2020年3月。フランスに留学中だった筆者は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックに直面。大学が休校になり、留学プログラムも中止になってしまいます。
外出制限が発令され、不要不急の外出が禁止になったフランス。急遽日本に帰国することを決断し、2日後の飛行機を予約した筆者は、無事に日本までたどり着くことができるのでしょうか?
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荷造りタイムアタック
ついに帰国の前日。朝起きると、不穏なメールが飛び込んできました。「予約便欠航のお知らせ」……昨日予約したばかりの飛行機のチケットが、航空会社側の都合でキャンセルになったというのです。もしかして、日本に帰れなくなるかも……!?
電話でサポートデスクに確認してみると「予約されていた便の搭乗者が少なすぎるため、次の便に振り替えることになりました。搭乗時間が遅くなりますが、ちゃんと日本行きの飛行機のお席を確保しています!」とのこと。ホッとしました。しかも、出発時間が遅くなるということは、それだけ荷造りの時間にも余裕を持てるということです。
気を取り直して荷造りを開始! 取捨選択が苦手な「捨てられない女」の私は、優先順位は度外視して、(1)とにかく身の回りのものをスーツケースに詰め込む、(2)重さを測りつつ調整していく、というがむしゃらな手順で荷物をまとめることにしました。
優先順位を度外視した結果、航空会社の規定を14キロもオーバーするという結果に……。駆け込みでスーパーで買い込んだお土産が「凶」と出たのでしょう。服や靴を捨てられるだけ捨てても4キロしか減りません。
これ以上捨てられるものはないし、いっそ私が飛行機に乗らなければいいのでは……? そんなことを考え始めたころ、空港で実際に重さを測るのは、預けるスーツケースだけだということに気がつきます。じゃあ、機内持ち込みの荷物(規定では10キロまで)を重くしちゃえばいいじゃない! と。そんなスレスレのグレーな発想で、はみ出た約10キロを機内持ち込みのリュックに移動。2つのスーツケースの重さは見事23キロにおさまりました!
しかしこの時の私は忘れていたのです。結局、その荷物を抱えて空港まで運ぶのは自分だということを。総重量60キロ以上の荷物をひきずって交通機関を乗り継いで行く辛さを知るのは、ちょっと先のお話です。
借り物返却ミッション
留学先で通っていたキリスト教教会のゴスペルクラブに所属していた私。発表会で着るローブを借りていたのですが、これを帰国する前に返却しておかなければいけません。
荷造りが終わったのが19時半。朝から何も食べていなかったので、「スーパーに食べ物を買いに行く」という名目で外出証明書を用意し、レンタルサイクルに乗って教会へ出かけました。
外出制限中の夜でも、ローヌ川沿いにはちらほらと人の姿が。警察が設置した侵入防止柵をものともせず、川辺でお酒を飲んでいる青年たち、カップル……。窓から大音量でヒップホップを流して、ブチアゲな部屋もありました。
そんな賑やかな区画の前を通っていた時、突然、全部の建物の窓から一斉に拍手が湧き起こりました。後から知ったのですが、夜20時ちょうどに、医療従事者への感謝の意を表して拍手するというキャンペーンが行われていたのでした。
やっとの思いでたどり着いた教会。しかし、鍵の暗証番号が分からずローブは返却できないままに……。この日は、おとなしくスーパーで夕飯を調達し帰宅しました。
フランス最後の夜
夕食後、同じ寮の友人(韓国出身・留学生)が部屋を訪ねてきてくれました。日本には持って帰れないけど、捨てるにはもったいない家電製品やお酒類などを引き取ってくれるというのです。そして「せっかくのお酒だから、一緒に飲もう」ということになり、ささやかな飲み会をしました。彼女とは「そのうちご飯でも食べに行こう!」と約束していたのですが、なかなか予定が合わず、コロナ禍で外出もできなくなってしまいました。これが、ゆっくり話す最後の機会だったのです。
今振り返ってみると、コロナ感染防止のためには、決して褒められた行動ではなかったと思います。ただ、その時の私は、体こそ動いていましたが、急激な変化に心がついていけず、やぶれかぶれだったのです。友人との明るい会話のエネルギーがなければ、正気を保っていられなかったでしょう。
友人と別れた深夜2時、最後のミッション「部屋の掃除」にとりかかります。荷造りの疲労、寝不足、飲酒などの要因が積み重なり「今立ち止まったら寝る! 寝たら飛行機逃す!」と確信。意識を保ち続けるために、日本の友人と通話しながら、ひたすら風呂場を掃除しました。
はたして、私は寝落ちせずに朝を迎えられるのか? 部屋は綺麗に原状回復できるのか? 飛行機はちゃんと飛ぶのか? 次回、最終回に続きます!
これまでの「帰国日記」
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