若者世代を中心に「かわいい」「エモい」とじわじわ人気な「ネオン」。新しくオープンしたカフェや飲食店の店先などでもよく見かける一方で、昔ながらの大きなネオン看板などはどんどん失われています。
実はネオンは「絶滅危惧種」。看板広告としてのネオンの地位はLEDに取って代わられていて、日本で現在、現役でネオンを作ってる人は50人くらいしかいないのだそうです。
そんな絶滅危惧種のネオンが“楽器”になると、ネオン看板などを手がけるアオイネオンの事業企画部長で、大ネオン展プロデューサーでもある荻野隆さんから筆者のもとに連絡が来ました。……なんて?
ネオンは音が鳴るようには作られてないと思うけどもどういうこと……? せっかくなのでお披露目の日に見に行きました。
ネオン笛のお披露目へ
ネオン笛のお披露目が行われたのは、2024年1月10日から2月4日までの期間で行われていた(会期は終了しています)、「大ネオン展‐FIND NEW WAVE‐」内の「電磁楽器×ネオン」イベントです。
イベントには実際にネオンを弾くアーティストである和田永さん、サイバーアーティストのサイバーおかん、前述の荻野さんが登壇し、寒い日でしたがあたたかいネオンの光と会場の熱気でほっかほかでした。
和田永さんは「エレクトロニコス・ファンタスティコス!(通称ニコス)」という電磁楽器プロジェクトを2015年に立ち上げて活動しています。
ニコスはブラウン管、扇風機、エアコン、ラジオ、ビデオカメラといった普通は楽器としては使われない、古い電化製品を電磁楽器へと蘇生させオーケストラを形作るプロジェクトです。実際に見てもらいましょう。
ニコスは参加型のプロジェクトとしていろんな人を巻き込みながら、現在は100人近いメンバーが日夜いろんな家電や電化製品を電磁楽器に変えているのだそうです。今回のイベントのDJセッションでは、ニコスとしての参加。そしてはじめて聞くネオンの声は……。
これがネオンの声……! サイバーおかんのDJに合わせて、どこか寂しくも力強い不思議な音色がネオン管から鳴っていました。
普通はあんまり楽器って光らないけど、ネオン笛は光るから最高だな。
ネオン管は、ガスを電気で放電させることで光っています。そこにラジオを近づけることで音が鳴り、ガラス管の上にも電気が流れているので、人が触るとまたラジオから鳴る音が変化する……という感じで、和田さんの言葉を借りると、「ネオン管と濃厚接触することで奏でる楽器」なのです。
和田さんの言葉で印象に残ったのが、「ネオンって生き物というか、気持ちがあるんじゃないかと思います」ということ。どういうこと!?
「自分とネオン管とが一体にならないと演奏できないんです。ネオンに送られた電気が、自分の体に流れることで音が変わるので、自分の神経と、ネオン管が電気的につながるような感じ。なので、ネオンと対話して、自分自身がネオンになった気持ちでやらないといけないんじゃないかなと思って」(和田さん)
その発言を横で聞いていた大ネオン展プロデューサーの荻野さんは、「あーネオンに選ばれし者ですよ」とつぶやいていました。
イベントでは、荻野さんの無茶ぶりで、和田さんが音が出るようには作られていないギターの形のネオンを弾く(準備時間は開幕前の約1時間)一幕も。
ネオン笛とはまた違う、粗削りな音色が奏でられていました。ネオン界のテノールとかバスかな?
ニコスは、使われなくなった家電の声をシャーマン的に、シャーマニックテクノロジーで家電の声を拾うような活動。廃れゆく技術であるネオンとも相性がいいのでしょう。ともかく筆者はこの日、ネオン妖怪の声を聞いたのです。
ネオン笛はイベント時にはまだ試作段階。まずは「ネオン笛」として、ネオンの楽器としての可能性を追求していくとのこと。また、3月にはネオン笛を含めた電磁楽器が一堂に会するイベント「発電磁行列」があり、そこでまたネオン笛が見られるそうです! これからがさらに楽しみです。
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