こんな風に人生を閉じたい 冬眠する小さな生き物の長老を描いた漫画に穏やかな気持ちになる(1/2 ページ)
こんなふうに「おやすみ」を告げたい。
春に向けて冬眠の準備をする生き物たちのなかで、ひっそりと一人すべてのものに“おやすみ”を告げる長老の姿を描いた漫画「冬のおやすみ」が、おだやかな眠りについて考えさせてくれます。
「冬のおやすみ」は漫画家の永田礼路(@nagatarj)さんによる、小さな生き物たちが冬眠に向かう様子を描いた漫画。目覚めて迎える春を楽しみにドタバタとはしゃぐ子どもたちの中に、「眠るのが怖い」と1人緊張気味な子どもの姿があります。長老のカトゥが話を聞くと「目が覚めなかったらどうしよう」と不安な気持ちを打ち明けました。
大人のように黙って眠れない子を、他の子どもたちは泣き虫だとからかいますが、カトゥは大人は鈍感だから怖さを忘れているだけだと説明します。春になれば大人が起こしてくれるから安心して眠ればいいと話すと、子どもの不安そうな表情は穏やかな笑顔に変わり、冬眠へ向かいました。
子どもたちを寝かしつけた後は大人もそのまま眠りにつきます。年長者のカトゥだけが一人、最後の戸締まりへ。長い冬眠は年寄りから体力を奪います。1歳上だった親友は今年、春が訪れても目を覚ましませんでした。
亡き親友のことを考えながら冬眠の仕上げをするなかで、仲間たちや友人の遺骨、家具や草花に“おやすみ”と言葉を投げかけていきます。これから訪れる春、自分はもう目覚めないかもしれないと感じながら、生きて目にしてきた季節におやすみと言い、最後に「おやすみ世界よ」と告げるおだやかな姿は、人生の最期すら感じさせます。
永田さんは、遺伝子操作が産業として発達した世界を舞台にした作品『螺旋じかけの海』も手がけています。人間と動物の境界に生きる人々の生活を通して、生きることについて考えさせられるSF作品で、今回の漫画「冬のおやすみ」と似た部分も。同作は現在、電子書籍がセール中となっています(5月17日まで)。
「ヒトの線引きからあぶれた生き物を好きにしていいのなら、私も私を好きに扱っていいだろう――?」 遺伝子操作が産業として発達し、人間であることの線引きを自由に操作することすら可能となった世界。水没した街の残骸で暮らす人々の中には、人間以外の動物の遺伝子を持つ「劣った」者が存在する。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多(おときた)。自身も何種もの異種遺伝子を抱え、自分を実験体にし続け生きる彼の元に、様々な事情を抱えた者たちが訪れる――。 「人間と他の生物を分かつものは何か」月刊アフタヌーンで不定期連載された読切連作、作者再編集によるデジタル新装版として配信(内容は2015年10月に配信された講談社版とほぼ同一です)
「僕らは皆 いつか死んだ誰かでできている――」遺伝子操作が産業として発達し、水没した街の残骸では人間以外の動物の遺伝子を持つ者が混在して暮らす世界。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多の元に様々な事情を抱えた者たちが訪れる――。寿命が迫る異種遺伝子キャリアが最後に残したいものはーー「花と揺れる嘘」。代々伝書鳩を操る異形の一族たちの矜持――「金色を渡る鳩」。急遽「出荷」が決まった食用人魚の行く末はーー「人魚が融ける指」。3編を収録。※現在配信中の版は、2016年12月に講談社から発行された単行本と同内容を作者により再編集したデジタル新装版になります。
「俺たちは誰も祝福などされていない 生きることは ただの呪いだ」遺伝子操作が産業として発達し、水没した街の残骸では人間以外の動物の遺伝子を持つ者が混在して暮らす世界。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多の元に様々な事情を抱えた者たちが訪れる――。死んだ祖父が少年に遺したペットは皆に疎まれるキメラ動物だった――「魔女の語る森」41P。音喜多の相棒・雪晴、その少年時代そして二人が出会うまで――「烏(からす)を屠(ほふ)る旅」91P。2編を収録。アフタヌーン掲載後単行本未収録だった「魔女の語る森」、描き下ろし長編「烏を屠る旅」作者私家版として、3年半ぶりの続刊!
※価格は記事掲載時点のもの
作品提供:永田礼路(@nagatarj)さん
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