「ヒーリングっど プリキュア」はここがすごい “3つの注目ポイント”から振り返る:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
「ヒーリングっど プリキュア」。僕の“こころの肉球”にキュンときました。
「ふたりでプリキュア」
「ヒーリングっど プリキュア」ではプリキュアと妖精の「ふたりでプリキュア」が描かれています。(第1話のタイトルが「手と手でキュン!二人でプリキュア・キュアグレース」であることに象徴されています。「・」はハートマーク)。
2004年「ふたりはプリキュア」から16年後、令和のプリキュアは、妖精と一緒に戦う「ふたりでプリキュア」なのです。シリーズ初、変身後の名乗りも妖精と2人で行います。「重なる二つの花 キュアグレース!」「ラビ!」。
今作の妖精3人(匹?)はプリキュアに庇護(ひご)される存在ではなく、プリキュアのパートナーとして一緒に変身し、一緒に戦うのです(庇護の対象となる犬型のラテ様もいますけどね)。変身時に「武器になった妖精」と一緒に会話しながら戦う、というのも良いアイデアで楽しいですよね。きっと子どもたちのプリキュアごっこでも楽しく会話をしているのでしょう。
東映アニメーションの安見香プロデューサーは、番組開始時にこんなコメントを出しています。
ときにぶつかり合い、ときに笑って想い合って、深まる<絆>
助けたい、力になりたいと思う<思いやり>
そして、どうしたいのか? を自分で考え、道を選んでいくことー
妖精とプリキュアたちの「絆」「思いやり」を通して「自分がどうなりたいのか? 自ら考え、道を選んでいくこと」を描くとしています。
そして、その「自ら考え道を選ぶこと」は番組開始と同時に描かれることとなりました。
なりたいから、プリキュアになる
今作のプリキュアは「プリキュアになっちゃった」ではなく、明確に「プリキュアになりたい」という意思の下に、プリキュアになるのも特徴の1つです。
医療現場でいうところの「インフォームド・コンセント」(説明を受け納得した上での同意)のような描写が見られます。彼女たちは意思表示をし、納得した上でプリキュアになっているのです。
実際に第1話、花寺のどかがキュアグレースへ初変身したときには、妖精ラビリンとこんな会話が繰り広げられました。
ラビリン「私はラビリン。あなた名前は?」
のどか「のどか……花寺のどか」
ラビリン「本当にあいつに立ち向かう勇気はあるラビ?」
のどか「この子を助けられるならいくらでも」
ラビリン「のどか、ラビリンと一緒にプリキュアになるラビ!」
―― ヒーリングっど プリキュア第1話より
まずは「お互いの名前を確認すること」「相手の意思を確認すること」「自分が提案できること」が妖精との会話でつづられます。
同様に第3話、沢泉ちゆが「キュアフォンテーヌ」に変身するときも、
ちゆ「怪物は私も怖いわ」
ペギタン「ペエ?」
ちゆ「でも、それ以上に大切なものを守りたいの。どうしても守りたいの。あなたは?」
ペギタン「守りたいペエ」
ちゆ「私はあなたより大きいから少しは力になれると思う。もし勇気が足りないのなら私のを分けてあげる。大丈夫、私がいるわ」
ペギタン「……」
ちゆ「私はちゆ。あなたは?」
ペギタン「ボク、ペギタン」
―― ヒーリングっど プリキュア第3話より
こちらはプリキュアになりたい人間側が妖精を説得する珍しい形でしたが、「自分も怪物は怖いこと」「守りたいものがあること」「自分がしてあげられること」「お互いの名前を確認すること」で妖精を説得し、沢泉ちゆはキュアフォンテーヌになりました。
2人の初変身で共通しているのは「自分の名前を名乗り、相手の名前を聞くこと」「自分ができることを告げること」「相手の意思を確認すること」。まずはお互いの名前を認識し、信頼関係を構築し、納得した上でプリキュアになっているのです。
「地球のお医者さん」がモチーフとなっている「ヒーリングっど プリキュア」で、一方的に「これが正しいからそうしろ」という医療パターナリズム(医療的父権主義)を振りかざすのではなく、現代医療の基礎でもある「インフォームド・コンセント」をうまく落とし込んでいるのは、作品テーマにも合致していてすてきだな、と思います。
「生きる」と「死ぬ」というワード
また、今作の1つの特徴としてプリキュアにしては珍しく「生」や「死」という単語を直接的に描いている、ということも挙げられます。
