日本で最も長い距離を走る定期旅客列車は東海道・山陽新幹線「のぞみ」(東京〜博多駅)です(2021年5月現在)。
東海道・山陽新幹線のぞみの営業距離は「1174.9キロ」、所要時間は約5時間です。近年は新幹線開業に伴う寝台列車の廃止などにより、最長距離列車の走行距離は短くなる傾向にあります。
それでは「世界の最長距離列車」は何かをご存じでしょうか?
世界のスーパー長距離列車と聞くと、ロシアの大地をひた走る「シベリア鉄道」(関連記事)を思い浮かべる方が多いかもしれません。シベリア鉄道はロシアのウラジオストクとモスクワ間を結ぶ世界最長の鉄道路線で、総距離は「約9300キロ」に及びます。
このウラジオストクとモスクワを結ぶシベリア鉄道の列車「ロシア号」が世界最長距離の列車かというと、実はそうではありません。(注:今回はコロナ禍前、2019年以前の情報を元にします)
正解は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌とモスクワを結ぶ列車です。
この列車の総距離はロシア号を上回る「1万キロ」を超えます。乗り通すには7泊以上(ひぇぇ!)の車内泊が必要な列車です。
この列車は、平壌を出発すると経済特区に指定されている羅先(らそん)を経由し、まずは朝ロ国境の豆満江、ハサンを目指します。北朝鮮の列車線路幅1435ミリに対し、ロシアは線路幅1520ミリ(関連記事)と異なるので、朝ロ国境付近で「台車を交換」して運行します。
なお羅津(らじん)〜ハサン間の線路は、線路幅1435ミリと1520ミリのどちらの車両も走れる四線軌道となっており、また年間1700万トンの輸送に対応した路線です。ウスリースクでシベリア鉄道と合流し、ウラジオストクからの列車と連結し、そのままモスクワへ向かいます。平壌発のためロシア号よりも走行距離が少し長いというわけですね。
(参考)北朝鮮のディーゼル機関車 Photo by Clay Gilliland
さて日本人も平壌〜モスクワ間を走る、この「世界最長距離列車」に乗車できるのでしょうか。原則として観光目的のみのツアー旅行となりますが、朝鮮民主主義人民共和国へも渡航はできます。
中国の旅行会社によると、平壌からこの列車の乗車は可能だが、ガイドの手配などの費用面を考慮するとツアー旅行が望ましいとのこと。また、この列車に限っては北朝鮮領内における車内外の写真撮影が完全禁止だそうです。実現のハードルはかなり高そうで、写真・動画撮影もできないとなると楽しみは半減かもしれません。
とはいってもシベリア鉄道を全線走破した筆者は、やはり次なる野望としてこの「世界最長距離列車の全線踏破」もいつかはチャレンジしたい。実現するのがいつ頃になるのかもいまは不透明ですが、気長に計画したいと思います。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める
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