虚無っても記録だけは残しておくか…… 『動物パニック映画好きのための映画ノート』は手元に置いておきたい1冊:司書みさきの同人誌レビューノート
さくっとまとめて、次の1本に手を伸ばそう。
秋の夜長、読書も思索にふけるのも良いですね。そして最近は自宅に居ながらさまざまな映像作品が視聴できる環境になってきました。今回は映画をたくさん見たい人向けのノートです。
今回紹介する同人誌
『動物パニック映画好きのための映画ノート』A5 36ページ 表紙カラー・本文モノクロ
著者:かおルみずち
「あれ? 前にも見た気がする」を防ぐ映画ノート
こちらは映画を見た後に感想を書きとめるノートです。しかも「動物パニック映画」がお好きな方のために特化した専用になっています。
ノートですので本文は同じ内容のページが続きます。映画のタイトル、制作年といった基本的なデータの記入欄、あらすじを要約して残せる欄、また脚本やキャストについてはチャートでチェック、とさまざまな項目で映画鑑賞の記録を残すことができます。
疲労・脱力・気力切れでも記録を残すための親切設計
ただ記録を取るといっても、継続的に同じジャンルの記録を残そうとすると、実は“何の項目を用意しておくか”が重要なポイントになってくるんですよね。このノートでは「あっ、それ書いておくといいですよね」の押さえ方が、サメやワニなどの生き物が荒々しく力をふるう動物パニック映画を見てこられた方ならではの視点なんです。
星マークで評価できる欄は、生物と人物それぞれで「ヴィジュアル・性格」「武器・戦略」「喰い/喰われっぷり」などを5段階で記載できます。えっ……人類の性格に星1つしかないとか、人類の喰われっぷりが星5つとか、そういう例もあり得るってことでしょうか!? 普段は動物パニック系を見ない私は、もうこれだけでなんだか映画へのどきどきがはじまってきました。
該当にマルをつけるタイプの項目では、
ジャケットの生物は…いた・いない・似たようなのがいた・詐欺だ!
と、最初の印象とのギャップを記すことができます。動物パニック映画では動物が大事な役ですから、時にイメージが先行しすぎて、ポスターや作品のジャケットでは雄々しくデフォルメされすぎていることもあるんでしょうね……とはいえ詐欺だ! というレベルの作品に当たってしまったときに、しっかり書き残しておきたくなる気持ちを細やかに察した問いかけではないでしょうか。
ノートの表紙には、
「映画を見終わって疲労・脱力・気力切れ等で力尽きていても、最低限作品名と鑑賞日さえ書いておけば鑑賞の記録をとかチェックで残しておけるノート」
と書いてあります。映画を見終わった後に「疲労・脱力・気力切れ」がままあるかもしれないという心遣いは、ジャンルを愛し向き合ってきた経験がにじみ出ていて、なんとも味わい深い一言です。
31本の記録と向き合う楽しみを目指して
手にしたばかりのノートにはまだ何も記されていません。けれど個性的な記入欄を見ていると「あの映画をどう評しようかな」と頭に浮かんでくるものがあります。また、映画を見た後で、友人と作品についておしゃべりしていると思わぬ核心に気付いた経験も思い出しました。作品を見たあとの心のざわめき、もやもやを言語化すると発見につながることがあります。このノートはジャンルのことを知る友人と会話するように、アウトプットを助けてくれるように思います。
記入できるページは31枚。31の作品をこのノートに収めることができます。ダイナミックな動物パニック映画のわくわくも、もしかしたら時々あるかもしれないがっかりも、記録すればなかなかいい思い出になって、明日のあなたを助けてくれるかも……!
今週の余談
感想ノートの個性的な項目に、他の方がどんな風に作品を評されたか、照らし合わせて眺めてみるのも楽しそう! なんて想像しましたよー。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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