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アマゾンに対する楽天の焦り〜送料無料方針の「優越的地位」とは

公正取引委員会は楽天の施策をどうみるのか。

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ニッポン放送

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月11日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。公正取引委員会の楽天本社立ち入り検査について解説した。

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公正取引委員会が立ち入り検査に入った楽天本社=2020年2月10日午後、東京都世田谷区 写真提供:産経新聞社

公正取引委員会、楽天に立ち入り検査

大手通販サイト「楽天市場」を運営する楽天が、一定額以上の購入者への送料を出店者の負担で無料にする方針を決めた問題で、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いで楽天本社を立ち入り検査した。楽天は立ち入り検査を受けたことを認めた上で、「検査には全面的に協力する」とコメントしている。

森田耕次解説委員)楽天は2019年12月、1つの店舗で3980円以上購入した場合、3月18日から送料を一律無料にする方針を出店者に通知しておりました。これに対しておよそ450の出店者が加入する任意団体「楽天ユニオン」は1月、送料無料の強制は「優越的地位の乱用」を禁じた独占禁止法違反に当たるとして、公正取引委員会に調査を求める署名およそ4,000筆を提出しておりました。この問題で公正取引委員会は10日、独禁法違反の疑いで東京世田谷区の楽天本社を立ち入り検査しました。違反が確認された場合には、排除措置命令などの行政処分に踏み切ると見られておりますが、現在は経緯を調べている状況ですね。

野村)まず背景に、楽天市場には焦りがあるのです。それはなんと言っても、アマゾンなどのようなところが送料無料を打ち出しているからです。アマゾンではある一定の金額以上は送料無料ですし、一定の金額を払って会員になれば、どんな金額でも無料というのが消費者の心を打っています。楽天市場の場合、どうしても出店しているお店ごとにバラバラなので、そこがうまく伝わらないという焦りがあります。

森田)アマゾンは独自の倉庫や配送網も持っているようですものね。楽天はこれからそういった物流網を組み立てようという状況だったようですものね。

野村)アマゾンは戦略が変わっていまして、ロジスティクスと言っているのですが、物流について取ったところが勝つという考えに変わっているのです。だから、ビッグデータをAIで分析して、お客さんが買う前からだいたいこのくらいの注文がくるということを把握しているのですよ。そして、お客さんの家の近くまで運んであるのです。だから、非常に短い距離で短時間のうちに運べるようになっているのです。圧倒的に力が強いわけですよ。

森田)国内利用者を見るとアマゾンが5,004万人で楽天が4,804万人だから、利用者の数を見ると接戦で激しい競争になっているのですね。

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本社(楽天クリムゾンハウス)(楽天モバイル(企業)-Wikipediaより

独占禁止法について野村氏が解説〜両者の主張

野村)だから、これからは物流部門が勝敗を分けると見ているのです。一方で、出店者の方が独占禁止法違反だと言っているわけですよ。この独占禁止法違反のなかには優越的地位を乱用してはいけないというルールがありまして、それはある継続的な取引をしている人が、その継続的な取引をやめると自分の仕事に大きな支障をきたしてしまう。だから相当な無理難題で著しく不利だとわかっているのだけれど、その要請を受け入れざるを得ない状況にあったときには優越的地位の乱用になるという基準で考えることになっているのです。条文自体は独占禁止法に書いてあるのですが、公正取引委員会はガイドラインを示していて、この判断基準を細かく示しています。そのなかでポイントとなるのは、まずは結局のところ優越的地位があるかどうかということについての判断基準がいくつかあって、どれくらいの依存度、そこから抜けたら仕事をやっていけないという強い関係性があるかどうか。特に、取引先を変えることができないくらいの抜き差しならぬ関係になっているということが言えるかどうかということがポイントになります。

恐らく楽天側は「嫌なら別のところへ変えていいですよ」と言っているのだと思います。「取引は自由なのだから、強要しているわけではありません」というのが主張だと思うのですが、そこを公正取引委員会がどう見るのか。ここが1つの大きなポイントになります。もう1つの大きなポイントは、正常な商慣習に照らして不当な要求だと言えるかどうか。要するに、優越的地位を乱用して不当な要求をしているかどうかがポイントです。そこで、この関係を抜けられないだろうと見込んで要らないものを売りつけたりするようなことがあれば、典型的な優越的地位の乱用になるのですが、今回楽天側は「送料を無料にすることが経済的に負担なのだったら、値段を上げてもらってもいいですよ」と言っていると思うのですよ。もともと送料込みではなかったときの値段で売っているのですから、送料込みの値段にしても競争上不利になるわけではないので、見た感じ値上がりしていてもそういうやり方もある、ということを言っているでしょう。ここをまたどう見るのか。この要求が業者にとって極めて不当な要求なのか、それとも業者には逃げ道があるのか。その辺りも判断の材料になると思います。

森田)「別のところでもどうぞ」「値段を上げてもいいですよ」と言っていると。

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三木谷浩史 - Wikipediaより

楽天側「時期をずらす予定はない」

野村)「別に不利ではない」というのが楽天側の主張です。しかし、業者側としてはそうはいかない。送料無料と言ったら、いままでの値段を据え置きで送料がサービスになるように聞こえるじゃないですか。そうなれば、結局そうなればその値段を吸収するのは自分たちです。自分たちの売り上げを割いて送料を負担することによって、結果的には楽天市場の繁栄のために自分たちが不当な要求を呑まざるを得なくなっているのだということを言っているので、それぞれものの見え方が立場によって違うわけです。これを、どちらの主張が正しいかということを見極めていくのが公正取引委員会の調査の状況ということだと思います。

森田)三木谷会長は「公正取引委員会と対峙してでも送料無料を実行する」と言っていますが、3月からの実行の前に立ち入り検査の結果は出るわけですか?

野村)これはケースバイケースでわからないです。ユニオンの方々は上げる前に決着をつけて欲しい旨を要望しています。それに対して楽天市場は規定路線でいくということで、調査によって時期をずらす考えはないようです。 radikoのタイムフリーを聴く

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