従来のプリキュアシリーズでは、敵組織の目的表現は「最悪の結末『バッドエンド』に導く」や「闇の力によって無に帰す」など、子ども向けアニメとしてやや濁してきた印象があります。しかし「ヒーリングっど プリキュア」では第2話で「ビョーゲンズ以外の命はどんどん弱って死んじゃう世界」と明確に「死んじゃう」という言葉を使いました。
同様に「生」という単語も使います。主人公の花寺のどかがよく口にする言葉は「ふわあ〜、生きているって感じ!」です。さらに第1話で、妖精ラビリンがメガビョーゲンに吹っ飛ばされたときに「おい、生きてるか?」というセリフもあったように「生きている」という単語も使われます。
プリキュアは「作中で使う単語」にとても気を使って製作されているアニメシリーズです。そんなプリキュアで「生きる」や「死ぬ」といった(いわば生々しい)単語を持ち込んだのは、偶然ではなく意図したものだと思われます(それはある意味画期的なことなのです)。
しかし、「地球のお医者さん」をモチーフにしている以上「生きる」や「死ぬ」を避けて通らなかったのは、製作者が子どもたちを信じているからこそだと思います。
さらに「生きる」「死ぬ」といったワードを決して重くならないように、妖精3人の楽しいコントや明るいキャラクター、優しい背景美術などで表現しているのもすてきなところだと思います。
ABCアニメーションの安井一成プロデューサーは、番組開始時のコメントとして「生きる」という根源的なテーマに向き合う、としています。
そして、今作のモチーフは「地球のお医者さん」。さまざまな命が共存共栄する地球を舞台に「生きる」という根源的なテーマに向き合います。この先、「生きる」ことにプリキュアがどのように向き合っていくのか楽しみですよね。
(病原菌は別にヒトを困らせようと思っているわけではなく、あっちはあっちで「生きる」ために繁殖したら結果として人が病気になっているのですし、そういった意味でビョーゲンズとも和解とかできるのかな……?)
「最幸の」癒やしのプリキュア
また、前述の東映アニメの安見プロデューサーはこんなコメントも出しています。
手を取り合って、心を重ねるのどか、ちゆ、ひなた、ラビリン、ペギタン、ニャトランと、特別な力を持ったラテ。ときにぶつかり合い、ときに笑って想い合って、深まる<絆>助けたい、力になりたいと思う<思いやり>そして、どうしたいのか?を自分で考え、道を選んでいくこと―
のどかたちを通して、お子さまたちが一緒に感じていけるような、優しくて、カッコいい、「最幸の」癒やしのプリキュアを描いて行けたらと思います。
「ヒーリングっど プリキュア」では優しくてカッコいい「最幸の」癒やしのプリキュアを描いていくとしています(「優しさ=カッコいい」は、キュアフォンテーヌ初変身の第2話できっちり描かれました)。
現状では、主人公の花寺のどかちゃんがやや危なっかしい印象があるので(自己を犠牲にして誰かを助けようとする)、そのあたり今後どのように描かれていくのかも楽しみです。
また、のどかちゃんと敵幹部ダルイゼンの関係も気になります。ダルイゼンの耳に、のどかちゃんと同じ花のモチーフっぽいものがあったり、「生きているって感じ」って言ってたりオープニングでも2人が対峙(たいじ)するシーンがあることなど「この2人何か因縁が?」みたいな妄想も膨らみ、この先の展開も、超期待なのです。
ここまでで、まだようやく第3話が終わったところです。ものすごい密度感です。そう、「ヒーリングっど プリキュア」はまだ始まったばかり。この先キュアスパークルも登場し3人になったとき、一体どんな物語が待ち構えているのか?
「ヒーリングっど プリキュア」が子どもたちに(そして大人たちにも)、どんな「最幸の癒やし」を見せてくれるのか、本当に楽しみなのです。
第1話、第2話が限定公開中
「ヒーリングっど プリキュア」第1話、第2話が「プリキュア公式YouTubeチャンネル」で期間限定で公開されています(2020年3月31日23:59まで)。TVerでは先週分の見逃し配信もあります。
「ヒーリングっど プリキュア」、1話1話の完成度がとにかくすごいので、見逃しちゃった方ぜひ一度見て! すっごいから。
「ヒーリングっど プリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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