浴場を専門とする古代ローマの建築技師ルシウス・モデストゥスが現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化を学んでいくコメディー『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』がNetflixシリーズとして2022年3月28日(月)より全世界独占配信。
原作は、『コミックビーム』で2008年から2013年まで連載されたヤマザキマリさんの漫画。書店員の選ぶマンガ大賞2010や第14回・手塚治虫文化賞短編賞を受賞し、2012年1月にフジテレビ系「ノイタミナ」枠でフラッシュアニメが放送されると、同年4月には俳優の阿部寛さん主演で映画化され、2014年には映画第2作も公開されました。
今回、新作エピソードを含めた『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』の配信を記念し、ヤマザキさんに作品の魅力や今後の展望を聞きました。
『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』のルシウスはおちゃめ感が増してる
ーー 主人公・ルシウスを演じた津田健次郎さんの演技にどのような印象を持ちましたか?
ヤマザキマリ(以下、ヤマザキ) 今回、津田さんが声を吹き込んだルシウスは、これまでの作品とは全く違う。おちゃめ感が増しています。現代の若者たちがより感情移入しやすい感じに仕上がっています。
ーー ルシウスは面白い存在ですか?
ヤマザキ そうですね。一筋縄じゃない。人の顔色を見ながら忖度で生きている人ではないので、そういう人を描くのは面白い。私が描く漫画はそういうキャラクターばかりですが、精神科医からは「ヤマザキさんが書く人は全員マイペースな変わりものばかりですね」と言われます。
そういう人たちは社会性を持てないので、足並みを乱すものとして嫌がられる。でも、そういう人たちがいなかったら文化は発達していかないし、テクノロジーも進化しないと思います。
ーー 『テルマエ・ロマエ』がこれほど長く愛されるシリーズになるとは思っていましたか?
ヤマザキ 全く思っていませんでした。最初メジャーな漫画誌に持っていったら、「こんなニッチな漫画は誰も読まない」と言われました。それで、『コミックビーム』に持っていったら、編集者が喜んでくれて連載の運びとなった。漫画も売れないと思って少数部数で発行してみたところ、あっという間に売り切れたけれど、私にはその理由がさっぱり分からない。自国のありきたりの文化を俯瞰で再認識する面白さみたいなのがあったのかもしれませんね。
ーー 『テルマエ・ロマエ』はヤマザキさんの人生において、どのような位置付けでしょうか?
ヤマザキ 人生を変えた作品です。私には漫画家になるつもりなど全くありませんでした。ただ子どもを育てる上で、絵が商売になるのはなんだろうと考え、漫画に行き着いた。とはいえ漫画だけでは食べていけないから何足ものわらじを履いた生活がありました。「テルマエ・ロマエ」は当時暮らしていたポルトガルで子どもの服にアイロンがけをしているときに、昭和の銭湯にローマ人がでてくるという単純な発想が浮かんできました。
ーー 日本のお風呂文化がローマ帝国の繁栄につながることを感じ、裏テーマがあったのではないかと思いました。
ヤマザキ 考えすぎです(笑)。人間というのはもともと羊水っていうおなかの温かい水につかっているところから出てくる。お湯に浸かっていれば誰でも心身癒されて、凶暴な気持ちになどならないはず。お湯のありがたみを再認識してもらいたいという思いが「テルマエ・ロマエ」にはあります。
現在はイタリアと日本を行き来している生活
ヤマザキ先生はミッションスクールに通っていた14歳のときに1カ月間ドイツとフランスを一人旅。17歳で単身イタリアへ渡り、フィレンツェのイタリア国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で美術史と油絵を専攻。在住時に男児を出産。
ーー 波乱万丈の人生を歩んでいますが、最も影響を受けた作品は?
ヤマザキ 水木しげる先生、そしてつげ義春先生の一連の作品でしょうか。私がイタリア留学していた美術学校で、『河童の三平』やつげ先生の短編集を読んで衝撃を受けました。
ーー 『テルマエ・ロマエ』の今後について教えてください
ヤマザキ まだまだ広がりそうな感じはしています。もっと日本で起きている出来事を盛り込みたかったですが、今回は話数の関係でできなかったので、次回書くかもしれません。
ーー イタリア人の夫・ベッピーノさんは「ローマ皇帝の名前を全員言えるほどの古代ローマおたく」と伺っています。『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』の全世界独自配信が決定し、会話のなかで印象に残っていることはありますか?
ヤマザキ 夫は「いまだにあの漫画って読まれているの?」みたいなことを言いますが、『テルマエ・ロマエ』というタイトルは旦那と考えました。日本で“テルマエ”と言うとどんな意味か通じるようになったっていうと驚きます。私に助言はしないけど楽しんで見ている部分はあると思います。
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これは楽しみ。