東京都品川区のSameギャラリーで7月10日から19日まで、作品をどれでも持ち帰りできる展覧会「盗めるアート展(Stealable Art Exhibition)」が開催されます。
この展覧会では、国内外で活躍するアーティストの作品を展示。来場者が展示されている作品を自由に持ち帰りできるアート展です。当初は4月の開催を予定していましたが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大状況に配慮して開催延期になっていました。
会場は24時間無人で運営。中継や動画公開のための監視カメラを設置している以外に、セキュリティはありません。ギャラリーや美術館が持つ「守られた展示空間」を破壊するような挑戦的な企画です。
展覧会ではいくつかのルールを定めており、作品を持ち帰る人を「アート泥棒」と呼称した上で、「盗む作品は一組につき一点限り」に。具体例として、「キャッツアイ様の場合は3人で1点のみ泥棒可」や、「アート泥棒される際は、近隣のご迷惑にならないよう静かに、マナーのある泥棒行為をお願いします」など、泥棒をするための約束ごとを丁寧に掲示しています。
こうしたユニークな展覧会の背景について、Sameギャラリー責任者の長谷川踏太さんに聞きました。
まずSameギャラリーでは、以前から「見る側とアートとの接し方(距離感)をずらしてみる、実験的な試みをしたい」という考えを持っていたといいます。3月に行われたギャラリーのオープニングイベントでは来場者が自作や所持するアート作品を持ち込んで壁に飾る「Bring Your Own Art Party」も開催。アルコール飲料の持ち込みを許可するレストラン用語「Bring Your Own」に似せたユニークなイベントでした。
今回の一風変わった展覧会の着想も、「観覧や購入して帰るという体験以外に、違う体験を提供できるのではないか」と思索して得たものだといいます。
参加アーティストについては、企画の趣旨を分かってくれる「作品を盗まれたら喜びそうな人」から選出しており、写真家の五味彬さん、アート・ユニット「エキソニモ(exonemo)」などの名前が並んでいます。アーティスト側も企画趣旨を面白がっているようで、「盗まれる」ことをテーマに作品づくりを進めているとのこと。
また、長谷川さんにお気に入りの怪盗はいるかと尋ねてみたところ、次のような逸話を聞かせてくれました。
「怪盗ではないのですが、レンブラントの絵が盗まれた翌日、美術館がドロボウに対して、その絵の保管方法を記載した新聞広告を出したという話が好きです」(長谷川)
なお、「盗めるアート展」では作品が全てなくなったところで、展示は終了となります。
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