ペルシャ人と名乗ってしまったユダヤ人vsナチ将校! ウソのペルシャ語を教え続けなければ処刑されてしまうサスペンス映画「ペルシャン・レッスン」レビュー(1/2 ページ)
創ることよりも覚えることに必死。
ロシア・ドイツ・ベラルーシ合作の映画「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」が11月11日より劇場公開されている。
タイトルやポスターからお堅い歴史ものや戦争ものの印象を持つかもしれないが、実はブラックコメディー的な奇抜な設定で展開する、ハラハラドキドキのサスペンスとしても大いに楽しめる内容。しかも部分的かつ間接的ではあるが「実話」もベースになっているという意欲作ともなっている。
覚えるほうが大変な命懸けのウソっぱち単語レッスン
本作のあらすじを簡単に紹介すると、「ユダヤ人の青年がペルシャ人と偽って処刑を逃れたものの、ナチス将校からペルシャ語を教えてくれと頼まれてしまい、ウソの単語ばかりの適当ペルシャ語を教え続ける」というものだ。
初めこそ、ウソの単語を適当に考えて教えればよかったのだが、それは「一時凌ぎ」にすぎない。なぜなら、この将校は思いのほか優秀な生徒であり、前回覚えた単語を正確におさらいし、さらには文章まで話せるようになっていくのだ。
つまり、デタラメなペルシャ語を教えるこちらも、その単語を次回も覚えていなければ、ウソであることがバレてしまうというわけだ。しかもこの将校、ナチスらしい支配的かつ独善的な価値観に染まっていて、「この世で最も憎むのはウソつきと泥棒だ」「恥をかかせるなよ。ウソだと分かればお前を殺す」と笑えないマジの脅しをかけてくる。まさに「命懸けのウソっぱち単語レッスン」が幕を開けるというわけである。
では、「創作するのは簡単だが、覚えておくのは大変」なウソっぱちの単語を、主人公はどのように授業で提示していくのか……? ネタバレになるので秘密にしておくが、その方法は「なるほど、全てが制限された収容所の中で、そんなやり方があったのか!」と膝を打つものだった。実際の勉強にはまったく使えないだろうが、そのように知恵を振り絞る様がエンターテインメントとして面白い。
ちなみに、案の定というべきか、この将校がブチギレてしまう一幕もある。その時の主人公のミスは「気が抜ければやってしまいそうなもの」で笑うに笑えないが、そこからのリカバリーの仕方が「なるほど! めっちゃ頭がいいなこの人!」と拍手をしたくなるほどに納得できるものだった。一見すると弱々しく頼りないが、実は聡明で機転が効きまくる主人公を、誰もが応援したくなるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 過激派ヴィーガンをハムに加工して売るヤバいフランス映画「ヴィーガンズ・ハム」レビュー
マウント取り放題の知り合い夫婦も最悪(褒め言葉)だった。 - さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー
性別の違いはささいなことである。 - インド版「ドラゴン桜」かと思ったら殺し屋との受験戦争(物理)が勃発する映画「スーパー30」レビュー
これでも実話が9割。 - 高級レストランの地獄のような裏側をワンカット90分で煮込んで沸騰させた映画「ボイリング・ポイント」レビュー
労働環境と人間関係の問題を正面から切り取った映画。