訪れ、さらにその中からおすすめのスポットをまとめたのがこちらの同人誌『日本全国医薬博物館巡り』です。掲載数はなんと28カ所! こんなに医療や薬の博物館があるのですね。
でもひと口に医療や薬と言ってもその内容は幅広く、薬、医療機器、医学を築いた偉人の業績、歯科、麻酔、お灸などなど、西洋、東洋、歴史から最新技術まで、バリエーションがとっても豊富。
富山強し! 薬売りの街は博物館巡りもチェック
日本全国を探訪されたなかでも、このご本の中でダントツの施設密集地があります。紹介施設のうち5カ所が東京都にあります。そして同じく5カ所を誇る地がもう1つ……それは富山県!
富山の薬売り、と聞いたことがあっても、現地にたくさんの博物館が開設されているのは知りませんでした。それも、ベーシックに昔の薬売りの様子を伝えるもの、現役の薬屋さんで丸薬作り体験ができるところと、見せ方もさまざま。1つのジャンルに特化して、それを地元の特色としてPRできる薬売りの歴史の奥深さのなせる技でしょうか。作者さんに「富山には様々な医薬展示があります。ご飯もおいしいので見学旅行もぜひご検討ください」と書かれると、食と知識で健康増強旅に出たくなります。
たくさんの施設を巡る作者さんの目を借りて、博物館の扉を開く
このご本のポイントはやっぱり、作者さんの生の声が生かされていることです。展示品から利用の申し込み方法まで、率直なコメントが参考になります。そこに多くの施設を巡られた方だからこその分類、比較が掛け合わさせることによって、施設の見どころがいっそう際立ちって、たくさんある中の特色が分かるからこそ、訪れた1つの施設を、より楽しみつくせるような気がします。明日行こうかという人も、いつか行ってみたいと言う人も、よそを知っておくときっと一味違った見方ができるのではないでしょうか。年末年始は開館日を要チェックしてお出かけくださいね。
今週の余談
冬真っ盛り! 皆さま、この冬は良きご本と巡り合えたでしょうか。海辺のご本は一期一会ですね。体が冷えないように、おいしいごはんと休憩をとりながら、良い年をお迎えくださいませ。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。