ゲームは競技?――世界最大のゲーム競技イベント「World Cyber Games2006」日本最終予選リポート
昨年、東京ゲームショウ会場行われた「World Cyber Games」日本予選。今年は会場を秋葉原UDX4Fの先端ナレッジフィールドに移し、さらに規模を拡大、9月2日〜3日に開催された。海外で定着しつつある「e-sports」は日本でどのように受け入れられているのか。
世界中のトップゲーマーが集うトーナメントイベント「World Cyber Games」
「World Cyber Games」(以下、WCG)とは、「“Beyond the Game”のスローガンのもと、言語・文化・人種の壁を超えて全世界の青少年が一堂に会し、平和と友情、興奮と感動を共有できる世界最大のe-Sportsイベント」(日本オフィシャルサイトより引用)である。毎年、世界各国で様々なゲームタイトルの予選を開催し、そこで選ばれた代表選手たちによる本戦が行われる。2000年に韓国でスタートして以来、本戦はサンフランシスコ、シンガポールなど、世界各国で開催されている。今年は、イタリアのF1発祥の地・モンツァで、来年はアメリカのシアトルで本戦が行われることが決定しており、現時点での予選開催国は70カ国、予選参加人数は150万人にものぼるという。
イベントの大きさもさることながら、その賞金規模にも目を見張るものがある。昨年、8タイトルで競われた賞金総額はなんと日本円にして4500万円。WCGは日本ではまだまだマイナーなイベントだが、昨年の大会では「DEAD OR ALIVE2 ULTIMATE」部門で、活忍犬選手が3年ぶりに日本人選手として優勝を果たし、賞金1万5000ドルを手に入れている。
WCGが始まって以来、競技に使用されるタイトルはPCゲームのみであったが、昨年からは家庭用ゲーム機Xboxのタイトル「DEAD OR ALIVE2 ULITIMATE」が、今年はXbox 360から格闘ゲームの「DEAD OR ALIVE4」とレースゲームの「PROJECT GOTHAM RACING3」が採用されている。採用タイトルは韓国の運営企業が選定していることもあり、日本ではなじみの薄いものや、そもそも日本で発売されていないものがチョイスされることも多い。今年の4月に、米国のマイクロソフトが3年間のプレミアスポンサーを務めるとの発表を行っていることから想像すると、おそらくソニーや任天堂ハードでのトーナメントが開催されることはしばらくの間なさそうである。
規模を拡大した日本予選、トーナメント開催タイトルも増加
昨年、東京ゲームショウで開催されたWCG2005日本予選は、今回場所を秋葉原UDX4Fにある、先端ナレッジフィールドに場を移して行われた。
日本予選は、試合会場を教室施設の「秋葉原アドバンストアカデミー」に設営し、選手と観客を完全に隔離した環境で大会は進行された。昨年の東京ゲームショウ会場では、選手と観客の位置が非常に近く、「CounterStrike」の選手から改善が要求されていたことから、今回はこういった形式で試合が行われることになった。通常、ゲーム大会といえば選手と観客は同じ空間で試合を楽しむもの、というイメージが強いが、CounterStrikeなど戦略性の高いゲームの場合は、中継映像や観客からの情報で勝敗が大きく変わってしまうこともあり、海外での大会はこういった形式をとることが多いという。
今回は観戦会場が500インチ以上の巨大スクリーンが設置されている「アキバ3Dシアター」と飲食を楽しみながら観戦が楽しめる「東京フードシアター5+1」に用意され、多くの人々が「日本最高クラスのゲームプレイ観戦」を楽しんでいた。
今年のWCG日本予選では、PCゲームから「CounterStrike1.6」、「スカっとゴルフパンヤ」が、家庭用ゲーム機からXbox 360の「DEAD OR ALIVE4」、「PROJECT GOTHAM RACING3」のトーナメントが2日間にわたって行われた。昨年よりも、トーナメント開催タイトルが増えていることを考えると、こういった競技イベントも徐々に定着しつつあるのかもしれない。
