装丁……本の形や紙、デザインって気になりますか? すてきな内容が、装丁によってますます魅力的に見えてくることってありますね。今回は装丁に着目した同人誌です。
今回紹介する同人誌
『へんな本作り続けて10周年』A5横 52ページ 表紙・本文カラー
著者:シロジクロエ
本づくりの全部を楽しみたい! 特殊装丁をDIYしてきた同人誌を紹介
こちらのご本を作られたサークルさんは「変わった装丁の本を作りたい」というのをきっかけに、「字を担当」「絵を担当」のお2人で活動されているそうです。同人誌制作にあたり、まずは完成形の見た目やデザイン、コンセプトから着想されることも多いのだとか。
このご本はご自身たちで作られてきたこだわりの同人誌を振り返り、解説する内容です。実は“自作本の解説同人誌”を作成されるのは2度目で、今回はご自身たちがメインの作品からアンソロジーまで、10年間のサークル活動のうち、2017年から2023年に発行された14冊を紹介されています。
紹介される同人誌は、表紙の一部に穴が開いていたり、赤い糸を切らないと読めない仕掛けになっていたり……細工が施されたものが多々あるのですが、それらを支えているのは、なんとご本人たちの手わざ。表紙をカットしたり、付属のしおりを作ったりを自分たちでやってしまうDIYパワーで美しく彩られた同人誌が並びます。
こだわりポイントを自力で賄う既製品と手作りの調和
例えば、格子窓のように透けて見えるページ、主人公の名前にちなんだモチーフがついたしおり……そういうこだわりどころ、知るだけでわくわくしてきます。本の表紙、使った素材や道具の画像と、サークル内でのやりとりを踏まえた文章が全ページカラーで載っており、作り手さんたちによる「こんな意図を込めて制作したのですよ」という解説に楽しく先を読むことができます。
仕掛けのある本って憧れますが、それなりに多くの方に手に取ってもらいたいと思ったら、ある程度の量産を考えなければなりません。このご本では、同人誌本体は印刷所に発注し、表紙の切り抜きや貼り付けの部分を自分たちやお友達の皆さんと一緒に行うなど、既製の作成と手仕事の部分をとても上手に組み合わされているのが印象的です。
完成までの工程は工作の手法を知るのと同時に、どうやって思い付きを美しい完成形に落とし込むかの考え方の軌跡でもあると思いました。特にこちらのサークルさんは、誰かに手に取って読んでもらうところまで含めての“完成形”で、そこまでを見据えていらっしゃるからこそ、より多くの方に届くよう、うまくポイントを押さえたDIYをされているように感じました。
自分たちで決めていく同人誌の楽しさ
それなのに、紹介の終盤にはなんと全然DIYしないご本も登場します。DIYした新作が並ばなくなった背景には、単純にしめきりまでに時間がなかったことや、コロナ禍や物価高などの環境の変化もあったとつづられます。けれど、印刷所から届けられたまま、カットも貼り付けも自分で行わない本に「いいじゃん『普通の同人誌』…」と思われた気持ちが記されていました。これって、とても大事なことですね。
同人誌って、全てを自分で決定できるからこそ“こうしなきゃならない”と変な気負いや思い込みにとらわれてしまうのも簡単だったりします。でも、どんな本を作りたいのかを考え、時にこれまでの固定路線から変化をつけながら、柔軟な対応を楽しんで選び取っていく。そんな姿に創作の喜びをご本から感じました。
サークル情報
サークル名:アールワークス
Twitter:@4696rwks
note:https://note.com/shiro_rwks
pictSPACE:https://pictspace.net/rwks
入手できる場所:BOOTH
今週の余談
同人誌を手作業で制作するのって、ほんっとに楽しいですよねぇ! かくいう私も、コピー本をリボンで留めたことがあります。ただ、量産と保存がポイントになってきますね……。手作業の量産は「時間」「クオリティー」そして「飽き」が問題になってくると思っています。そして紙のものに手を加えると、壊れやすくなったり、引っかかりができたりするのも難しいところです……。装丁に華奢(かしゃ)な部分ができたり、付属品がある場合は袋に入れたり、と実務の部分も書かれていたのもとても参考になりました!
みさき紹介文
公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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