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サメ映画ばかり翻訳している謎の映画研究家インタビュー 好きが高じて未経験からプロのサメ映画バイヤーに(1/3 ページ)

ディープすぎるサメ映画の世界。

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 冬の寒さが過ぎ去り、春の暖かさに気づいた頃には、奴らが蠢(うごめ)きやってくる。2023年もサメ映画の進化は止まらない。変革を続けるサメ映画について存分に語ってもらうべく、さまざまな場所で活躍する「謎のサメ映画研究家」サメ映画ルーキーさんをお呼びした。そもそもの活動のきっかけからそのパーソナリティーまで、たっぷりと語っていただいた。

サメ映画ルーキー

サメ映画ルーキー

やばいサメ映画をいち早く見つけてきてはTwitterで布教したりする怪人物。サメ映画専門のバイヤー兼翻訳家。『(ほぼ)月刊サメ映画』編集長。日本サメ映画学会会長。ねとらぼでもたまにサメ映画の紹介記事を書いてくれている。



謎のサメ映画研究家 サメ映画ルーキー

――本日はよろしくお願いいたします。サメ映画、今年も何かと話題が尽きないジャンルです。インターネットの人は全員サメが好きということもありまして。

サメ映画ルーキー そんなことはないでしょう(笑)

――好きということもありましてですね、Twitter上で異彩を放つサメ映画紹介アカウントの「サメ映画ルーキー」さん。ライターとして記事の執筆やAbemaTV「声優と夜あそび」への出演、またさまざまなサメ映画イベントを主催・登壇されていたりと大活躍です。

 ただ分かる人には分かるけれど、一体この人何者なんだろう? という方もたくさんいらっしゃると思いますので、今回は順を追って、サメ映画との出会いや、今やられていることなどお聞きしていきたいと思います。

サメ映画ルーキー よろしくお願いします。

――最初に私とルーキーさんの出会いになるんですが、5年ほど前に春の東京国際サメ映画祭2018※、というイベントがありまして。そちらに一般参加者としてご来場されていたと思いますが、その時はもうサメ映画にどっぷり……という状態だったのでしょうか。

※2017年の第0回から定期的に行われているイベント。「春の〜」は新宿ロフトプラスワンで開催。新作サメ映画のトレイラー上映に加え、「JAWS IN JAPAN」製作陣インタビューなどのトークイベント、サメ映画クイズ大会を実施。聞き手とルーキーさんはペーパーテスト上位通過者として早押しクイズに参加した。

サメ映画ルーキー いえ、全然そんなことなくて。その2018年の「映画祭」がサメ関連のイベントに顔を出すのが初めてでした。イベントの数カ月前にたまたまサメ映画を見始めて、あ、こんなイベントあるんだ! 行ってみよう! となりました。

 イベントが5月だったので、3月かな? その頃から見始めたので、それこそ当時は本当に「ルーキー」だったんです。当時は大学院で政治学を専攻していまして、国際紛争とか軍事クーデターに関してとか、その辺りを勉強していました。そして勉強のかたわら、たまたまプライムビデオで何か面白そうなのないかな? とさまよっていたら、「シャーケンシュタイン」※に出会いまして。

※当時のタイトルは「フランケンジョーズ」。ジャケットのメカメカしさとは似ても似つかない改造ザメが、雷の直撃を受けて脚まで生やす。よく見るとサメの周りに切り抜きの跡が見える。監督の他の作品に「エイリアンVSジョーズ」「ビッグフットVSゾンビ」など。

――よりによってマーク・ポロニア作品。上級者向けの劇薬だと思います。

サメ映画ルーキー そこで見たあの衝撃のビジュアルですよね。「こ、こんな世界が広がっていたのか……」と思ったのが最初のきっかけです。それで一本見終えたところ、もう似たような作品でサジェストがワーっと埋め尽くされて。結構凝り性なので、じゃあ全部見ようかと。というようなところからサメ人生が始まりました。

