第12回 現行モデルは打ち止めとなる「Google Glass」 メガネ型デバイスの今後は?:“ウェアラブル”の今(1/2 ページ)
ウェアラブルデバイスのある生活のさまざまな利点や問題点を予見させてくれたデバイス「Google Glass」のエクスプローラープログラムが終了する。Google Glassは、“実験”から次のステージへと移行する。
Google Glassはウェアラブルデバイスの時代の到来を、インパクトある形で我々に知らせてくれたデバイスだった。しかし、現在のエクスプローラープログラムは終了し、主導していたGoogle Xを卒業することになった。
Google Xは実験的プロジェクトを進める研究所的な機能を持っており、Google Glassのほかに自動運転車やスマートコンタクトレンズなどのプロジェクトがある。ここから離れて別の道を探る、というのがGoogle Glassの今後ということになった。
Google Glassの所属先は、Googleが買収したスマートホーム関連プロダクトを作る企業Nestの創業者、トニー・ファデル(Tony Fadell)氏の元へ入る。プロジェクトの主導は引き続き、アイビー・ロス(Ivy Ross)氏が担当し、ファデル氏はアドバイスなどを行うことになる。
ファデル氏はAppleでiPodの開発に重要な役割を果たし、その後Nestを創業した。人々とテクノロジーという視点での実績は、今後のGoogle Glassにとって重要な側面を育てていくことになるのではないだろうか。
“Glasshole”とGoogle Glassの法人利用
Google Glassのそのインパクトの強さ、極端さというキャラクターは、あらゆる意味で成功していた、と評価することができる。
Google Glassを所有している、あるいはかけて生活している人々を、マーケティング上の「イノベーター」「アーリーアダプター」だとすぐに見分けるアイコンになった。少なくとも、何が起きるか分からない製品に1500ドル出せる点で、テクノロジーに対する価値観は明確だったと言える。
その一方で、視界内にディスプレイがある様子、あるいはカメラが常に視線と同じ位置に向けられていることは、社会の中ではあまり受け入れられない、ということも分かった。
情報を見ている人の視線は外からはうつろに見える。またカメラは録画しているかどうか分からないため、いつの間にか撮影されていた、ということも起こりえる。ハンズフリーの裏返しで、行動に明示性がない部分への社会的“慣れ”が必要であることも、あぶり出すことに成功した。
その結果が、「Glasshole」という造語であろう。Google Glassと「asshole(馬鹿野郎)」という単語を、まさにかけているわけだ。
一方、本連載でも以前紹介したが、法人利用の方が積極的に見える場面もあった。
例えばデータの可視化を消費者に分かりやすく伝える工夫としてカルチュア・コンビニエンス・クラブが代官山蔦屋書店で実験したことや、日本航空が地上職員や整備士に対してGoogle Glassを提供するなど、公共空間ではない場所での活用は、デバイスの特性を生かすことができる事例を見ることができた。
「頭」というウェアラブルのホットスポット
ウェアラブルデバイスは「Android Wear」や「Apple Watch」のように、あるいはスポーツトラッカーのように、腕からスタートするのが現実的だと思われている。
しかし一方で、Google Glassをかけていて「頭」に装着するデバイスは、ホットスポットであるとも感じた。
腕はやはり現代の作業上、どうしても邪魔になる瞬間が多い。まさにこの原稿を書いている筆者は、腕に何も装着したくないし、水回りでは防水が完璧軽ければならない。
その点、頭は多くの場面で邪魔にならないし、何らかの作業を阻害する可能性がより低い。そのかわり、左右のバランスの良さと軽さは重要な要素となり、Google Glassはデバイスの機能を右側に集めている点で、ちょっと疲れるデバイスだった。
本連載でも紹介した「JINS MEME」のほかに、例えばParrot「Zik」のスポーツモデル「Zik Sport」は、頭に装着することを前提としてセンサーを内蔵し、より正確に活動をトラッキングすることができる。メガネ、そしてイヤホンとして十分に軽く作られており、違和感はない。
また、室内でしっかりと映像を見せるためのヘッドマウントディスプレイへの取り組みも広がっている。Google Glassは640×360ピクセル程度の解像度しかなかったが、フルHDの映像が楽しめるものや、「Oculus Rift」のように立体空間に埋没できる仕組みも存在している。
Google Glassの失敗は必ずしも、頭に装着するウェアラブルデバイス全体の失敗ではない、ということだ。
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