また、映画館入り口では、液晶モニターメーカーの「BenQ」や、Xbox 360で「BOMBERMAN Act:Zero」をリリースしたハドソン、ゲーマー向けヘッドフォンメーカー「ゼンハイザー」などがブースを出展し、選手や来場者へのプロモーションを行っていた。まだまだ市場は小さいとはいえ、試合に勝利することを第一義とするゲーマーたちに自社の製品をアピールするイベントは、メーカーにとっても有意なものなのだろう。
波乱? 順当? 代表選手11人が決定、日本にメダルを持ち帰ることはできるか
初日に開催されたレースゲーム部門「Project Gotham Racing3」は事前にオンラインでのタイムアタックの成績で選出された15人と、当日予選タイムアタックを通過した1人の計16人で、1vs1の個人戦トーナメントが行われた。今回のワールドルールでは、相手の車の接触判定をオフにし、1回戦、2回戦と試合ごとにコースを変えて進行。すべてのコースでいかに正確なライン取りを行うかが勝敗の分かれ目となった。優勝したのは、オンライン予選で2位通過を果たしたtaka選手。taka選手は、アーケードの格闘ゲームでも名を馳せているプレーヤー。格闘ゲームとレースゲームというまったく異なったジャンルで実績を残しているのは非常に珍しいのではないだろうか。
続いて、2日目は昨年のWCGからソフト、ハードともにバージョンが上がっている格闘ゲーム部門「DEAD OR ALIVE4」。注目されたのは昨年の日本予選優勝のコニダッシュ選手と、日本予選準優勝、WCG本戦で優勝の活忍犬選手の両名だが、コニダッシュ選手が1回戦負け、活忍犬選手も準決勝で敗退するなど波乱の展開となった。その中で、活忍犬選手を破り、落ち着いた試合運びで優勝をもぎ取ったのがハヤブサ使いの餅A選手。彼もtaka選手と同じく、アーケード格闘ゲームのトッププレーヤーの1人。日本のお家芸とも言える格闘ゲーム部門、2年連続でメダルを持ち帰ることができるか、注目のタイトルと言える。
そして、今年のWCG参考種目として採用されたのが「スカっとゴルフ パンヤ」。今回のWCG日本予選タイトルの中ではもっとも国内プレーヤー数が多いのでは、と思われるタイトルで、7月下旬から実施されたオンライン予選を勝ち抜いた精鋭プレイヤー14人で最終予選が競われた。数々のスーパーショットが繰り出される中、日本代表に選ばれたのは(おんぷ)もか選手、Chlorella.選手、ゆーき(てんし)選手、しゅーた選手。また、WCG本戦を前に韓国で開催される日韓交流戦には、上記の4選手に加え、TSURARA(ゆき)選手が選出された。短期間での海外連戦となるが、彼らの活躍に期待したい。
WCG日本予選でおなじみのFPS(一人称のシューティングゲーム)CounterStrike部門は、5vs5のチーム戦で行われた。今回は昨年採用された最新の「Source」バージョンではなく、人気のある「1.6」にバージョンを戻しての開催となった。
昨年の優勝チーム「4dN.PSYMIN」がスポンサーとの兼ね合いによって解散し、中心メンバーたちが新たに参加して戦力の増強を図った「PARANOID」が下馬評通りの安定した強さを発揮、qiloth選手をはじめとする5人の選手がイタリア行きの切符を手に入れた。プレーヤーの数やスポンサードの関係で試合と同じ環境での練習がなかなか難しい日本のFPS事情ではあるが、そういったハンディキャップをはねのけて、ぜひとも勝利をつかんでもらいたい。
本戦は10月18日から開催される。筆者も本戦にて選手団の同行取材を行う予定なので、続報をお待ちいただきたい。
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