画像は「シャーケンシュタイン」より

――珍しいタイプの入り方のような気がします。今サメ映画が好きな方って、例えばB級パニック映画がすごい好きな方とか、あるいはレンタルビデオ店でジャケットにだまされてしまった方、町山智浩さんのラジオや知的風ハット※さんの動画から入った方が多い気がしますが、そういうルートでもないんですね。

※サメ映画ライター・動画投稿者。ニコニコ動画での「ゆっくりサメ映画レビュー」などの投稿を経て、映画ライターとしてさまざまな活動を行う。単著に『サメ映画大全』(左右社)。

サメ映画ルーキー  昔から映画自体は見ていましたけど、例えばその時好きだったのは80年代・90年代の作品でいえば「コマンドー」「ランボー」「エイリアン」とか。特別ハマっていたというわけではなくて、同じ世代の人と同じようにテレビで流れていたものを見ていたと思います。

――それが「シャーケンシュタイン」で変わってしまったわけですね。罪深い作品です。現在はお仕事などは何をされているんでしょうか?

サメ映画ルーキー 今は映画配給会社のコンマビジョンと一緒に仕事をしています。そこでサメ映画の買い付けや配給、日本向けのローカライズ、宣伝を行ったり、サメ関連の映画イベントを主催したりと。それこそシャーケンシュタインで人生が変わってしまいました。

 当初はボランティアのような形で海外メーカーの監督と連絡を取って「日本語の字幕作るよ!」というようなことをやっていたらですね、今の会社で「大々的にサメ映画をやっていこうと思う」という方針がちょうどできたらしく、それで僕に声がかかり。フリーランスとして翻訳・字幕のお仕事などを受けていたらいつの間にか社員になっていたという感じです。

――字幕を手掛けられているんですね。もともと翻訳の経験などはあったのでしょうか?

サメ映画ルーキー 学生からフリーランスですので当然経験があるはずもなく、師匠などがいるでもなく手探りでした。そんな状況で初めて字幕を担当したのが「コマンドーシャーク 地獄の殺人サメ部隊」です。これは個人輸入で作品を鑑賞し、監督に直談判して日本配信にこぎつけました。

 印象に残っているのは、字幕には日本独自のルールが結構あるところですね。日本って翻訳の文化がすごく発達していて。それもあって「読みやすい字幕とは」というのを先人たちが頑張って考えていて、例えば一秒間に出すのは4文字まで。斜体・ルビはこんな感じに使い分けるというのが結構決まってるんですね。1本あたりにかかる時間は長くて20時間くらいかな?  全体としてはそこまで苦労はしていないですが、いい表現を絞り出すのはやっぱり考えますね。

――サメ映画字幕界の伝説の名字幕といえば「イケメンは死なない」※があるかと思いますが、自分自身で「これは決まった!」と思う翻訳はありますか?

※B級映画の帝王ロジャー・コーマン製作の映画「シャークトパスVSプテラクーダ」作中セリフの日本語字幕。英語でのセリフは“I’m too handsome to die”。イケメンはこのあとすぐ死ぬ。

サメ映画ルーキー やはりダジャレですね。英語表現と引っ掛けた部分の翻訳はかなり考えています。「コマンドーシャーク」でいえば、ソヴィエト軍のサメ人間に対して“It’s time to fin-nish!”(フィニッシュと「フィン」=ヒレをかけている)という決めぜりふを言うわけですが。そこに関して“年貢のおサメ時だ!”を捻り出したんですよ。もう僕、すごい気持ちよくて。日本語だったらこの訳以外にはないだろうと思いました。

――これまで手掛けられた作品群を拝見していますが、「エイリアンVSジョーズ」「シャーコーン!呪いのモロコシ鮫」「ウィジャ・シャーク 霊界サメ大戦」……どれもこれも猛者ぞろいです。このような作品はどちらから見つけてくるんでしょうか?

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