4月17日から順次、「名探偵コナン」劇場版第1作〜第10作がさまざまなプラットフォームで無料配信されています。2日間ずつ交代での無料配信で、23日〜24日に配信されているのは第4作「瞳の中の暗殺者」(2000年公開)です。
コナンファンの赤いシャムネコさんに、同作のオススメポイントを極力ネタバレなしで聞きました。
初めてコナン映画を見るなら「瞳の中の暗殺者」
「金曜ロードSHOW!」でのファン投票企画で、1位に選ばれたことがあるほど、ファンからの支持が強い本作。コナンファン同士で劇場版コナンの話をしているとき、「天国へのカウントダウン」と並んで必ず挙がるタイトルです。私見ですが、コナンの全23作の映画史上、トップ3に入る“布石&回収の美しさ”。雰囲気まで含めれば、本格推理度ナンバーワンといっても過言ではありません。
扱われるのは“連続刑事射殺事件”。次々に狙われていく警視庁の人間。目暮警部や白鳥刑事といったおなじみの警察の面々の雰囲気はいつもよりもぐっとシリアスで、警察内部に犯人がいるのか――といった疑いも深まる中で、ついに犯人の魔の手が佐藤刑事に及びます。そしてその犯行現場を目撃した蘭が全ての記憶を失ってしまう事態に。唯一の目撃者となった蘭を執拗に狙う犯人。コナンは蘭を守り、犯人を見つけ出せるのか? ……という、「ザ・ミステリ」な筋書きです。
コナン映画の中でも、全体のトーンがかなり重く暗い本作。身近な人物が容赦なく狙われるというストーリーの緊迫感はもちろんですが、事件の背景にある過去のドラマもつらくて重い。雨や夜のシーンが多いので視覚的にも暗く、音楽も重厚感があり、シリアスさが目立つ映画になっています。
それだけだと「見ていて疲れるんじゃないかな」と思うところですが、そこはさすがコナン映画。事件の背景を段階的に明かしていく手際がうまく、次から次へと構図が変わっていくので、つい見入ってしまうこと間違いなしです。ふんだんにアクションや犯人との対決といった派手なシーンが盛り込まれている上に、コナンと蘭のラブロマンスの要素も純度の高い形で入っていて、見ていて疲れることはありません。
連続する不可解な難事件、見えない犯人との駆け引き、スピード感のあるアクションシーンに、映画全体を貫くコナンと蘭のラブロマンス。「瞳の中の暗殺者」は紛れもなく、“ザ・王道コナン映画”といってよいでしょう。
最高のクライマックス
本作は、一番「コナンが本気になる」話です。序盤からコナンの身近な人たちがどんどん攻撃されて、ついに最も大切な蘭の命が狙われるため、真剣さが桁違い。コナンだけではなく、小五郎や妃、園子、少年探偵団たちが蘭を守るために体を張り、それぞれに見せ場があります。
最後の犯人との“直接対決”の舞台が遊園地なのは憎い演出。遊園地といえば、工藤新一がコナンになるきっかけとなった、第1話「ジェットコースター殺人事件」の舞台ですね。そこにはもちろん、ストーリー上の必然性があります。加えて、アトラクションが次々と切り替わっていくことで、コナンが犯人とのチェイスを繰り広げるだけでも飽きない絵になっています。
ミステリ的には、トリックと映像ならではのヒント、そしてクライマックスの真相解明演出が素晴らしい……。トリック自体はそれだけ取り出したら他愛もないもので、漫画でも26巻(「命がけの生還」)で近いトリックが使われているのですが、この作品の真髄はその後にあります。
犯人に追い詰められ、逃げ場のない窮地に立たされたコナンと蘭。いったいどうやってこの形勢を逆転できるのかと思っていると……。明かされたトリックを最後の1ピースとして、序盤からの布石が全て一点に集約していき、完璧な突破口が開かれる。ミステリのトリックとストーリーを映像の次元でかつてないほど有機的に融合してみせた、コナン映画史上随一の鮮やかなシーンが待っています。
タイトルの「瞳の中の暗殺者」も、完璧に回収してくれて、拍手するほかありません。このシーンを踏まえた上で、冒頭の遊園地での蘭と新一の会話を見返してみてください。「だからこの話をしているのか!」と、何気ないセリフに隠された用意周到さに驚くはずです。
最後にどうしても言っておきたいのが、オープニングとラストシーン〜エンディングのかっこよさ! オープニングで注目してほしいのは、“容疑者たち”のバックに流れていく英語やローマ字のキーワードです。よく見ると「Happy Birthday」「願い事ひとつだけ」など、コナンアニメの歴代主題歌のタイトルなんです。あのころ、ビデオを一時停止して全てを書き留めていたコナンファンは全国に何万人もいたはず……。
そしてラストシーンは、「とある人物がコナンに敬意を示す」シビれるカットで締めくくられ、エンドロールに入っていきます。この入りの一枚絵は歴史に残る格好良さですね。エンディングテーマは小松未歩の「あなたがいるから」。物悲しいメロディに、クライマックスの舞台となった遊園地の実写映像を眺めながら、「なんだか大人な映画を見たな……」と満足感に浸れる作品です。
オススメ三作
- 天国へのカウントダウン……初期コナン映画の別な形での完成形。ぜひセットで
- 絶海の探偵(プライベート・アイ)……シリアスな大人たちの事件と、蘭を思う新一が描かれるラスト
- 純黒の悪夢(ナイトメア)……遊園地なのに観覧車は出てこないの!? と落胆した人に
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